軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第003話 ラッキーですね

湯船に浸かりながら一息つく。

すると、上が繋がっているのが見えた。

「逃げられたことは逃げられたな……」

隣にいるリーエに声をかける。

「はい。一緒に地獄に行かなくて良かったです」

天国じゃなくて、地獄なんだ……俺もお前も。

「これからどうしようか?」

「まずは情報集め。それから仕事探しと寝床探しですね」

高給取りで屋敷まで持っていた俺がニートか。

まあ、独房、死刑台コースを免れただけでも良しとするか。

「仕事か……そこは考えないとな」

「嫌われますもんね」

はっきり言うな。

「俺、そんなに嫌われていたのか?」

「男性からはやはり嫉妬ですね。そして、ヴェルナー様はそれを上手く処理できる能力がありません。女性からは色々ありますが、まあ、私ですね」

お前かー。

「ホムンクルスとはいえ、子持ちはマズいか」

俺くらい出世して、偉くもなれば結婚の勧めやそういう見合い話的なものが来ても良いものだが、そういうのがまったくなかった。

「子持ちと思ってくれればまだ良い方です」

そうかい……まあ、他人がどう思おうがどうでもいいんだけどさ。

俺は人生を賭けて、魔法を追求する。

そして、魔法のすべてを手に入れるのだ。

「フリーの仕事でも探すか」

何にせよ、金はいる。

財布は持ってきているのだが、帝国の金なんて絶対に使えないし。

「やはり魔法ですか?」

「それしかない。俺には魔法しかないんだ」

「フォローできない愚かな私をお許しください」

別にいいよ。

魔法ばかりをやっていたからこそ、叡智の魔勲章をもらえるほどの魔導士になれたんだから。

「執事の人か、あの令嬢に話を聞けると良いな」

「そうですね。いきなり私有地に入ってきた賊と言ってもいい私達にここまでしてくださるのですからきっと良い人達なんでしょう。事情を説明して、助けを求めるのも手かと思います」

いくら子連れとはいえ、相手が貴族令嬢だもんな。

その場で手打ちにされてもいいくらいだ。

もしかしたらここは平和な国なのかもしれん。

「うーん……貴族令嬢かー……」

貴族って苦手なんだよな。

「お綺麗な人でしたもんね。童貞には厳しいでしょう」

「うるせー、処女」

「私が処女じゃなかったらヴェルナー様の評判は地の底ですね」

確かにな。

引くわ。

「えーっと、礼儀は……最近は夜会とかにも出ていなかったからな」

勲章をもらった時は毎日のように夜会だった。

「普通でよろしいかと。そもそも異世界なので礼儀も文化もわかりません。その辺りも素直に話しましょう」

それがいいか。

失礼があったらひたすら謝罪しよう。

俺達はゆっくりとお風呂を堪能していると、ピーッという音が聞こえたので風呂から上がり、乾燥機を開ける。

「乾いてるな」

「便利ですね。洗濯物が楽です」

ちょっと欲しい。

俺達はタオルで身体を拭くと、服を着る。

そして、脱衣所を出ると、執事が待っていた。

「助かった」

「ありがとうございます」

実に良い風呂だったな。

「いえいえ。お嬢様が話を聞きたいとおっしゃっています。お時間はどうでしょうか?」

ほう?

「実は俺達も話を聞きたいと思っていたところだ」

「では、こちらへ」

執事が歩いていったのでついていく。

そして、階段を上がると、一番手前の部屋で立ち止まった。

「お嬢様、お客様をお連れしました」

執事がそう声をかけながらノックをする。

『入ってちょうだい』

返事が聞こえると、執事が扉を開け、中に入ったので俺達も続く。

部屋はそこそこ広く、本がある棚なんかがあった。

そして、部屋の中央には丸テーブルと3つ椅子があり、その1つに先程の令嬢が座ってお茶を飲んでいた。

「……またお茶を飲んでますね」

しっ。

優雅だし、お茶を飲んでいるのが絵になる女性だと思う。

俺も『また飲んでんの?』と思ったが、口には出さなかった。

「座ってちょうだい」

貴族令嬢が勧めてきたので席につく。

すると、執事が俺達の分のお茶を淹れてくれる。

「改めて、先程は申し訳なかった。また、風呂を貸してくれて感謝する。おかげで風邪を引かずに済みそうだ」

「ありがとうございます」

リーエと共に頭を下げる。

「いえ、それぐらいのことはたいしたことじゃないわ。それよりもこちらの自己紹介がまだだったわね。私はセシリア・オクレール。こちらは執事のオラース」

オラースが軽く頭を下げる。

「どうも」

「よろしくお願いします」

リーエがオラースに向かってぺこりと頭を下げた。

「それであなた達は何者? 先程は転移がどうちゃらこうちゃら言ってたけど」

「説明しよう。それとこちらも教えてほしいことがある」

「どうぞ。私が答えられる範囲なら答えましょう」

こいつ、絶対に貴族だな。

この断言しない言い回しは貴族のそれだ。

「俺はとある国で魔導士をやっていた。自分で言うのもなんだが、かなり優秀だった。だから他の魔導士に恨まれ、謂れのない罪で捕まりかけたんだ」

「私はギルティだと思ってますけど」

話の腰を折るんじゃない。

「……続けて」

「ああ。なんとか逃げようと思い、次元転移の魔法を使った。通常の転移とは異なり、別次元……つまり別世界に逃げようと思ったのだ。本当は違う世界を目指していたのだが、ここに飛んだ。まだ研究中の魔法だし、行き先指定はできなかったようだ。まあ、とんでもない世界に飛ばなかったことが救いだな」

もしかしたら空気がない世界だったかもしれない。

他にも物理法則が違ったり、とんでもない毒ガスが蔓延していることもありえた。

そういう風に考えると、かなりラッキーだったと思う。