軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お父様の思惑

まあ、うっかり自分もできると言ってしまったことは仕方がない。しかし問題は、なぜニコが練習中かと言うことだ。

そもそも、アル殿下やランおじ様がそろって結界を学びたいと言ったのは、今週の始めではなかったか。兄さまに目で尋ねると、

「学院の寮と城は割と近いんですよ。夜、ギルといっしょに二度ほど招かれました」

という答えが帰ってきた。

「りあもにいしゃまといたいのに!」

平日は兄さまは寮で、夜は一緒に過ごせない。それなのにニコとは一緒に過ごしているなんて。

「リア、すまぬ。ルークとギルにはごくひできてもらっているから、おおやけにはできなくて」

ニコが申し訳なさそうな顔をした。しかし、極秘とか、公とか、ニコが難しいことをサラっというので、私はおかしくて怒るどころではなくなってしまった。もっとも、

「ごくひもなにも、みんなにばれてりゅ」

ではないか。マークにもフェリシアにもクリスにも、なんなら護衛にもばれてしまっているではないか。護衛など、そのまま監理局に報告がいってしまうというのに。

私はグレイセスのほうをちらっと見た。グレイセスは何も聞かなかったような顔をしてまじめな顔で立っている。素晴らしい。ハンスの方を見たら、ハンスは片方の眉を上げてにやりとした。

「はんす、ちっかく」

「待て、リア様。今なんで不合格が出たか、さっぱりわからないんだが」

確かにちょっと理不尽だったかもしれない。仕方ない。私は眠いのだ。

「にいしゃまが、にいしゃま」

「さ、リア、兄さまにおいで。ほら、いい子」

兄さまに抱き上げられて私はすやりと寝てしまった。この眠い体質は何とかならないものか。皆がこの後どうしたかわからないではないか。頑張って起きていた分よく寝てしまったようで、起きた時はもう帰りの竜車で揺られていた私である。

「おわった……」

兄さまがお城に来る一日が終わってしまっていた。無念。お父様が驚いたようにこっちを見た。幼児がお昼寝から起きてそんなことを言ったら、確かに驚くだろうな。

「リア、いきなりなんだ」

「きょうがおわりまちた」

「なんだ、そんなことか」

兄さまが来る日にはマークもフェリシアもやってきて、にぎやかで楽しい日なのだ。そんなことではない。

「そもそも、今日は終わっていない。これから私とルークとおいしいご飯を食べて、お風呂に入って、おしゃべりしてホカホカの布団に入るのだぞ」

「たちかに!」

まだ今日は終わっていなかった。私が機嫌を直している横で、お父様が兄さまと話を続けている。

「それで殿下方はどんな感じだ」

「はい。さすがと言いますか、まずできたのはニコ殿下でした」

「ほう」

「にこ!」

よくわからなかったが私も話に参加しておく。

「リアといい、ルークといい、幼いほうが習得しやすいのだろうか」

「おとうしゃまも、しゅぐできた」

「私は優秀だからな」

自分はできて当たり前だというお父様。

「かっこいい」

「なんだ、リア。照れるではないか」

ちっとも照れたような顔ではないのがお父様である。

「アルバート殿下とランバート殿下は苦戦しておられますよ」

「魔力量が多すぎて、かえって微妙な調節が難しいのかもしれんな」

「そんな感じがします。それから、相談していた通り、マークやフェリシアにも結界のことは伝えました」

最初からお父様には相談済みだったのか。私はほっとした。

「監理局が何と言ってくるか。まあ、王家も巻き込んでいるから、やるなとは言えまいな」

くくっと笑うお父様は、管理局が大嫌いなのだ。

「もちかちて」

「そうですよ。グレイセスも管理局に報告しないわけにはいかないでしょうからね」

どうせ管理局には伝わるのだから、わざと伝わるようにしたのだという。

「ハロルドには先に伝えてあるからモールゼイは大丈夫だが、視察から帰って来たレミントンがどう出るか」

お父様が少し難しい顔をした。兄さまはたいしたことはないでしょうと言う顔をしている。

「フェリシアの魔力訓練についても大して興味はないようですし、クリスに至っては魔力訓練をしているかどうかすら知らないでしょう。このことについてもレミントンは行動を起こさないように思いますが」

「視察とは言えアンジェが王都を出たことには驚いた。キングダムを出るどころか、王都を離れるのも好まないと思っていたからな」

常にないレミントンの動きに、お父様は警戒しているらしい。

「それより、お父様の視察のほうが心配です」

「ケアリーは遠いからな。リア、内緒だが、ウェスターの第二王子と会う予定だぞ」

「だいにおうじ……。ひゅー!」

懐かしい名前を思い出した。

「その時に、あのリスバーンの子がどうしているかも聞いてくるつもりだから、父様の帰りを楽しみにしているがいい」

「あい! ありしゅた!」

「そういえば、アリスターと言ったか」

相変わらず興味のないものには興味のないお父様である。第二王子と言っていたが、ヒューの名前も知らないのではないか。

アリスターたちのもとを離れてからもう半年になる。どのくらい大きくなっただろうか。

「リアがますます愛らしくなったと伝えてこよう」

「お父様……。大人げないです」

兄さまが冷たい目をしている。

「りあ、うでがくめりゅようになった」

「おや、もともとできていたのではなかったか」

お父様がちょっとにやにやしている。

「もちろんでしゅ。もっとじょうじゅになりまちた」

「わかったわかった。腕が上手に組めるようになったと伝えてくるよ」

「あい」

本当は会いたいけれど、会いに行くには遠すぎる。

「リア、夏に行きましょう」

「なつ?」

「そう。学院が長いお休みに入ります。お父様は10日しか王都を離れられないけれど、私とリアなら、何日離れていても大丈夫ですからね」

「そ、それはずるいぞ」

お父様が慌てている。

実際、警備の関係もあり、そんなに長く王都を離れていることはできないだろう。特に私は何度もさらわれかけた過去がある。警備が厳重なものになり、お金もかかる。国交の問題もある。気軽にウェスターに行けば、イースターにも、ファーランドにもと言う話にもなるだろう。

それでも、会えるのなら会いたい。いつか会おうと思っても、会えなくなることだってあるのだから。

「ルーク、私がケアリーに行っている間に、殿下方が結界を張れるようにしておいてくれ。いつまでも相手をするのは面倒だから」

「相手をしているのは私ですよ。まったく、お父様はいつも一言余計なのです」

王都に帰って来たばかりの頃の、退屈だった日々は何だったのかと思う。私だけでなく、私の周りもあわただしさが増している春であった。