軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第020話 出発です?

宿屋を出ると、イレーネがこちらを見てくる。

「すでにミスディレクションはかけてあるから大丈夫だ」

「そう……どう思う?」

うーん……

「想定より早くないか?」

「どうかな……追手なら馬でしょうし、昨日の夜に追いつくのもないこともない」

それか初手で王都の外に逃げたと判断したかだな。

オラースは大丈夫だろうか?

「御二人共、冷静に……どちらにせよ、もうこの町は出ます。私達は門を通ってませんし、追手が門番に確認しても問題はありません。可能性としてはここのご主人ですが、ヴェルナー様がナイスな嘘をつきましたので問題ありません」

その通りだ。

「イレーネ、行こう」

「そうね。こっちよ」

俺達はイレーネの案内で町を歩いていく。

まだ朝早い時間なので人通りは少ない。

ただ、兵士が前から歩いてきた。

「……イレーネ、変に動揺はするな。魔法を信じろ」

声量を落としてイレーネに声をかける。

「……大丈夫よ」

そのまま歩いていくと、兵士が俺達をチラッと見たが、特に何もなく通り過ぎていく。

その後も数人の兵士とすれ違ったが、同じような反応だった。

「多いな」

「普段からこの時間であんなにいるとは思えませんね」

「追手と考えて良さそうね。多分だけど、王都内も探しているし、外も探しているって感じじゃないかしら? よほど癇に障ったんでしょう」

2年の経費と目論見がパーになったわけだしな。

「となると、マリティアにもいる可能性があるな」

「ええ。慎重に行きましょう」

「任せておけ」

「頼りになるわね」

当然だ。

俺達が歩いていくと、前方に門が見えてきた。

門の前はちょっとした広場になっており、多くの馬車が集まっている。

冒険者や商人らしき人も多いし、屋台なんかも出ていた。

「ちょっとしたお祭りみたいですね」

「そうね……兵士がいるわ」

人が集まっているところから少し距離を取ったところに兵士がおり、観察しているように見えた。

「これだけの人がいるならミスディレクションで大丈夫だ。さっさと交渉して馬車に乗ろう」

「わかったわ。えーっと……」

イレーネが馬車を見ていく。

「良い馬車と悪い馬車があるのか?」

「ベテランが良い。若い商人に言い寄られて大変だったっていうのを冒険者仲間に聞いたことがあるの」

そりゃ大変だ。

「やっぱり経験者は違うな」

「もちろんよ。ついてきて」

イレーネが歩き出したのでついていく。

すると、左の方にいる恰幅の良い商人のもとに向かった。

「んー? 客かい?」

近づくと、商人の方から声をかけてくる。

「ええ。乗せてくれない?」

「冒険者か……悪いけど、荷物がいっぱいなんだよ。他をあたってくれ」

「魔法のカバンを持っているのよ」

イレーネがそう言うと、商人の目が明らかに変わった。

「ほう? 容量は?」

「結構な量ね」

「これが入るかい?」

商人が馬車の中を見る。

中は木箱でいっぱいだった。

「入るわね……入るわよね?」

イレーネが確認すると、リーエが頷く。

「そうかい……じゃあ、こちらから頼みたいくらいだ。マリティアまでか? それとも往復?」

「片道ね」

「となると……」

商人が考え出した。

多分、行き帰りの荷物のことだ。

「乗せてくれるわけ?」

「ん? ああ……乗せよう。もちろん料金もいらない。すまないが、この荷物を詰めておいてくれないか? 俺はちょっと別の荷を用意してくる」

「了解」

イレーネが頷くと、商人が考えながらこの場を離れていった。

「リーエ、荷物を頼む」

「了解しました」

リーエは馬車に乗り込むと、荷をカバン(空間魔法)に詰めていく。

「イレーネ、俺が食べ物を買ってくるから馬車に乗ってくれ」

「わかったわ。食事はパンと缶詰を買っておけば失敗はないから」

缶詰があるのか……

あれも相当な技術がいると思うが……

「わかった」

この場から離れると、屋台の方に向かった。

多くの屋台があるが、ぱっと見て、どこも変わらないと思ったので一番空いている店に行く。

ふーむ……パンは100ソルで安いな。

缶詰は……安くても1000ソル以上する。

牛肉の煮込みなんか5000ソルだ。

明日の夕方には着くという話だから今日の昼と夜、それに明日の朝と昼があれば十分だな。

それに節制……

「すまん。パンを12個とこれとこれ……あとこれとこの缶詰を3つずつくれ」

「はいよ。1万5600ソルだけど、1万5000でいいよ」

「じゃあ、これで」

金を支払うと、店員が布袋に商品を入れてくれる。

「まいど。じゃあ、これとお釣りね」

「感謝する」

布袋とお釣りを受け取ると、屋台から離れる。

そして、さっきの兵士をチラッと見たのだが、特に動きはなかった。

問題なさそうだなと思い、馬車に戻ると、商人が荷を積んでいるところだった。

「おっ、戻ってきたか。そろそろ出発だよ。いやー、助かるわ」

商人は嬉しそうに荷を積むと、御者台の方に向かった。

荷台を覗き込むと、馬車の半分くらいは荷で埋まっていたが、3人が横になれるスペースくらいはあった。

「狭いな」

「こんなものでしょ。何買った?」

「節制だから牛肉は買えなかったな」

布袋を渡すと、俺も馬車に乗り込む。

「へー……鶏肉とオイルサーディンね。それと果物か。悪くないチョイスよ。道中は本当に暇だから食事だけが楽しみなのよね」

確かに暇そうだな。

俺達は出発を待っているのだが、なかなか出発しない。

「まだか?」

「もう30分は経ってるけど……」

「何かありましたかね?」

うーん……

「ちょっと聞いてくる」

荷台から降りると、御者台に向かった。

「何かあったのか?」

御者台に座ってる商人に声をかける。

「ん? あー、すまない。検問をやっているみたいだ」

検問、か。