軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

北へ行こう

「おじいしゃま!」

「おお、戻って来たな」

私は竜のかごから降ろしてもらうと、待っていたおじいさまに走り寄った。

「おうおう、よちよち」

「ちてない!」

「そ、そうだな。いやー、リアは足が速いな」

みえみえのお世辞だが、ないよりはよい。そしておじいさまは高く抱き上げてくれた。

「どうやら目論見通りか?」

「あい! またいっしょでしゅ」

「そうかそうか」

話している内容は実は、結構腹黒いものなのだが、はためにはお年寄りと幼児のほのぼのとした触れ合いに見えることだろう。

「おじうえ、わたしにもあれをやってくれ」

「あれ? ああ」

ニコがアル殿下に高い高いをねだっている。ぎこちなくそれをしてあげているアル殿下は、私達が何を報告し合っていたかなど見ている余裕はなかっただろう。まったく手のかかる人たちだ。

「どうなることかと思ったぞ。やんちゃなお子たちだな、四侯の次代は。それにしても、ギル殿はせめて一緒にならずに、二人を止められなかったものか」

コールター伯がやれやれと言った表情で近寄ってきた。そして少しでも話の通じそうなギルに話しかけている。兄さまも私とひとまとめに無茶をすると認定されてしまったらしい。申し訳ない。

「多少年上ではありますが、俺には、いや私にはこの二人を止めるのは無理ですよ」

「だから側についてフォローに回っているのかな」

ギルはにこりとすると軽く肩をすくめた。

四侯は対等である。だからどこにも権力が集中しないのだし、お互い誰の下に付くこともない。ニコのことに関しても、この旅に関しても、ギルはまるで控えのようにふるまっているが、本来そのような性格ではない。

むしろ兄さまよりまっすぐな、はっきりとした性格だし、行動力もある。私を探しに、そして迎えに来るのに11歳の子どもの同行など許されなかっただろう。あくまでギルがいたから、兄さまが行くのも認められたのだ。

控えめにしているのは、ギルがそうしたいから。私達につき従っているようにしか見えないとしたら、その人の目がむしろ節穴ということになる。

コールター伯は、おじいさまの腕の中でコールター伯をじっと見ている私を見ると、あきれたように、そして面白そうに目を細めた。

「リア殿、それで私は合格ですかな」

「あい」

ギルのことを評価できるコールター伯はちゃんとした人だ。というか、最初からちゃんとした人だった。

「少し遅れてしまったが、そもそも準備も終わっていることだし、このまま旅立とうと思う」

「そうですな。予定より少しばかり遅れていますしな」

遅れているのは、煉獄島に行きたいと言った殿下方のせいである。決して私が王都に帰ると主張したせいではない。

「わかっている。そんな目で見るな」

「ふつうでしゅ」

「いいや、絶対に違う」

私はアル殿下とのそのやり取りに懐かしさを覚えた。ヒュー。元気にしているだろうか。

「おじうえ、りあとあそんでいるばあいではないのではないか」

「遊んでなどおらぬ」

アル殿下ははっとして出発の指示を出し始めた。それならば私たちも準備を始めよう。

「みにー!」

「キーエ!」

せっかく旅支度をしたのだから、今日はミニーに乗って旅立とう。

「キーエ」

「キーエ」

さあ、頭につかまりなさいと、ラグ竜が集まってくる。ほんとは抱き上げてもらった方が、楽にかごに乗れるのだが、さっき頑張って見せた手前、ハンスに乗せてもらうとは言いにくくなってしまった。

「あい!」

手を広げると、一頭のラグ竜が頭に私をくっつけてすっと私をすくい上げたので、ぎゅっとしがみつく。そのままゆっくりとかごに移動してもらい、ふっと手を離すと、すとんとかごに入ることができた。

「わたしもだ!」

「キーエ」

「ニコ! お前は竜車だ」

「なぜだおじうえ」

「それは」

理由は別になくて、なんとなく危ないような気がするからなのだろう。

「おじうえはりゅうにのってとなりをはしればよいではないか」

「それは」

アル殿下はそこで止まったが、それは楽しそうだが、ニコの安全のためにどうなのかと迷っているようすが伝わってくる。

「リアの隣は私ですね」

「あい!」

兄さまが微笑みながらかごのベルトを固定してくれる。

「キーエ」

「なんだお前は。ニコを乗せるというのか」

「キーエ」

わかってるじゃない、はやくはやく。ラグ竜がアル殿下をせかしている。

「わかった。仕方がない。しかし竜の上は寒い。疲れたり寒くなったりしたらすぐに言うのだぞ」

アル殿下はニコにそう言うと、仕方ないというように私の方も見た。

「リーリア、お前もだぞ」

「あい!」

「素直なのはそれはそれで得体が知れない」

失礼な。小さい声で言っても聞こえてるんだからね。兄さまもくすくす笑っている場合ではない。

「さ、我らも竜に乗りましょう。コールター、世話になった」

「ネヴィルよ、私はいい。もうここで殿下方の帰りを楽しみに待つだけだからな。しかしおぬしは」

これからこの厄介な幼児と面倒な王子たちを連れて無事お見合いの場に連れて行かねばならぬのだぞと、言いたかったに違いない。

「なんの。これほど楽しいのは久しぶりだ。これから何が起こるか、心躍る思いだ」

「そういう奴だったよ、おぬしは。だからこそクレアをオールバンスに託せたのだしな」

そうだともそうでないとも言わず、おじいさまは竜を北の方に向けた。後は旅立つだけだ。ラグ竜が何かを期待するようにこちらをちらちらと見ている。

そして竜を挟んだ反対側のかごからも期待する気配がする。

「ちかたないでしゅ。ここはにこにゆじゅりましゅ」

「いいのか!」

「あい」

何のことだと大人たちが振り返ったとたん、ニコが大きな声を上げた。

「しゅっぱつ!」

「キーエ!」

「キーエ!」

かわいい子たち。やっと出発よ。

「おい、なにを、うわっ」

私は服の中からお父様にもらった笛を引っ張り出した。

「プー、プー」

「キーエ!」

「キーエ!」

さあ、この楽しい音に合わせて、足を動かそう。

「こらっ、急にどうした」

「キーエ!」

「キーエ!」

北には仲間が待っているから。

「しゅっぱちゅ!」

「キーエ!」

「キーエ!」

「リアにはかないませんねえ」

さあ、とりあえずおじいさまの屋敷へ!