軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第009話 お茶目です

「私が魔法使い?」

へらへらしていたセシリアが真顔になる。

「そうだろ。な?」

リーエに同意を求める。

「ええ。最初に見た時からそうだと思っていましたよ。だからヴェルナー様もこの世界に魔法がある前提で話をされたんです」

そうそう。

そもそも俺は魔法のない日本に帰ろうとしたわけだし、飛んだ世界の先に魔法があるとは限らないことも重々に承知していた。

しかし、最初に会ったセシリアが魔法使いだったから魔法がある世界だと思ったのだ。

「そういうのがわかるの?」

「わかるも何も……」

「いや、セシリアさん、ものすごい魔力量ですよ。それに質も素晴らしいです。単純な魔力量だけを見ればヴェルナー様を上回っています」

え? そうなの?

「いやいや、俺の方が……」

「ヴェルナー様、認めてください。話が進みません」

質は俺の方が良い……

それに腕も知識も実力も俺の方が遥かに上だ。

うんうん。

「セシリア、お前は魔法使いだな? 一応、オラースがいない時に言ってやったんだぞ」

言っていいものかわからなかったから今まで言わなかったのだ。

「そう……配慮をどうも。ヴェルナーは素敵ね」

え? そう?

「ニヤつかない。余裕を持ってください。男の価値が下がりますよ」

そ、そうか……

「セシリア、別に言いたくないなら言わなくても良いぞ。俺達は明日には出ていくし、気にしなくていい。ただ、どうしても気になることがあってな」

「その気になることを言ってみて」

「胸元じゃないですよー」

わかってるわ。

なるべく見ないようにしている。

「あくまでも仮定の話になる。お前はとんでもない魔力を秘めているが、これを上手に動かせているのだろうかということだ」

「どういう意味?」

「魔力は人間にとって毒なんだ。適度に排出したり動かしたりしないと身体を蝕んでいく。身体に不調はないか?」

気になるのはそこだ。

これだけの魔力だし、危ない気がする。

「そう……ねえ、ちょっと私の話を聞いてくれる?」

「聞こう。俺はお前と違って聞き上手ではないが、散々、世話になったし、力になりたいと思う」

「……良いですよ。かっこいいです」

そうか?

ふふっ。

「あなた達は本当に仲が良いわね。羨ましいわ……」

「そうか? お前にも……」

家族がいるだろ……いや……

「私にはそんな親しい人はいないわね」

そうか……

「なあ、気になっていたんだが、なんでここで一人なんだ? なんでこんな普通の住宅街に屋敷があるんだ? そして、あの門番は……」

どっちを見張っているんだ?

「まあ、聞いてちょうだい。私は貴族だけど、貴族じゃないのよ」

想像していたのが当たっているかもな……

「どういうことだ?」

「私の生まれは普通の家よ。父はいなかったけど、貴族のお屋敷でメイドをしている母と二人暮らしだった」

当たったか……

「庶子か」

「ええ。とある貴族がメイドに手を出し、子供ができた。その貴族は母に少なくない金を渡した」

たまに聞く話だな。

避妊しろよって思うのは俺にそういう経験がないからかな?

「ウチの国ではそういう子は貴族になれない。この国ではどうだ?」

「ウチもそうよ。だから私は普通に庶民として育ったし、そう生きてきた」

セシリアがどこか親しみやすいというか、ラフっぽい言動なのはそこだろうな。

お茶を飲んでいる所作は綺麗だったが、こちら側の人間なのだ。

「お前、いくつだ?」

「20歳。15歳までは母とその貴族の援助で生きてきて、15歳からは冒険者になった」

冒険者事情に詳しかったのもこのためか。

「それで?」

「2年前にこの国で流行り病が流行ったの。それで母が死んだ」

流行り病か……

「そうか……」

「悲しかったけど、仕方がないことよ。ただ、問題が一つあり、そのとある貴族の令嬢、こう言ったら怒られそうだけど、私の姉に当たる人も亡くなったの」

貴族の娘まで死ぬレベルか。

相当な病だな。

「まさかそれでセシリアが代わりじゃないよな?」

「そのまさかよ。その姉は政略結婚が決まっていたの。それをおじゃんにするわけにはいかないから私に白羽の矢が立った。いきなり父がウチに来て、私をここに連れてきた。以降は花嫁修業ばっかりよ」

なるほどねー。

高級住宅街にあるであろう本邸に呼ばないのは庶子だからか。

「結婚するんだ?」

「そうなるわね。相手は見たこともない人。まあ、貴族の結婚ってそうらしいから」

そうなのかねー?

ウチの国ではどうだったか……いや、そこまでは知らないな。

「セシリアさん、納得されているんですか?」

リーエがセシリアに聞く。

「どうしようもないって諦めかしら? 実は私って庶民にしてはかなり裕福な方だったのよね。もちろん、それは父に援助してもらってたから。それを考えると仕方がないかなーって」

それは親の義務だろって思う日本出身の俺。

「セシリア、それで魔法は?」

「私は冒険者をやっていたって言ったわね? 実はその際に一度だけ、手から火が出たことがあるのよ。たった一度だけだけどね」

魔法だ。

「セシリア、変なことを頼んでいいか?」

「なーに? えっちなこと?」

飲みすぎじゃないかな?

どう考えてもその場面じゃない。

いやまあ、あられもない姿の女と夜に同じ部屋にいると考えたら……いや、今はそこじゃない。

「そういうのじゃない。冒険者をやっていたと言ったな? リーエと軽く戦ってみてくれないか?」

「リーエと? いや、さすがに子供相手には……え?」

セシリアが驚いた表情になる。

理由はリーエがククリナイフを取り出したから。

「武器はなし」

「戦闘用ホムンクルスの出番では?」

お手伝いさんだっての。

「軽くだ。セシリアの動きが見たいんだよ。わかるだろ」

「わかってますよ。ホムンクルスジョークじゃないですか」

お前、ジョークが好きだもんな。