軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十七話 マナラークへの襲撃(side:ポメラ)

冒険者ギルドに集められた冒険者達への此度の集団移動についての詳しい説明が行われた後、ポメラ達はマナラークの街門付近に移っていた。

既に夥しい数の馬車が集まって隊を組んでいた。

住民達の移動用である。

移動先は商業都市ポロロックである。

ポロロックは元々は貧しい都市だった。

しかし、六十年前に訪れた商人の青年グリードが他の都市との距離から、交易に向いていると目をつけて開拓を進め、今や国内で最も富の集まる都市とまで呼ばれるに至っていた。

グリードは都市の発展に尽力しただけではなく、都市が魔物災害で危機に陥った際に多額の出資を行ってポロロックを救ったこともある。

グリードはその功績を讃えられて今やポロロックの領主となっており、大商公グリードと呼ばれている。

ガネットの説明では、ポロロックに住民を避難させると共に、そこを拠点に魔王に対抗する手段を探したい、ということであった。

グリードは大量に武器を抱えており、冒険者とは別に私兵団も有しているという話であった。

交易で栄えた都市だけあって、他の都市との連絡も取りやすく、支援を募ることもできる。

ポロロックは魔王討伐にこれ以上なく向いている都市でもあった。

「……まぁ、我から言わせてみれば、グリードとやらも胡散臭い男であるがな。我としては、あまり関わりたくはない相手だ」

その場の流れで、ポメラはロズモンドと一緒に行動していた。

一匹狼タイプかと思いきや、意外にロズモンドは喋りたがりらしい。

ポメラが聞けば嫌々という体で話し始め、長々とあれこれ詳しく教えてくれていた。

「そうなのですか? ガネットさんの話では、ポロロックを救った英雄という話でしたが……」

「昔、集めた錬金術師に 錬金生命体(ホムンクルス) の実験を行わせて死亡事故を起こしたという噂がある。その際、関係者に金をばら撒いて、他の者に罪を擦り付けたという話だ。我もその話は詳しいわけではないが、表で言われておるほどクリーンな男ではないだろう。何せ、一代であれだけの成功を収めたのだ。後ろ暗いこともかなりやっておろうな」

ロズモンドはそう言い、つまらなそうに鼻で笑った。

フィリアは、ポメラに身体を支えられ、心地良さそうに眠っていた。

ロズモンドの長話に耐えられなかったのだ。

「貴様らはどうするつもりだ? 我は住民共をポロロックに送り届ければ、それ以上のマナラークへの義理はないと考えておる。魔王と戦って英雄を気取って死ぬつもりもないし、大商公様とやらにいいように扱われるのも虫唾が走るのでな」

「……そうですね。それはまた、カナタさんと相談して考えてみようかなと思います。あの人がどうしたいのかはわかりませんし……それ以上に、今どこまでするつもりなのかわかりませんから……」

カナタはポメラと別れる前に、偵察のようなものだと口にしていた。

魔王について詳細な情報を得るために、ガネットの言っていたラーニョの巣の中心部へと向かったのだろうと、ポメラはそう考えていた。

今回の魔王討伐に対して、カナタはかなり前向きであるように思えた。

商業都市ポロロックに残り、グリードの支援を受けて魔王と戦う道を選ぶかもしれない。

「しかし、予定よりも出発が遅いな。まだ移動したくないと、駄々を捏ねている現実の見えていない一般人共が多いのか。おい貴様、適当な役人を捕まえて事情を聞いてこい」

「ポ、ポメラがですか?」

「貴様以外に誰がいる。我は、領主の犬共と話すのは嫌いなのだ。過去に何度か揉めたことがあるのでな」

「わかりました……じゃあちょっと、フィリアちゃんを支えてもらっていていいでしょうか?」

ポメラの言葉に、ロズモンドがびくりと肩を震わせた。

「ロズモンドさん……?」

「や、やはり、別によいか。重大なことであれば、向こうから特別枠の戦力である我らに報告してくるはずだ。それがないということは、伝達がまだ充分に行われていないか、大したことではないかのどちらかだ。急かしても仕方あるまい」

「……もしかして、フィリアちゃんが怖いのですか?」

前に、ロズモンドはフィリアにラーニョ諸共吹っ飛ばされたことがあった。

その件でまだ、フィリアに対する恐怖を引きずっているのかもしれないと、ポメラは思い至った。

「そうではないわ! 我を馬鹿にしてくれるなよ小娘!」

「ご、ごめんなさい! 馬鹿にしたつもりはなかったのですが……」

そのとき、フィリアがぱちりと目を覚ました。

ロズモンドの大声に驚いたのだ。

「どうしたの、ポメラ? 蜘蛛?」

フィリアが眠たげに腕で目を擦る。

「うぬっ!」

ロズモンドがびくっと肩を震わせ、フィリアから一歩距離を置いた。

フィリアが不思議そうにロズモンドを見上げる。

数秒、沈黙があった。

つい、ポメラもロズモンドをまじまじと見てしまう。

「な、なんだ、悪いか!」

「い、いえ、ポメラは、何も言っていませんが……」

そのとき、辺りの地面がボコボコと盛り上がり始めた。

一か所だけではない。

付近一帯に、似たような盛り上がりが数十、いや数百と続いていた。

周囲の者達も、なんだこれはと騒ぎ始めていた。

「土魔法第五階位《 土塊爆弾(クロッドボム) 》!」

ロズモンドが十字架を掲げると、魔法陣が浮かんだ。

ロズモンドの前方に赤い光の球が浮かび上がる。

地表が剥がされ、光の球へと引かれるように纏わりついていく。

あっという間に綺麗な土の球体ができあがった。

「先手必勝であろう!」

ロズモンドが十字架を振り下ろす。

土の球体が飛んでいき、地面に触れると僅かに膨張し、次の瞬間に爆発した。

地表が吹き飛び、爆発に巻き込まれた黒焦げのラーニョが宙を舞った。

「やはりこやつらか! 人間が集まったところに仕掛けてくるとは、どうやら魔王とやらは、本気で我々を潰しに来ておるらしい。面倒なことになったわい」

周囲の地面の凹凸を突き破り、大量のラーニョが姿を現した。

中には、カナタが前に討伐した大型ラーニョの姿もあった。

周囲の者達が悲鳴を上げて逃げ始める。

「……全く、これだから残りたくなかったのだ。小娘、やるぞ。貴様、それなりに戦えるのだろう?」

「は、はい!」

ポメラも大杖を構えた。