軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

季節は巡る

そしてなぜだが、研修はまず私の付き添いから始まった。

「なんで?」

朝に一緒に竜車に乗り込んできただハロルドは、当然お父様についていくものだと思ったのに、私と一緒に王子宮に残ってしまった。

だが私がそれを追求する前に、ニコとクリスに囲まれてしまっている。

「そなたはリアにいやなことを言ったあげく、わるいうわさをながそうとして、ごえいをやめさせられたハロルドではないか?」

「その通りです! その節は申し訳ありませんでした!」

ハロルド本人もやけっぱちのように認めているが、ニコの正確な指摘にハンスが笑い出しそうだ。

「もうリアにいじわるしなければいいんだけど」

腕を組んだクリスにも詰め寄られている。

「二度とあのようなことはいたしません!」

「ブッフォ」

ついに抑えきれずハンスが噴き出し、ニコとクリスの心配顔も和らいだ。

「ハロルドははんせいして、リアのうちでけんしゅうちゅうなの。けんしゅうがおわったら、クリスがいる?」

「いらないわ、べつに」

「グッ」

ハロルドは既に瀕死である。

ここでハンスが何も言わずに逃げたお父様の代わりに説明してくれた。

「冗談はこのくらいにしましょうか。オールバンスではハロルドだけでなく、新しい護衛を増やしたので、交代で訓練に出すことになりました。しばらく見慣れぬ護衛が何人か来ると思いますが、俺がしっかりと見ますので、あまり気にしないでください。意地悪は言わせません」

「わかったー」

「いいわよ」

「いいぞ」

既にニコの護衛には連絡済みのようで、それなら私が言うべきことはない。新しい護衛がいようがいまいが、日常は変わらない。私たちは勉強し、お昼を食べ、お昼寝し、そして楽しく遊ぶのみ。

でも、お父様が迎えに来た時、私はすかさず文句を言った。

「さいしょはおとうさまのとこのはずでしょ」

「四侯の業務はいろいろあって、昨日の今日というわけにはいかなかったのだ。ルークも学院の許可を取ってからでないと、護衛を連れてはいけないし。そうなると、リアのところが一番楽、いや面倒がなく」

「もう」

わたわたと言い訳するお父様がかわいくて、思わず許してしまうではないか。

「それで、どうだった。二回目だったから、慣れたか」

正式な護衛のハンスは外で御者をやっているが、ハロルドは竜車の中で、緊張しながらナタリーの隣に座っている。

だが、お父様が、家族以外の者に自ら話しかけるのは珍しい。いつも一緒に乗っているナタリーでさえ、ほとんど話しかけられたことがないのに。

「いえ、一回目と二回目はまったく違いました。思い込みが物事を見る目を曇らせるということが、今日ではっきりわかり、正直言って動揺を隠せません」

「ふむ」

お父様はそれだけ言って、顎をくいと動かした。

続けろと言う意味なのだろう。

「一度目は、豪華な部屋で、金のかかった服を着て、優秀な大人をこれでもかと付けられた、甘やかされた貴族の子どもたちがなにかしているくらいにしか思いませんでした。そもそもあのハンス隊長が一日、幼児の護衛だけをしているなんて信じられませんでしたし」

そんな目で見られていたとは思わなかった。それに、あのハンス隊長って何だろう。

「今日はその、四侯だとか、王家だとかいうことは置いておいて、私を誘導尋問にかけるような頭のいい子どもが、一日何をして過ごしているかという目で見ることに決めていました」

失礼な。私は誰も誘導尋問にかけたりはしていない。

だが今は話を聞こう。

「私も貴族の端くれですから、学院には通っていました。ですからもちろん、今のリア様やニコラス殿下よりは、難しいことも習っています。ですが、それは上級生になってからのことです」

それはどういうことだろう。

「リア様たちがやっているのは、小さなグループに分かれて自主的に課題に取り組むことで、皆で意見を出し合い、学び、自分から先生に質問する。その内容は子どもらしいものだとしても、論理の組み立ては大人にも劣りません。四侯も王族も、このように英才教育をするのが普通ですか?」

「しない。ニコラス殿下とリアが勝手にしていることだ」

勝手にとはひどい言い方だ。

「朝から夕方まで、大人が働くのと同じだけの時間、機嫌を損ねもせず、自ら学び、自立した生活を送る。確かにたくさん大人が付いていましたが、誰の手を煩わせることもない。護衛など必要ないと思うくらいです」

「本人たちがいくら優秀でも、幼い子どもたちだ。外からの悪意に何度危機にさらされたかわからない。護衛は必要だ」

おそらく、私たちは褒められているのだろう。だが、私の心に響いたのは、同じ人が、同じ一日を過ごしている私たちを見ているだけなのに、これほど認識が変わるということだ。

「それは、たとえばゴドフリーが、いくらわたしたちのいいところをみても、めにはいってこないってこと?」

ハロルドは少し目をさまよわせて、膝の上に視線を落とした。

「そう、かもしれません」

それなら、監理局の考えを変えさせるのは難しそうだ。

変えさせるのは私の仕事ではないけれども。

ハロルドは数日私の護衛としての研修を終えると、次に兄さま、そしてお父様のところと、次々に研修先を変え、いつの間にか兄さまの忠実な護衛へと変わっていた。

まあ、配属先が兄さまになるかどうかはまだ不明だけれど、ハロルドの希望はそうらしい。

「ゴミとかいわれてたのに、にいさまがいいの?」

「オールバンスの次代に仕えることを名誉に思います」

すっかり真面目になって、ちょっと面白くない。

「ゴミという評価を変えたつもりはありませんよ。これからの働き次第です」

「はっ」

ハンスもやれやれとあきれ顔である。

新しく入った護衛たちとは冬になったら虚族を見に行く予定だし、一通り訓練も終えたら、リスバーンにも貸し出すらしい。

「護衛隊よりずっと頼みやすいし、信用できる」

とはスタンおじさまの言である。

そうして、噂に振り回されているうちに夏はすっかり終わり、紅葉の秋が来ようとしていた。