軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十五話 ハーフエルフと異世界転移者(side:ポメラ)

「コ、コトネ殿、来ていただけたのですな!」

コトネが扉から入ってきたのを目にして、真っ先にガネットが彼女を出迎えるために駆けていった。

コトネは会議室の様子を眺めてから、ガネットへと目線を戻す。

「まだ始まっていなかったの」

「コトネ殿がすぐ来られるかと思い、少しばかり待っていただいていたのですよ。何か、用事でもおありだったのですかな?」

「いえ、少し寝坊しただけ。遅れて悪かったわ」

「そうでございましたか。昨日は遅くまで会議で時間を取り、早朝に呼びつけてしまいましたからの。こちらこそ申し訳ない。此度の集団移動に助力いただけること、感謝いたします」

ガネットは先程の焦っていた様子を微塵も見せずに、コトネへ笑顔で対応を行っていた。

「……あの人、切り替えが早いですね」

ポメラも思わず感心してしまった。

ロズモンドはガネットの方を見て、「狸爺め」と呟いていた。

コトネは空いている席へと向かう途中で足を止め、ポメラへと目線を向けた。

ポメラは目が合い、びくりと肩を跳ねさせてしまった。

そのままコトネは軌道を変え、ポメラへと近づいてくる。

「ど、どうも……あの、コトネさん。えっと、ポメラに何か、御用でしょうか?」

「昨日、横にいた男は?」

コトネは短く、ポメラへとそう尋ねた。

「きょ、今日は、用事がありまして……その……」

「……そう。彼、どこから来たの?」

「い、いえ、ポメラはカナタさんと、そういったお話はあまりしたことがなくて……えっと……カナタさんもあまり、話したがらない様子でしたので……」

「家名はわかる?」

「か、勝手に口にしていいものなのか……」

ポメラが言い淀むと、少しコトネの眉が動いた。

コトネには独特の威圧感があった。

「それくらい構わないでしょう。何か、後ろ暗いことでも?」

「そ、その、カナタさんは、カンバラと言っていましたけれど……えっと、それがどうかしたのですか?」

コトネは小さく首を振った。

「別に、なんでもないわ」

コトネは礼も言わずに、空いた席へと進んでいく。

「……カナタ・カンバラ、カンバラ・カナタ。やっぱり、似非ニホンのヤマト王国の出というわけでもなさそうね」

コトネはそう呟きながら、口元を歪め、微かに笑った。

だが、すぐにまた元の無表情へと戻った。

ポメラはコトネに声を掛けられてから凍り付いており、彼女が席に着いたのを目にしてからようやく固くなっていた肩を下すことができた。

「な、なんだったんでしょう……」

「フン、S級冒険者様が寝坊するようなタマではあるまい。何を企んでいることやら」

ロズモンドが吐き捨てるように呟く。

「……危険な人なのですか?」

「表立って何か事件を起こした、という話は聞いたことがない。どころか、どんな化け物でもあっさり仕留めると、この都市では英雄視されておる。ただ、何を考えているのかわからん、不気味な奴だ。ただの興味本位や挨拶で人に声を掛ける女ではない。目を付けられたのは、厄介なことになるかもしれんぞ」

ポメラはそうっとコトネの方を見たが、彼女と目が合いそうになったので、すっと彼女の奥を見て視線を誤魔化した。

ガネットが会議室の扉側から奥へと移動を始めていた。

コトネが来たところで、そろそろ今日の流れについての話を始めるつもりなのだろう。

「ポメラッ! フィリア、すっごく頑張るから!」

ポメラの膝に座るフィリアが、威勢よくそう口にした。

「フィ、フィリアちゃんはその、抑え気味にお願いしますね……」

ポメラは言いながら、別れる前にカナタが口にしていたことをふと思い出した。

今回はカナタが、フィリアが何かやらかしたときは責任を持って誤魔化してくれるという話になっていた。

「……あれ? でも結局今回カナタさんがいないから、ポメラが誤魔化すしかないんじゃ……」

口にしていて、自身の血の気が引いていくのを感じていた。

前回は勢いのままに、勝手に始祖竜を召喚できることにされてしまったのだ。

今回は何を背負わされるかわかったものではない。

「これで恐らくは全員でしょうな。では、儂から夜の間に得られた情報と、今日の動きについての説明を行わせていただきましょう」

会議室の奥に立ったガネットが、そう宣言した。

ポメラはそれを聞いて、ふと妙な予感がした。

「あ、あれ……? おかしい……?」

ポメラは慌てて会議室を見回す。

そこでようやく、この場にいるはずの者がいないことに気が付いた。

金髪のA級冒険者、アルフレッドである。

空気に飲まれて緊張し、すっかり頭から抜けていた。

アルフレッドについては、カナタからも気を付けておくようにと言われていた。

アルフレッドは執念深く、卑劣である。

決闘でそのことはよく理解できていた。

わざわざ冒険者会議の前に脅しを掛けてきたくらいである。

アルフレッドならば、集団移動の隙を突き、必ず何かしら仕掛けてくるはずだとポメラは確信していた。

この場にいないのはむしろ不安であった。

これでアルフレッドの行動が全く読めなくなった。

「どうしたのだ、ハーフエルフの小娘。心配事か?」

「あ、あの、アルフレッドの姿が見当たらなくて……。昨日の冒険者会議には参加していたのに」

ロズモンドはポメラの言葉を聞いて、鼻で笑った。

「あの馬鹿者なら、とうに逃げた後であろうよ」

「えっ……」

ポメラは目を丸くした。

「い、いえ、しかし、その……多分、それはないと言いますか……」

「奴は冒険者会議が終わってから、顔を真っ青にして、仲間の女の腕を掴んで急ぎ足で走っていったからな。まず間違いあるまい。俺はこんなところで死んでいい人間じゃない、とまで叫んでおったぞ。プライドの高い奴だ、あれは演技ではあるまいよ。魔王と聞いて、恐れをなしたのであろう」

「ええ……」

「自己顕示欲が服を着て歩いているような奴であったからな。そんなものであろうよ。実力は知らんが、あの性格では邪魔にしかなるまい。去って行って清々したわい」

「……そ、そうでしたか……。教えてくださってありがとうございます」

ポメラは釈然としないものを感じながら、そう返した。