軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

着々と秘密基地

秘密基地づくりは楽しかった。木の上の家は作れなかったが、温室の鉢を並べ替えてもらって、そこに箱に入れた飴や干した果物、長持ちするケーキなどを入れておく。

私は魔道具も扱うオールバンスの娘らしく、家から持ってきた魔道具も一緒にしまう。

「リア、それはなんだい」

「けーたいようの、おゆをわかしゅやちゅ」

「ああ、コンロか」

「あい」

それと明かりの魔道具だ。

「それは本格的過ぎやしないか」

マークが笑うけれど、やるなら本格的にである。

「ひとばん、しゅごしゅことかんがえりゅ」

「ひとばんか。それならリアになによりひつようなものはベッドなのだが」

「ベッドをおいたらひみつでもなんでもなくなっちゃうわ」

小さい組三人で悩んでいると、

「とりあえず毛布でいいんじゃないですか」

と、ハンスからヒントが出る。ハンスは王都の外にもよく出ていたから、野営には詳しいのだ。

「オッケー、ではスポンサーの私がいくつか持ってこよう」

「マーク、たすかる」

秘密基地とはいえ、大人がいるといろいろ役に立つ。

結局、秘密基地は二か所、図書室の奥の方と、温室に作ることになった。図書室のほうは私とニコとクリスの三人用の部屋で、椅子に毛布を掛けてテントにしてあるだけの簡易なものだが、その中で本を読んだりゲームをしたりしてそれはそれで楽しい。

「リアはだいたいねているがな」

「おひるしゅぎにちゅかうからでしゅ」

自由時間になるまで使えないので、お昼の後、狭い場所に入ったらそれは寝てしまうだろう。

しかし、私はもう一か所秘密基地を作ることを考えていた。これは残念ながら、クリスの入れるところではないので、クリスには内緒だ。

レミントンの視察と言うことで王都の外に出たフェリシアは、東部のお土産だと言って、食べたことのない黄色い果物を干したものや珍しいお菓子を持ってきてくれた。

「リアにはレースとかよりこれがいいと思って」

なかなか分かっている。

ちなみにニコを始めとする男子組には、模様は違うけれど鞘に入った曲がったナイフがお土産だ。なぜ曲がっているのかさっぱりわからないが、男子たちは大喜びだった。フェリシアは私とクリスにだけこっそり教えてくれた。

「お父様が、男子ならこれで間違いないって教えてくれたのよ」

そうしてお土産を渡すときだけは楽しそうだったし、視察で見聞きしてくれたことも面白おかしく話してくれた。それでも、何となく出かける前より思い悩んでいることが増えたように思う。

「ねえさま、なんだかさいきんものすごくつかれているときがあるの」

クリスも心配そうだが、何を心配しているのかは、ある日温室の秘密基地に案内したときにわかった。

「まりょく、ない」

思わず私がつぶやいた言葉は、おそらくハンス以外誰にも聞こえていなかったとは思う。その日のフェリシアは、驚くほど魔力が少なかったのだ。身にまとう魔力がなければ、最初にあった頃のアリスターのように、あるいは私自身のように、気を失ってしまうこともあるくらいきついことなのに。

その日フェリシアは午前から城に来ていた。ということはアンジェ様の政務の手伝いだ。しかし政務の手伝いで魔力が減るとは思えない。

「けっかいの、ましぇき」

それに魔力を注いだとしか思えないのだ。しかし、基本的には四侯であっても、18歳を超えないと、結界の魔石には触れないはずなのだが。私は目を細めてフェリシアを見た。

フェリシアは16歳のはずだ。

その日はクリスとフェリシアは早めに帰り、私はおとなしくお父様を待っていた。

「リア!」

「おとうしゃま!」

私はお父様に抱き上げられた。毎回これである。そしてそのままニコに手を振って竜車で帰るのだが、今日は他にやりたいことがある。

「おとうしゃま、よりみち、ちたい」

「寄り道? なんのことだ」

お父様は抱っこしている私の顔をのぞき込んで、真剣な私の顔を見ると、優しかった表情を真剣なものに変えた。

「けっかいのま、いきたいでしゅ」

「結界の間」

いつまでも帰らない私たちを、ニコが不思議そうな顔で見ている。

「それは今日、絶対に必要なことか」

「あい」

私は頷いた。

なぜ単純に、今日のレミントンの様子をお父様に聞かないのか。それは、四侯はそれぞれ別の部屋で政務をとっているからである。

お父様は疲れたようにため息をつくと、竜車にナタリーを乗せて城の入口へ移動するよう指示を出した。

「ニコラス殿下、ちょっと用事があるので、リアを連れていったん城に戻ります」

お父様はニコにちゃんと説明すると、私を抱っこしたまま城へと戻った。ハンスだけを引き連れて。

「何がしりたい」

「ふぇりちあが、けっかいのまに、はいったかどうか」

「ふむ」

お父様はドアを開けて、廊下を歩いて、またドアを開けてと言うように入り組んだ道を迷わず歩いている。

「マークはもちろんだが、ギルも時々は結界の間に入っているぞ。ルークも、ごくたまにだが連れていく。フェリシアが結界の間に入っても何もおかしくないと思うが」

「はいったあとの、ふぇりちあのようしゅ」

「警備にか。まあ、聞くだけは聞いてみようか」

最後にもうひとつドアを開けて、やっと結界の間に到着した。さすがのお父様も私が重かったらしく、やれやれというように私を廊下に下ろした。

警備の人たちが私達を不審そうな目で見ている。しかし、お父様は四侯だし、私も四侯の瞳を持つものだ。

「リアに結界の間を見せてやろうと思ってな」

「そうですか。しかしこんな時間に」

「リアも殿下のお相手がなあ」

お父様は、殿下の相手が大変で、この時間しか私が来られなかったというような雰囲気を醸し出している。

私は心の中で警備の人に頭を下げた。だって、実は時々、ニコやマークと一緒にこの部屋を訪れているからなのだ。そう、第三の秘密基地が結界の間なのだ。

私はお父様にばれないように、警備の人に目配せをした。

「りあ、いち、みたかった」

私のわがままだということにしておこう。

「四侯とその瞳を継ぐ者の出入りは自由です。どうぞ」

警備は頷いてドアを開けてくれた。

「そうそう、今日は誰が魔力を注ぐ番だったか」

お父様がさも今思いついたかのように問いかけた。

「今日はレミントン侯です。親子でいらっしゃいました」

フェリシアも来たことを聞かずに教えてくれた。私はそれを聞いて初めて分かったという顔をしてさりげなくこう言った。

「ふぇりちあ、ちゅかれてた」

「そうですねえ。入るときは憂鬱そうでしたが、帰るときはぐったりでしたね」

ペラペラしゃべってくれたが、どうもお城の護衛はそろいもそろって間抜けなような気がする。

「さ、リア」

「あい」

ハンスをドアの前に置いて、私達は結界の間に入った。入ったからには魔石は見たいので、お父様に抱えて見せてもらう。

「リア、つまりアンジェは、16歳のフェリシアに魔力を注がせていると言いたいのか」

「あい。きょう、ふぇりちあ、まりょく、なかったでしゅ」

「ふうむ。違反ではない。しかし、なぜ無理をさせてまでそんなことをさせる。訓練なら途中で止めさせてもいいはずだ」

レミントンが不穏な動きをしているのは確かだ。しかし、それが何のためなのか、一つ一つの動きに関連性はないように思えるのだ。

私はただ、友だちに元気でいてほしいだけなのだ。