軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第030話 海を見てもわくわくしなくなりました……

「リーエ、イレーネがいるとしたらどこだと思う?」

「例の屋敷でしょうね。ここの領主からしたら無下にもできませんし、丁重に軟禁でしょう」

イレーネが暴れてなければ手荒な真似はされてないだろうな。

「確か、イレーネの父親は公爵だったな?」

「ええ。オラースさんがそう言ってました」

となると、イレーネは無事と考えて良い。

「港に行くぞ。屋敷を見てみる」

「わかりました」

俺達はこの場を離れ、港に向かう。

歩いているが、やはり兵士の姿はない。

「さっきの兵士も俺達を見て、何の反応もなかったよな?」

普通に答えていた。

「ええ。私達はバレていません」

俺達が手助けをしていることがバレていないということはどっかの店から漏れたということもないし、目撃者からの通報ということもない。

そして何よりもオラースから漏れたということも考えにくい。

本当に偶然か?

「動きやすいと思うとするか」

「ええ」

俺達が歩いていくと、ギルドの前を通り、港までやってきた。

相変わらず、海は綺麗だが、軍船らしき船が沖合に見えている。

「演習か」

「そのようですね。さて、あれが屋敷です」

俺達は左の方にある丘というか断崖絶壁の岩山の上にある屋敷を見る。

「どうやって行くんだろう?」

「坂の降り道が町の北の方に繋がっています。おそらく、町の北から行けると思います」

あそこに通うのは大変だな。

「目立つな」

リーエが言うように道がここからでも見えているのだ。

遮蔽物がない。

「ええ。それに警備は万全でしょう。幸いなのは演習中のため、兵士が少ないかもしれないってことですね」

かもなんだよな。

「忍び込むなら夜だろ」

「なら関係ないですね。いや、演習の打ち上げをしているかもしれませんよ」

希望的観測すぎるな。

「リーエならどこから忍び込む?」

「飛べばよろしいかと。夜中なら見つかりにくいです。この世界には魔法がないのですから空からの敵も想定していないでしょう」

だろうな。

「ちょっと高いな」

「ええ。それに海が嫌ですね。落ちたら今度こそ、溺れちゃいます」

俺達は泳げないのだ。

海のある県に生まれた俺だが、水泳の授業が本当に嫌いだった。

「逆はどうだ?」

東側は海だが、西側は海じゃないと思う。

「ここからは見えませんね。確認に行きますか?」

「そうだな……実はもう1つ懸念点がある」

「イレーネさんを救出した後のことですね」

賢い子だ。

「ああ。どうする? 今度は俺達もお尋ね者だし、貴族令嬢の誘拐となると、町は閉鎖だし、当然、船も出ないぞ」

「むぅ……ミスディレクションでいければいいんですけど」

どうかね……

今まではイレーネ1人だったから俺達の影になって誤魔化せた。

しかし、次からは全員がお尋ね者だから影がない。

「海路が良いよな?」

「正直、今から陸路はないですって思いますね」

だったら最初から陸路で南に向かえば良かったって思っちゃうしな。

「奪うか。いっぱいあるし」

選り取り見取りだ。

「おや? 英雄では?」

「捕らわれた女性を救うんだぞ。英雄以外の何物でもない」

ソースは騎士物語。

「まあ、そうですね。多少の犠牲はつきものです。でも、操縦できるんですか?」

「知らんがやればできる。風を起こすなり、波を起こせばいいんだろ」

帆船ならそれで動くはずだ。

「楽観的ですね。イレーネさんが動かせることを祈りますか」

そっちも楽観的だ。

「あくまでもこの町から逃げるためだからそこまで遠くに行かない。別大陸に行く方法はまたイレーネと相談すればいい」

「わかりました。どれにします?」

いっぱいあるな。

「ちょっと見てみよう」

「私がいれば船を見る仲良し親子ですね」

便利なホムンクルスだ。

「ああ。行くぞ」

俺達は船が止まっている岸までやってくると、歩きながら船を見ていく。

船には誰も乗っていないし、太いロープで岸にあるボラードに繋がれていた。

「これならロープを切るだけだな」

「ええ。魔法でたやすいです」

奪うのは楽そうだ。

「しかし、魔力を感じるな……」

船から微弱の魔力を感じるのだ。

ただ、魔力を感じない船と感じる船がある。

「この世界ですからね……魔導具かもしれません」

動力が魔法っていうこともありえるか。

「うーむ……どっちが良いのか」

「ちょっと聞いてみますか」

誰に……あ、先の船に船内を掃除している人がいる。

「すまない! ちょっといいだろうか!?」

人が乗っている船に近づくと、声をかける。

「あーん? 何だー?」

見上げていると、ガラの悪そうな男が顔を出した。

「これって船だよな?」

「見りゃわかんだろ。馬車に見えるか?」

見えないね。

「仕事中にすまない。娘が興味津々なんだ」

「あー……しゃーねーなー……」

男は顔を引っ込めた。

そのまま待っていると、梯子を下ろし、船から降りてきた。

「いや、仕事中ならいいんだが……」

「いいよ。どうせ漁にも行けないし、暇なんだ」

漁師か。

「やっぱり出られないのか? 実は船に乗ろうかと思っていたんだが、軍の演習とかで足止めされたんだ」

「おたくらもか。こっちもだよ。せっかく良い天気だってのによ。冬になったら荒れるし、今のうちに稼げるだけ稼ぎたいっていうのによ。あんま言いたくないけど、陛下も少しは考えてほしいぜ」

やっぱり不満が多いな。

「何かあったのか?」

「ないない。毎年、どっかのタイミングでやるんだよ。昔は俺達も関係なく、船を出していたんだが、数年前に事故があってな。それ以来これなんだよ。ハァ……」

なるほどね。

本当にこの演習とイレーネは関係ないようだ。