軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三歳になりました

そして冬が来て、兄さまは一三歳になり、私は三歳になった。

兄さまはすらりと背が伸びて、そろそろ背の伸びが止まりそうなギルとの身長差が縮まってきて嬉しそうだ。

「ルーク、お前は永遠に俺より小さくていいのに」

「ごめんですよ。いつか私が見下ろすんですからね」

いつまでも小さいのが嫌だったらしい。

「リアは三歳になってもかわいいままですねえ。それこそ永遠にかわいらしいでしょうね」

「オールバンスは意外と夢見がちだよな、いてっ」

私はギルの腿に肘打ちをした。夢ではない。いつか実現する未来の話にすぎない。

「にいさま、ありがと」

そしてこれである。はえある三歳。私もついに赤ちゃん言葉を卒業できたのだ。

「それにしても、こうして城に集まるのは久しぶりですね」

兄さまがなんとなくまぶしそうに見上げるのは、王子宮だ。本来、ここでニコの遊び相手をしていたはずが、諸事情によりオールバンスで勉強することになって三か月ほどである。その間に冬が過ぎて、春の気配が感じられる季節になった。

「俺も学院を卒業して、ルークは春休み。ここの場所もだけど、こうして集まるのもほんと久しぶりだなあ」

フェリシアは去年学院を卒業したので、四侯の跡継ぎで学院を卒業していないのは兄さまだけということになる。

「最近は魔力訓練に加えて、何やら魔道具作りをしてるんだって?」

「つくっているわけじゃないでしゅよ。マールライトのへんしつを、いろいろためしているだけで」

しまった。油断するとまだ変な発音になってしまう。

「リアの片言がなくなってしまってとても寂しいです」

「そうだなあ。だからリア、あんまり急いで直さなくていいからな」

そしてちゃんと喋るとなぜか不評なのだ。いつまでも赤ちゃんではいられないというのに。

「そうだな。われらはまどうぐづくりをしているわけではないのだが、けっかとしていろいろなまどうぐができてはいる。やくにたつかどうかはべつとしてな」

ニコの誕生日はまだ来ていないので四歳のままだが、私との身長差は変わらないどころか、ほんの少しひらいているような気さえする。そしてますます賢くなったと評判である。

「いろいろってなんだい?」

ギルが興味津々だ。

「ああ、まずはいままでのものよりあかるいあかりのまどうぐができた」

「そりゃすごいじゃないか。なんで役にたたないんだ?」

ギルの質問ももっともである。

「あかるいからといって、広いばしょをてらせるわけではない。あかりのまわりはあかるいが、とおくはなれるとくらくなる。けっきょくは、ひろいへやにはふつうのあかり二つのほうがやくにたつということがわかった」

「お、おう。そりゃあ何とも言えないな」

投光器のように、屋外や天井の高い場所なら役に立つこともあるだろうが、今のところ需要はないのでお蔵入りとなった。そんなふうに魔道具については二人でいろいろと工夫しているのだが、なかなか実用に使えるものはできていないのが現状である。それに魔道具を扱うのはクリスがいないときと決めているので、そんなにしょっちゅうは実験できない。

それに、大人の監視の下でやらなければならないので、思い切った実験をするのもはばかられて、歯がゆいところではある。

それに、もうすぐウェスターに出発するというこの時期、クリスと遊んでいられる時間は貴重なのだ。

「フェリシア! クリス!」

私は竜車から降りてきた二人を見て大きな声で呼びかけた。いつもならフェリシアもギルも同じ竜車で来るが、今日はギルのほうが少し早く出てうちに寄ったので別行動である。

「まあ、リア。ちゃんとクリスって言えているわね。すごいわ」

フェリシアが優しく微笑んだ。レディとしては、フェリシアとギルのお母様のジュリアが私の見本である。

「でも、大きな声で叫んではだめよ」

「はい」

私はちゃんと返事をした。お父様も兄さまも私がレディになるということについてはまだ早いと思っているのか、正直に言うと教育に真剣味が足りないので、私は自主的に学んでいる最中なのである。向上心は大切だ。

「それから、足を踏ん張って胸を張るニコラス殿下の真似をしてはいけません。足は揃えて、おなかを引っ込めて」

「あ、あい」

「はい、ですよ」

「はい」

このようにフェリシアにはお世話になりっぱなしなのである。

「まあリア、むりしなくていいのよ。私だって三さいのころはそんなだったわ」

どんなだったのかはさておき、お姉さんぶっているクリスも元気だ。

「やあやあ、四侯の仲間たち、元気そうだね」

これは王子宮のほうからすたすたと歩いてきたマークだ。どうやら既に城に来て仕事をしていたらしい。

「マークだ!」

走り寄る私が足にしがみつくと、抱き上げもせずに背中をポンポンと叩く、マークの親愛表現はしょせんこの程度である。

「ニコ殿下やクリスとはたまに城で顔を合わせていたからね。ギルとルークは学院で会っていたし本当にリアだけが久しぶりだよ。元気そうで何よりだ」

クリスはフェリシアについてたまに城に行くし、兄さまたちは学院の警備の見直しで視察に来るマークに会っているようだし、そうなると私だけがオールバンスの屋敷で引きこもっていたということではないのか。

「リア、ひきこもりだった……?」

衝撃の事実に倒れそうだ。

「学院より大きいオールバンスのあのお屋敷で走り回っているのに引きこもりも何もあるものか。そもそもみんなで集まって勉強していたんだろう?」

「うん」

「リアが本当に引きこもっていたら、心配してお見舞いに行っていたさ。むしろいろいろやらかしてるって聞いてるけど」

「やらかしてないもん」

私はプイっと横を向いた。ニコと二人で静かにマールライトで遊んでいることのどこがやらかしだというのだ。

「はい、元気元気」

適当にあしらわれる私であるが、ニコもマークに寄ってくると、不思議そうに問いかけた。

「マークとはときどきかおは合わせているが、きょう来るとはきいていないぞ。なにかあったか」

四侯の子どもたちが久しぶりに大集合になったが、そういえばお城での勉強がやっと解禁されたためになんとなく集まっただけで、特に理由はないのだった。

同時に、ユベールの家庭教師もひと段落ついた。魔道具についての基礎は十分学べたので、最近はユベールと並んで魔道具作りやマールライトの変質に力を注いでいるところである。

マークはちょっと困ったように微笑んだ。

「ああ、ちょっとね。すぐにそれぞれの親から話があるだろうけど、先に情報を渡しておこうと思ってさ」

ニコの勘は当たっていた。

「ウェスターのけんか」

「そうです。今回、私のところとレミントンのところは関係ないとしても、オールバンスとリスバーンは面倒なことになりそうだから。もちろん殿下もですが」

面倒になると指摘された私たちは顔を見合わせてしまった。いったいどういうことだろう。

「ファーランドからの客人も同行することになったそうだよ」