軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子どもだもん

「この屋敷でも危険は変わらないだろ」

「お前たちが強いのはわかっている。だが、相手の数が多い。町の外で大勢に囲まれたらどうするんだと私は言っているのだ」

確かに、それは想定していなかった。

「少なくとも、ここは使用人もある程度いるし、人の目もある。せめて狩りの間だけでも置いていかないか」

俺たちは相談した。

「アリスターが納得するかどうか」

「リーリアだけならむしろ安心か」

「そもそも町長は信用できるのか」

「聞こえてるぞ」

町長から声がかかった。

「冗談だ。だが、確かに虚族と戦っているときに大人数でリアに手を出されたら守るのは難しい」

「狩りの間だけならいいか」

そう決まった。

「これでエイミーが喜ぶ」

「結局そこか!」

町長も残念な男なのだった。

☆ ☆ ☆(リア視点)

私たちが連れてこられたのは、向こう側に広い草原が見える、日当たりのいい大きな部屋だった。アリスターは来たことがあるのか、当たり前のような顔をしているが、子どもに与えるにはずいぶん立派な部屋だ。

「ここはね、何かあったらみんなで集まる部屋なんだけど、普段は私たちの遊び部屋になっているの」

妹が説明してくれた。

「そんなことより、アリスター、ほらこれ」

そう言って兄のほうが、部屋の隅に置いてある箱のほうへアリスターを連れて行った。

「レイ、これ!」

アリスターの驚く声がする。私もそこに行ってみた。

「わあ」

そこには小さな箱がいくつも置いてあって、それぞれの箱に日本で普通に積み木として売っているようなちゃんとした積み木が詰めてあった。

「街ではやってるからって、父さんが職人に作らせたんだ。トレントフォースは木工の町でもあるからさ、こうやってセットにすれば金持ちの子ども用に売れるんじゃないかって」

どうやら積み木の試作品のようだ。目を輝かせた男の子たちはすぐに片端からそれを出して積み木で遊び始めた。私はそれを見るともなしに見ていたが、積み木としてはちょっと物足りない。

「しゃんかく」

「リア?」

「かたち、しゅくない。しゃんかく、ながいちかく、いる」

私は積み木に斜めに手を当てて見せた。

「しゃんかく、にゃる」

「斜めがあったら坂とか作れるな!」

「ほんとだな。リア、すごいぞ!」

そう興奮して言うと、二人でまた熱心に積み木で何かを作っている。

「ねえ」

「あーい」

そう言えば妹がいたのだった。

「私エイミーっていうの」

「えみしゃん」

「それは魔石屋のおかみさん。私はエイミー」

「えいみー。りあでしゅ」

自己紹介し合った。当然である。

「リア。かわいい」

エイミーは私をぎゅうっと抱きしめた。苦しい苦しい、何かが、何かが出ちゃう。その前に離してくれたが。

「妹が欲しかったの」

そう言うと私の手を引いて部屋の隅に連れて行った。まあ、大事にされるのは嫌いではない。そうして小さな箱を棚から降ろすと、それを開けて見せてくれた。

「ね?」

ね、と言われてもわからない。その箱には小さな人形の着るような服がきちんとたたんでしまってあった。腕を通す穴が二本ある。

エイミーはそのたたまれた服の下から、そっと何かを取り出した。

「しょれ!」

私は肩から下げていたポーチを両手でつかんで、それに近づけた。

「ね?」

「あい!」

それは使い古された赤いラグ竜のぬいぐるみだった。おそろいだ。

「この町の子どもはたいていエミからラグ竜のぬいぐるみをもらうのよ。リアはなくさないようにひもをつけてもらったのね」

「ひも!」

ポシェットにしては物を入れるところがないと思ってはいたのだ。なくさないためだったとは。

「これはね、ラグ竜のお着替えなのよ」

「ふわあ」

そうして男の子たちが積み木をしている間に、私とエイミーはラグ竜にいろいろな服を着せて楽しんだのだった。

「おーい、アリスター、リア」

バートの声と共にかちっと明かりがついて初めて、暗くなりかけていたことに気づいた。アリスターは慌てて立ち上がり、ちょっと髪に手をやって、

「べ、別に、暗いの気づいてたし。まだいいかなって思って」

と言い訳している。夢中になって遊んでいたのに。キャロとクライドはニヤニヤしているのを見られないように横を向いていて、バートは苦笑している。

「おー、面白そうなもんあるなあ」

ミルはそう言うと散らかっている積み木を手に取った。

「それ、リアがね、三角にしたらいいんじゃないかって」

「三角?」

アリスターの声に飛びついたのはキャロとクライドだ。

「かど、けじゅる」

「角? 確かに子ども用ならとがってないほうがいいか……。なあ、レイ?」

「なんだい?」

キャロは積み木をレイに見せながら言った。

「この話、ちゃんと父ちゃんにしとけよ? きっと売れるからな?」

「わかった!」

こうして私とアリスターは帰り道で、不審者がいるので私は狩りに連れて行かず、町長のところに預かってもらうことを聞かされた。

「アリスターもどうする?」

「俺は! 狩りにいくけれど、リアが心配だから時々町長のとこに行ってもいい」

「そうだなあ、町長が三角の積み木の話を喜んで、試作品をどんどん改良するから、町の子を連れて遊びに来いって言ってたしなあ」

「し、仕事みたいなもんだし」

「好きにしたらいいさ」

バートの声がちょっと優しくて、アリスターの口元がちょっと上がっていて、よく考えたらお父様のお迎えが本当じゃなかったとわかったつらい一日だったけれど、

「わりゅくない」

「なんだって?」

「なんでもにゃい」

なんだか楽しい一日ではあった。