軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

上から来るぞ

『で、トワちゃん結局そのまま女の子で行くの?』

『トワちゃんは最初から女の子だよ?』

『ダンジョン潜るにも、今の姿の方が有利だよね?』

「そうなんだよなー……」

正直な所、元の姿だと間違いなく配信が地味になるのがネックだ。雑談配信の方はまだしもダンジョンの方がね……悲しいかな、アイリスの力を借りなければ俺の実力はまだ3級クラスなわけで。

ただ、アイリスの力を使ってしまっていると元の姿でのマナ適性がいつまでたっても上がらないし、かといって変身に使うマナを考えると潜るたびに変身しなおすのはちょっと現実的じゃないんだよな。

「とりあえず次回ダンジョンまではこの格好のままでいようかな。その後男に戻ろうと思う」

前回は下層を除けばメインで戦っていなかったし、リスナーの相手も全然できてないからね。一回はこっちの姿で配信してからの方が良さそう。

『無理して戻らなくていいのよ』

『戻さないで』

『そのままの君でいて』

《ずっと変身しっぱなしで構わないのよ!》

「いや戻るからね?」

じゃないと男としてのリハビリが進まないので。あくまで性自認は男なんだよ、俺は。女の体であることに慣れ過ぎているだけで。

ファーマント時代みたいなペースでマナが蓄積されるなら配信時に毎回変身してもいいんだろうけどな……さすがにカートリッジ一個溜めるのに数日かかっているペースじゃさすがにそれはもったいない。ある程度時期と期間を決めて変身してその間は女の姿で配信活動を活発にして、男の時は雑談配信と配信無しでダンジョンアタックをするって辺りが妥当かな。男の時の外見も可愛いからそっちでも女状態ほどじゃなくてもそこそこリスナーは見に来てくれるでしょ。しかしなんだろうねこの特殊過ぎる二重生活。

でまぁ、その方針で行くにしても一つ決めなくちゃいけないことがあるんだけどさ。

『ところで今後はどこのダンジョンに行くつもりなの?』

そう、それだ。これまでホームにしていた房総ダンジョンは使えないので、新たに潜るダンジョンを決める必要がある。

「まだ決めてないんだけど、とりあえず近場かなー」

『トワちゃん千葉だよね? となるとやっぱり東京のダンジョン?』

「あー、東京はパスしたいなぁ」

東京はダンジョンが複数あるけど、どこも難易度的にも獲得できる素材的にも人気が高いので人が多い。──正直あのくっそ目立つ姿で人の多いところは避けたい。

「あんまり混雑してなくて、難易度も丁度いい所が理想かなー」

しばらくは同じところに潜るつもりなので、変身していない俺でも中層辺りまでは行けるレベルの場所が望ましい。

『となると銚子? 筑波はあそこたしかレート高いし人多いよな』

『秩父も外れるね。あそこ中層以降は2級以上じゃないと許可がおりないから……そもそもちょっと遠いし』

『後はちょっと遠いけど逗子もいいかも』

まぁ大体その辺りになるよなぁ。銚子か逗子のどっちかかね。距離的には銚子のが近いけどかかる時間は大差ないしなんなら逗子の方がアクセスもいいんだよなー……

ローテーブルの上に置いたパソコンのディスプレイから一度目を離し、なんとはなしに天井を眺めつつ行き先を考える。まぁ房総ダンジョンも日帰りしていたわけじゃないから、泊りで考えるならどっちでもいいかな? 立地の都合上銚子の方が人は少ないハズだしそっちでいいかなー。

ざっくりとした考えをまとめ、再びディスプレイに視線を戻そうとした、その時だった。

──それは、あまりにも唐突に現れた。

視界に映ったのは、深青と、色素が薄目の肌色。それを意識した瞬間にはそれは瞬く間に迫ってきて、

「ぐふっ!?」

次の瞬間には胸から太腿の辺りにまで駆けて強い衝撃が襲った。後方に手をついて少しのけぞった体勢だったおかげで、頭上からその衝撃を受けなかったのは幸運と言っていいのか悪いのか。もし頭に直撃していたら首をやっていたのでは?

俺の体が受けたのはそれくらいの衝撃だった。まぁダンジョンの中では普通にもっと強力な衝撃を受けるが今は当然マナによるガードなんて行っていないわけで、ダメージがそのまま抜けてくる。特に落ちてきた尻が腹に直撃したせいで、一瞬呼吸がとま……って、尻?

落ちてきたものが人だと認識した瞬間、その人物がこちらの体の上で器用に体を捻り、その 見(・) 慣(・) れ(・) た(・) 顔(・) に満面の笑みを浮かべて抱き着いてきた。

「くー!」

「るー!?」