軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第026話 海は綺麗だけど住みたくないです

風呂から上がり、席に戻る。

「明日のことを話しましょうか」

イレーネがそう言いつつ、トランプをシャッフルしていく。

「早朝に便の確認ですか?」

「ええ。私もここに来たことはあるし、港にも行ったことはあるんだけど、船に乗ったこと自体はないから何時に出発するのかは覚えてない。料金は一緒に来た仲間と高いねっていう話をしたから覚えているんだけど」

なるほど。

「乗れたらそのまま乗るか?」

「ええ。それが理想ね。ただ、船っていうのは不定期だったり、天候に左右されるから何とも言えないわ。最悪、数日は待つってこともありうる」

資金的にも長い間、待たされるのはきついな。

「そこは見てからだな」

「ええ。それと港にも兵士はいると思う。ミスディレクションでいける?」

検問をしているくらいだし、港にもいるだろうな。

「大丈夫だ。俺の魔法を信じろ」

「そうね。わかったわ」

「……ミスディレクションを使ってるのは私なんですけどね」

一緒、一緒。

「じゃあ、明日だな。港は何時から開く?」

「7時からね。6時には起きましょう」

俺とイレーネがチラッとリーエを見る。

「起こしますよ。それでは早めに寝ましょうか。ベッドです」

「そうね。やっぱり柔らかいベッドで寝るのが人間の生活よ」

2人が立ち上がってベッドに行ったので俺も立ち上がる。

左からイレーネ、リーエの順番でベッドに倒れ込んだので俺も右のベッドに入り、就寝した。

翌日、この日もリーエに起こしてもらうと、イレーネ、俺の順番でシャワーを浴び、朝食を食べる。

「朝食をお願いするのに下におりましたが、この時間なのに人がいっぱいでしたよ。冒険者の方って早いんですね」

「私は遅かったけどね。基本的に日が出たら動くっていう冒険者は多いわ。特に港町とかだと、漁師の手伝いの仕事も多いし、早くから動いて、早く帰って、お酒を飲むっていう人が大半なのよ」

イレーネは始動が遅そう……

そして、それもパーティーと足並みを揃えられない理由の一つっぽい。

「冒険者が漁師の手伝いをするのか?」

「何でも屋だからね。魔物退治だけじゃなくて、色んなことをやるわよ。私も最初は落とし物探しとかやった」

雑用だな。

「そういうのをギルドで紹介してくれるわけか?」

「そうそう。そうやって仕事をしていって実績を積むと、ランクが上がるわけ。ランクが上がると、より報酬の良い仕事を回してもらえるから儲かるって感じ」

なるほどね。

「じゃあ、俺達が登録しても雑用ばっかりか?」

イレーネもイレーネとして再登録するから一からになる。

「そうね。まあ、魔物退治で実績を積んでいけばいいわ。魔物退治は2種類あって、常設の魔石集めと依頼の仕事がある。常設は魔石を持っていけば売れるし、特に制限はない。もちろん、自分より強い魔物と戦えば死んじゃうけどね。その辺は自己責任。依頼の方は国や町なんかから強い魔物がいるから退治してくれってギルドに依頼が来るのよ。それをギルドが魔物の強さと冒険者の質を見て、仕事を回してくれるわけ。これがランクに関係する」

低ランクに強い魔物退治は回さないわな。

「じゃあ、依頼を受けるといった感じではなく、魔物を倒していけば良いわけだな?」

「そうなるわね。そうやって実績を積んでいけばランクが上がり、ギルドからも声がかかってくるわ。私もCランクくらいから色んな仕事が回ってきたし、Bランクになった時は取捨選択が大変だったくらいね」

高ランクになると、人気なわけだ。

「それでいくか」

「一昨日の人間犬を見る限り、魔物なんか相手になりませんしね」

「犬人間な」

「コボルトだってば」

一緒、一緒。

俺達は朝食を食べ終えると、片付けをする。

そして、武器やカバンを装備し、1階に下りると、宿屋を出た。

「港はどっちだ?」

「東だからあっち」

イレーネが左の方を歩いていったのでついていく。

早朝の時間帯だが、やはり人も多いし、所々に兵士の姿も見える。

とはいえ、ミスディレクションを使っているため、町の人も兵士も俺達に注目するようなことはない。

「この魔法、本当にすごいわよね……兵士はもちろんだけど、本当に誰もこっちを見てこない。普通、もっと見られるものなんだけど……」

お世辞じゃなく、イレーネは美人だし、スタイルも良いからな。

俺もすれ違ったら目が行くと思う。

「そういう意味でも使える魔法だな」

「ええ。やっぱり魔法を覚えたいって思えるわね。一番はクリアダストだけど」

まあ、クリアダストは便利な魔法ではあるな。

特に冒険者をやるなら必須のような気がする。

戦時中には重宝したし、昔は忙しくて億劫な時に風呂に入らずにこれを使っていた。

リーエを作ってからは風呂に入れってぐちぐち言ってきたからあまり使わなくなったけど。

俺達が話をしながら歩いていくと、潮の香りが強くなり、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

すると、たくさんの船が並ぶ港に出た。

「すごいですね。船がいっぱいです」

大型の船から小型の漁船まで様々な船が並んでいた。

「確かにすごいな」

「ええ。でも、ちょっと変ね」

俺も思った。

「船が出てないな」

海には船がまったくない。

それに停泊している船が多すぎるような気がした。

「天気も良いし、風も強くない。何かあったかしら?」

「聞いてみるか」

「そうね」

「あのー、ところで、あれは何ですかね?」

リーエが左の方を指差す。

「ん? 屋敷か?」

岩山のような崖があり、その上に大きい屋敷が立っていた。

「あー、あれはここの領主の屋敷よ。地震でも起きたら崩れて、海に落ちちゃうんじゃないかなって話をした記憶があるわね」

結構高いし、眺めは良さそうだが、それを考えると少し怖いな。

「あそこまで行くのも大変そうですね」

「でしょうね。私は普通の平地に家を建てたいわ」

俺もそうだな。

普通が一番だ。