軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15.反省

契約書を眺めながら、お義母様にとっての私とは、自分の意志など無く、『すべてはお義母様の為さりたいように』と、唯々諾々と従う嫁だと思われていたのだなと実感する。

「これって私も悪いのよね」

マシュー様が言っていたのはこれなのだわ。

私は自分の為に怒ることがなかった。

何を言われても仕方がないなと反論することなく、お義母様の考えを正しく読み取って行動してきてしまった。

揉め事が苦手で、頑迷なお義母様には逆らっても無駄だからと、話を聞いてくれることは無いのだからと頭から決めつけていたのです。

いえ、本当にたぶん聞いてはくれなかったでしょうけど。

それでも、私には不満があるのだと言うべきだった。

従うにしても、もっと自分の利益を得られるように交渉するべきだった。

……だからウィリアムも取られてしまった。

あの時こそ、這いずってでも本館に向かい、徹底的に抗議するべきだったのだ。

私は、子供を奪われても少し文句を言うだけで結局は平然と仕事に戻る、その程度の女だと思わせてしまったのよ。

「……物語なら魔法使いや精霊が助けてくれるのに、私にはそんな奇跡は訪れないし」

そんなものがホイホイと横行してしまうと、人は反省することなく好き勝手に生きるでしょうね。

もしかすると、彼らにとっての私とは、困った時に現れるお手伝い妖精のようなものだったのかもしれません。

見返りも求めず、文句も愚痴も言わず黙々とお願いした通りに事業を立て直し、息子が手を付けてしまったのが誤算だったけど無事に後継者を儲け、命懸けで産んだ子を奪っても平然として。

それならば、正妻の座を他の女に譲ってくれと頼めば、その願いも叶えるであろうと思わせてしまった。

「……駄目人間製造機なのかしら?」

その結論に何だかとっても悲しくなり、シクシクと胸が痛みました。

「で?一人反省会をしていたら寝不足になっただと?」

「……申し訳ございません」

ガタゴトと揺れる馬車の中で、顔色が悪いのはなぜかという事と次第を白状させられ、私の隣ではそれを聞かされたリオ様が居た堪れないお顔をしています。

「アシュリー。お前は自分の言うことを聞いてくれる人間がいたら、だったらあれもこれもと感謝することなく次々と問題を丸投げするのか?」

「え、そんな酷いことしないわよ、……あ」

「そういうことだ。相手の優しさや親切心をこれ幸いと 貪(むさぼ) るような輩に同情するな。もっと毅然とした態度で 臨(のぞ) め。

ただ、反省したのなら、次は相手の反応を見ろよ?やってもらうことを当然だと考えるようなど阿呆は蹴っておけ」

ゴンッ!

「痛っ!?」

「ああ、すまん。アシュリーに指導しているつもりだったのに、 う(・) っ(・) か(・) り(・) と(・) 足が当たってしまったようだ」

……信じられません。マシュー様が蹴った。リオ様のスネを思いっきり蹴りましたよ!

リオ様は蹴られた場所を押さえながら悶絶しています。

「……マシュー様?」

「大丈夫。スネは丈夫だから簡単には折れたりしない」

彼をコーデリア様に会わせるのが心配になって来ました。そんな私の心の声が聞こえたのか「女性に暴力は振るわないから安心しろ」と言われました。

やはりただの暴力だったのね。困った男だ。

「…………アシュリーならまだしも、何で貴方に蹴られなくてはいけないんだっ!」

「アシュリーの非力さをしらないのか?あんなものは猫パンチ程度だろう」

「何ですって?私は非力ではないわ。女性として標準的な力は持ってますよ。試しますか?」

これでも存外負けず嫌いですよ!

「ん」

「ん?」

突然手を出されてもどうしろと?

「潰すつもりで握ってみろよ」

「後悔しても知らないから」

うぬぬぬ~~~~っ!

大きくて握り難いわ、両手ならいけるかしら。

ふぬぬぬぬぬっ!!

「どうです?参りましたか」

「あははは、非力~~」

「もうっ!」

「…………私は何を見せられているんだ」

「「握力対決」」

しまったわ。淑女らしくない行いをしてしまいました。

「そんな子供っぽいところがあったのですね」

は、恥ずかしいですっ。

「お前がアシュリーに夢を見ていただけだろう。コイツは昔からこんなだぞ」

こんなってどんな?キッと睨みつけてもどこ吹く風。腹立たしい限りだわ。

「お前達がアシュリーを 頑(かたく) なにさせていたのだろう」

……頑な?お義母様が頑なだと思っていましたのに、まさかの私もそうだったの?

「……そうか。私達がアシュリーを萎縮させていたのか」

私のショックを他所に、マシュー様とリオ様の会話は進んでいきます。

「貴方は本当にアシュリーに恋愛感情は無いのですか」

……何を聞いているの?

「リオ様。殴っていいですか」

鬱陶しいわ。自分が浮気三昧だったからと私まで移り気だと思われるのは業腹です。

「そんなことを聞く時点で間違っているだろう。

俺がどうかなんて関係ない。

アシュリーが夫がいるのに他所の男に靡くと思っていることが間違いだろ?」

「誰しもが貴方と同じだと思わないで」

思わず睨み付ければ、なぜか睨み返されました。

まだ思春期なの?