軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異質なマナ

特にその様子が色濃く出ているのが波多野さんだった。

中層に降りてからは殆どしかめっ面で、なんかだんだん顔色も悪くなっていっている気がする。

「……大丈夫ですか?」

中層の各層を繋ぐ部分を歩いている時、さすがに気になってそう声を掛けてみると、波多野さんは「大丈夫だよ」と答えた上で言葉を続ける。

「ちょっとここのマナがあまりにも 気(・) 持(・) ち(・) 悪(・) く(・) て(・) ね。ちょいと酔ってしまったが、戦いや探索に支障が出るほどではないよ」

波多野さん曰く、ここのダンジョンのマナの状態がかなり異質らしい。

ダンジョンの中は地上とは異なる質のマナが広がっており、それはより深くに潜っていくほどだんだん異質になっていくわけだが、異質といってもそれはダンジョンのベースとなった異世界のマナに近い性質に変化しているだけで、せいぜい混ざり合う性質は地球とその異世界のものの二種類だ。

だけど彼曰く、ここのマナは明らかに異なる世界のマナが複数混ざり合っているように見えているらしい。

「様々な色が混ざり合って不規則に蠢いているのをずっと見てたら、そりゃ気持ち悪くもなるだろ?」

とのこと。恐らく他の面々の表情がすぐれないのも、ある程度その状況を感じ取っているからだろう。モンスター達もダンジョンの一部であるから、それを構築するマナもそのダンジョンの性質に準ずる。そしてその性質によって魔術の効果の出にも差がである。だから探索者によって得意なダンジョンと不得意なダンジョンが出てくるんだよね。

んで、熟練の探索者はその辺を戦いの中で感じ取って使う魔術を調整する。ここにいるのは俺達を除けば全員一級でキャリアも長い術者達だ、その異質さにはとっくに気づいているだろう。

俺? そんな技術無いっすよ、こっちの世界でダンジョン潜り始めてまだ数か月だもの。そもそも俺とる ーはこのダンジョンではまだ一回も戦ってないしね!

戦いのキャリアでは負けてないと思うけど、あくまでファーマントの中で戦っていただけだから異なる性質を持つマナの持ち主との戦いなんてものは経験していない。というかそもそもアイリスをはじめとするディバインアームズはそんな調整をするようなものでもないし。

ただ、俺も異質さにはちょっとは気づいてはいたよ?

この佐渡ダンジョン(仮称)のここまで抜けてきた中層の階はそれぞれ崩壊した都市、荒野、砂漠と全く異なる景色が広がっていた──が、これ自体はまぁ珍しくない。だが出現するモンスターの統一性がないのだ。都市の階では燕三条ダンジョンで出現するものによく似たロボットや機械生命体らしきもの、荒野では恐竜のような大型爬虫類系、そして砂漠では虫型のモンスターが出現していた。というか階を進むごとに割合は低いもののの前の階のモンスターも出現しているのでどんどんカオスになってきている。単純にベースの異世界がカオスな生態系な可能性もあったけど……どうやらそういうわけでもなさそうだ。

波多野さん曰く、そのマナのカオス具合は、下の階に降りるほど強くなっているらしいけど……

「少し休憩した方がいいのでは?」

「むしろ早めに片付けて抜け出したいねぇ」

「……そんなですか?」

「そんなだねぇ……ほら、次の階層だ」

そうやって波多野さんと話しながら歩いているウチに、俺達は次の階に到着した。この階層もこれまでとは異なる景色が広がっている。──そこに広がるのは森林と草木が生い茂る草原だった。

「ほう……」

その光景を目にした荒木さんに、興味の色が浮かぶ。ここまでは殆ど植物が見えない環境が続いていたからな、彼にとってはようやく目的の物が見つかったという感じだろう。……この階は抜けるのにちょっと時間がかかるかも。

東風ヶ瀬さんの方も同様かな? と思ったけど、こちらはあまり表情に変化はなかった。尚リリアンジュさんは嘆息していた。この先の荒木さんの行動を予想してだろうなぁ。

……見た感じあんまり異世界っぽい景色ではないけど、どうなんだろう?

「おっしゃ。とりあえずあの森の方に行ってみるか」

そうですね。

まぁ今回の目的はダンジョンの情報収集だから、ぱっと見である程度わかる草原より森の方に向かうのは間違いじゃない。気持ち足取りの軽くなった荒木さんと波多野さんを先頭にして、俺達はダンジョンの中に広がる森の中へと足を踏み入れた。