軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第016話 敵ですか?

俺達が走っていくと、日が沈んだタイミングで門から離れた位置の壁に到着した。

なお、すでにミスディレクションは使ってある。

「よいしょっと」

「また荷物か……」

イレーネを抱えると不満の声が聞こえた。

「イレーネ、アルベンに来たことは?」

「あるわよ」

「じゃあ、宿屋とかもわかるな」

「ええ。案内するわ……いや、抱える前に聞いてよ」

イレーネをスルーし、フライの魔法を使って、壁を越える。

そして、着地をすると、イレーネを下ろした。

「ここは?」

「歓楽街の裏ね……よりによってここかー」

「何かあるのか?」

「女の子が来ないところって言えばわかるでしょ」

娼館か。

「スルーして、宿屋に行こう」

「スルーしなかったらびっくりよ。こっち」

イレーネが歩いていったのでついていく。

歓楽街は本当にそういう区域のようで店の前に薄着の女性が客引きをしているし、歩いているのは男ばっかりだった。

普通なら俺達がここにいると目立つが、ミスディレクションが効いているため、俺達が注目されることはない。

「煌びやかですね」

「お前には10年早いぞ」

「お世話になることは一生ありませんよ。もし、お世話になることがあったらヴェルナー様を軽蔑します」

そりゃそうだ。

「アホな話をしない」

俺達が歩いていくと、徐々に普通の飲み屋街に変わっていく。

「ここも結構、大きな町なんだな」

賑わっているし、人が多い。

「ええ。王都近隣の町だしね。あ、ここよ、ここ」

イレーネが宿屋の前で立ち止まる。

「ここか? 来たことがあるのか?」

知り合いの店は避けた方が良いんだが。

「いえ、ここはないわ。私はそこそこ稼いでいたから泊まるなら良いところに泊まっていた。ここはちょっと安いのよ」

扉の近くには値段が書いてある看板があるのだが、1泊1人5000ソルと書いてある。

朝晩付きだと6000ソルらしい。

「1万8000ソルか?」

「節約でしょ? 3人部屋なら1万ソルよ」

確かに下の方にそう書いてある。

「いいのか?」

「別に構わないわよ。入りましょう」

イレーネが先に宿屋に入っていった。

「いいのかな?」

「いいんじゃないですか? 変にきょどる方が相手は不安になると思いますし、堂々といきましょう」

それもそうか。

「何してんの? 来てよ」

イレーネが扉から顔を覗かして、手招きする。

「悪い」

「行きまーす」

俺達も中に入り、受付にいるおっさんのもとに向かう。

「いらっしゃい。3人かい?」

「ええ。3人部屋で1泊したいわ。食事付き」

「1万ソルだ」

おっさんがそう言うので財布から1万ソル札を取り出し、カウンターに置いた。

「確かに。夕食はどうする? いつでも用意できるが?」

「すぐにでも」

「わかった。じゃあ、部屋に持っていくよ。4号室な」

おっさんが鍵をカウンターに置くと、イレーネが受け取る。

「よろしく」

「朝食も声をかけてくれ。ごゆっくり」

俺達は受付横にある通路を進み、4号室に入る。

部屋はそんなに広くないが、ちゃんとベッドが3つあったし、3人が座れるテーブルがあり、最低限のものは揃っているように見えた。

「ふう……疲れたー」

イレーネが弓と剣を置き、右端のベッドにダイブした。

「今日は一日走りっぱなしでしたもんね」

リーエが真ん中のベッドに腰かけたので必然的に俺も左端のベッドに腰かける。

「湯船はないけど、シャワーがあるわ。ご飯食べたら順番に入りましょう」

「シャワーだけでもありがたいです。汗や汚れを取る魔法もありますが、やはりお湯が一番ですよ」

俺もシャワーを浴びたい。

「……ちょっと待って」

「ん? どうしました?」

「汗や汚れを取る魔法って何?」

イレーネがベッドから起き上がる。

「そのまんまですけど……野営の時に重宝する魔法ですね」

「あなた達、そんなものを使ってたの?」

「俺は使ってないぞ」

そんなに汗かいてないし。

「男子はしゃらーっぷ」

はい……

「いりました? 町に着いてからでいいのかと思ってましたが」

「いる。私、貴族令嬢よ?」

半分な。

「では……クリアダスト」

リーエがイレーネに向かって手を掲げ、魔法を使った。

「おー……なんかすっきりする」

俺もさりげなく自分に使ったが、すっきりした。

「汚れはばっちり取れましたし、これでお風呂要らずです。まあ、それはそれで入るんですけどね」

身体を温めるという行為自体が身体に良いからな。

「良い魔法ね」

「超が付くほどの簡単な魔法ですからある程度の魔力操作ができるようになったらイレーネさんでも使えるようになりますよ」

学生でも使えない奴はいないレベルの魔法だからな。

もし、使えないなら学校を辞めるレベル。

『お客さーん。夕食を持ってきたぞ。入っても良いかー?』

ノックの音と共に先程のおっさんの声が聞こえた。

「入ってくれ」

そう答えると、扉が開き、おっさんが料理が乗ったワゴンを押しながら入ってきた。

そして、料理をテーブルに並べていく。

「終わったら廊下に置いてくれればいいから。じゃあ、ごゆっくり」

おっさんが部屋から出ていったのでテーブルにつく。

「おー、ご飯です」

「肉だな。良かった」

「冷凍ね。でも、ご馳走だわ」

冷凍技術まであるのか。

やはり魔道具が発展した世界なんだな。

「食べましょう」

「そうだな」

俺達は夕食を食べていく。

メニューはパンとサラダ、それに鶏肉のソテーというシンプルなものだったが、普通に美味い。

「美味しい……やっぱり人間は木の実と果物だけでは生きていけないのよ」

激しく同意。

「冷凍らしいが、普通と変わらんな」

「技術がすごいですね。これは家事が楽そうです……むぅ」

電子レンジ的なものもありそうだな。

俺達は久しぶりの温かい料理を楽しんで食べていった。