軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第042話 イレーネさんって幸薄い気が……

ゆっくり降下していくと、陸地と海が見えてくる。

そして、そのまま降りていき、港に降り立った。

周りには誰もいないし、目撃者はいないと思う。

「ふう……中々、エキサイティングな逃亡だったわね」

「良い経験だな」

そう言って、イレーネを降ろす。

「夢に出てきそうよ。良い夢か悪い夢かはわからないけどね」

俺もたまに落ちる夢を見るからな。

それも何故か魔法が使えない。

「私はもうごめんですね」

「まあ、人生で一度でいいわね。それよりも町に降りたけど、これからどうするの? 南門から逃げる?」

イレーネが聞いてくる。

「領主達は俺達があそこから飛び降りたから死んだと思っている。しかし、死体が上がらない限り、捜索はするだろう」

そして、その死体は絶対に上がらない。

「万が一を考えて、追手を出すことも考えられるか……それに下手をすると、父一行とかち合うわね」

「父親はいつ来ることになっている?」

「先行して、軍が来るらしいわ。その後に父ね」

南に逃げた場合、本当にかち合いそうだな。

別に戦っても勝てるのだが、死んだと思われている状況で姿を晒したくない。

「俺達は船で逃げる計画だった」

「明後日まで待つの? この状況だし、出るかわからないわよ?」

それは十分にありえる。

「船ならそこら中にあるだろ」

選り取り見取りだ。

「奪うわけね……でも、ここにあるのは漁船や商船よ。とてもではないけど、外洋は渡れない」

すべて小型船なのだ。

それで外洋に出るのは無謀すぎる。

もちろん、俺達が乗る予定だった大型船もあるが、あれはさすがに操縦できる自信がない。

「わかってる。そこまで陸地から離れないようにし、南下しよう。他にリーンド大陸に行ける港町はあるか?」

「この国はここだけよ。南のコスタリナに行くしかない」

結局、そこになっちゃうのか。

「行こう。さっさと安全なところに逃げようじゃないか」

「そうね。私もいい加減、大手を振って外を歩きたいわ」

それはそうだろうな。

「よし、どれにする?」

俺達は並んでいる船を見る。

「どれも一緒に見えるわね……」

「魔導船は商船の方でしたね」

漁師の人がそう言ってたな。

「魔導船って?」

イレーネは知らないらしい。

まあ、イレーネがすべてを知っているということもないか。

「そういう魔道具だとさ。素人でも操縦できる便利な船だ。漁師のおっさんに聞いた」

「へー……じゃあ、それにしましょう。当然だけど、船なんて操縦したこともないわ」

乗ったことすらないんだもんな。

まあ、船を操縦できる奴なんてそうはいない。

「うーん……なんか一番魔力が高そうなあれにしますか」

リーエが右の方にある船を指差す。

「よし、乗るぞ」

俺達は船まで行くと、ロープを切り、フライで船に乗り込んだ。

「うん、やっぱりこれが良いわね」

お姫様抱っこで抱えていたイレーネを降ろすと、深く頷いた。

「良かったですね。次からは腕を首に回すんですよ。それがマナーです」

そんなマナーはない。

あ、いや、安定するという意味ではありだけど。

「操舵室はどこだ?」

「上じゃない?」

「全体が見えるところだと思います」

2人が上を見たので階段を上がっていく。

すると、舵がある操舵室があったので中に入った。

「えーっと?」

「私はわからないわよ」

「私もです。でも、舵で方向を変えるのはわかります」

そりゃ俺でもわかるよ。

「ペダルはこれか」

漁師曰く、これを踏めば進むらしい。

「踏んでみますか?」

「ああ」

ペダルを踏んでみたのだが、何の反応もない。

「ねえねえ、この辺にスイッチがあるけど」

前の方にいくつかのスイッチがある。

「適当に押してみてくれ。多分、どれかがエンジンのスイッチだ」

「わかった」

イレーネは頷くと、適当にスイッチを押していく。

すると、船に明かりが灯った。

「動かないぞー」

「うーん、あ、この赤いのかも」

イレーネがそう言ってスイッチを押すと、船が振動し始めた。

「おっ、当たりだ」

明らかにエンジンがついた。

「イレーネさん、ナイスです」

「よし、船長、行きましょう」

ペダルをゆっくりと踏むと、船が動き出す。

「おー、動いたぞ」

「すごいです。さすご主ー」

「さすヴェル……かしら?」

いや、俺はペダルを踏んだだけだ。

「イレーネ、南下していくが、どこで降りればいい? 国境を越えていいのか?」

「商船なら怪しまれることはないと思うけど、通行証がないし、巡視船とかの臨検に引っかかったら一発アウトね」

通行証どころか船を盗んでいるしな。

「じゃあ、どっかで降りる必要があるな」

「国境の最寄りの町であるベルクの町近くまで行きましょう。船の速度とかがわからないからどれくらいかかるかはちょっとわからないけど」

まあ、とりあえず、陸地に沿って、南下していくか。

「イレーネ、リーエ、寝たかったら寝ていいからな。行けるところまで行っておく」

「うーん……今日はあまり寝られそうにないのよね」

「ドキドキですか?」

「色んな意味でね」

いや、寝てほしいんだが……

「寝られなくても横になって――ッ!」

ふいに耳を裂くようなサイレンの音が鳴り響いた。

「何!?」

「町から聞こえます!」

リーエがそう言って、後ろの方に向かった。

「何があった!?」

「港から多数の船が出ています! おそらく、軍船です!」

マジ?

「追手かしら?」

「さすがに早くないか?」

屋敷から港まで距離がある。

それにあの状況で俺達が生きているとは思わないはずだ。

『そこの商船、止まりなさい! 現在、この海域は封鎖中である! ただちに止まりなさい!』

うるさいなー。

拡声器まであるのか。

「どうやら演習中の軍の連中だな」

「運が悪いわねー」

いや、まったく。

というか、夜は酒を飲んで寝ておけよ。