軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話:おっさんはレベル上限にたどりつく

空飛ぶ船を手に入れ、そのまま雲の道を通って街に戻った。

浮石を渡る冒険者は少ないおかげでかなり実入りが良く、得られたドロップ品はいい金になっている。

そして、今日は……。

「あははは、風が気持ちいいね」

「んっ、楽しい」

「慣れって怖いわね」

「そうですね。昨日はもう乗りたくないと思っていたのに」

「きゅいっ!」

昨日はかなり苦労させられた島から島への浮石渡りは、船を使うことであっさりと可能になる。

ここのダンジョンは船を使うことを前提に作られており、雲の道が島と島の間に張り巡らされている。

また、次の島に着くたび船を降りずとも、雲だけを通って、最後の神殿がある島までいけるようにもなっている。

「昨日、断ったけど、やっぱ運転してみたくなったよ!」

「ルーナもしたい」

「勘弁してください、あなたたちに命を預けるのは嫌です」

フィルは珍しく必死でティルとルーナを止めている。

俺は慣れているから危なげなく操縦できているが、一歩間違って雲の道から外れると真っ逆さま。

ペーパードライバーに任せるのはいくらなんでも危なすぎる。

「練習してからだな。ダンジョンじゃないほうの浮遊島に練習スポットがある。雲池と言ってな、雲の下に湖があるから落ちても死なない。次の休日は雲池で遊んでみるといいかもな。あそこはいいぞ、空魚釣りができる。雲を泳ぐ魚でな、なかなかうまい」

鶏と白身魚の間としか形容できない味なのだが、とれたてを天ぷらにすると絶品なのだ。

「あっ、いいねそれ」

「たくさん釣る」

「釣りもいいけど、安全な場所なら私も運転してみたいわ」

きっと楽しい休日になるだろう。

「よし、もともと全員レベル50になり次第、一日体を休めてから三竜の祭壇に向かうつもりだったんだ。その休みは雲池に行こうか」

「私も賛成です。宿でごろごろしているより、いい休憩になりますからね」

みんな賛成してくれたので、休日の予定が決定した。

釣りはしばらくしていなかったな。宿にもどったら道具の手入れをしておかなければ。

昨日は二日がかりでやってきた最後の島まで、二時間ほどでたどり着いた。

やはり、船はいい。

今日は周りを注意深く見ていたが、俺たち以外に船を使っているパーティはいなかった。

まあ、浮石渡りをするパーティ自体がいないだろうし、最後の嫌がらせとしか思えない浮石渡りを行えるパーティはいないのだろう。

さっそく、最後の浮石を踏み、そして陸地に戻る。

「みんな、今日は三連戦だ。かなりきついがやるぞ」

「んっ、大丈夫。ポーションいっぱいある」

「矢もこれでもかってほど用意したよ!」

俺の声にルーナがポーションを両手に持ちながら、ティルが矢筒を掲げながら返事をする。

今日からしばらく、雷竜レプリカを狩る。

ボスクラスの中でもさらに強力な雷竜のレプリカだけあって、いくらパターンを知り尽くした相手と言っても怖さはある。

それと一日に三度も戦うのだ。

かなりきつい。

三度というのはあくまで予定だ。一戦行うごとに全員のコンディションを確認する。

これ以上は無理だと考えれば、即座に帰路につくつもりだ。

「ユーヤおじさま。来たわ」

雷を纏う竜が飛来する。

「さて、まずは一戦目です。確実に行きましょう」

セレネとティルが得物を構える。

「行くぞ」

俺の掛け声とともに、全員で雷竜レプリカに挑みかかった。

日が沈みかけていた。

俺は息を荒くし、剣を杖代わりにして、なんとかその場に踏みとどまる。

……しんどい。ぎりぎりだった。

今は三度目のレプリカ雷竜との戦いが終わったところだ。

二戦目が終わった段階では、まだいけると思ったが、お子様二人組たちのコンディションを見誤った。

二人とも、ハイになっていて疲れを見せていなかったのだが、二戦目の時点でかなり消耗しており、三戦目の間に三時間あいてしまったことで疲れを自覚してしまい、三戦目は動きに精彩を欠き、ミスが多かった。

それを補うために無理をした結果がこれだ。

「ぎりぎりだったわね」

自慢の鎧が半損したセレネが苦い笑みを浮かべる。

「でも、なんとか勝てましたね」

フィルもティルの穴を埋めようと無茶をしているせいで、疲れを隠しきれていない。

「ううう、ごめんなさい。だめだめだったよ」

「反省してる」

「きゅうううい」

お子様二人組は、ぼろぼろで突っ伏している。

二人が好きで、ナイト役をかってでているエルリクもぼろぼろだ。

「いや、俺の判断ミスだったな。次からは一日二戦にしようか」

二人のコンディションを見誤ったリーダーの責任だ。

「えっと、お昼寝とかでちゃんと休んでいれば、大丈夫な気がするよ!」

「ん。今回の敗因は休憩時間に探検したこと、あれ、けっこう疲れた」

「二人でトイレに行くといって、なかなかもどってこなかったと思ったら、そんなことをしてたのか……」

俺たちはトイレに行くとき、前衛、後衛の二人組でいく。

今回はお子様二人組でトイレに行ったのだが、なかなかもどってこず、捜索しにいく寸前だった。

「あなたたち、何やっているんですか」

「……だって、あの美味しい鳥肉を落とす魔物がいたからさ」

「あれは見逃せない」

二人だけで、あいつを相手にしたら、それは疲れるだろう。

軽く二人に拳骨を落とす。

「いひゃい」

「ごめんなさい」

「休むのも仕事だ。とくに連戦を行う場合はな。それで、おまえたちは迷惑をかけた。二度とそんなことをしないこと」

「わかったよ」

「ん。もうしない」

この子たちは、約束は守る。

きっと、もう大丈夫だろう。

これなら明日も三戦できるはずだ。

それから数日は毎日雷竜レプリカを三体倒すのが日課になった。初日以降、どんどん慣れてきたおかげで疲労は最小限になり危なげなく倒している。

そして、とうとう全員レベル50になった。

【試練の塔】を使わない限り、到達点だ。

昨日は雷竜レプリカとの三連戦に加え、連日の疲れ、それが目標を達成したことで爆発し、全員泥のように眠り、お祝いどころじゃなかった。

しかし、今日は休日だ。

盛大にお祝いをする予定であり、フィルとこっそりサプライズを用意している。

「ユーヤ、ユーヤ、ここが雲池!?」

「浮遊島にこんな、おっきな穴があるなんて」

お子様二人組がはしゃいでいる。

街の北に、雲池はあった。

巨大な穴と、その穴には水が溜まり湖になり、その穴には雲が漂っている。

ここは雲船の練習スポットだ。

思いっきり雲船を飛ばせるだけの距離があり、落ちたとしても下が湖。しかも水面から坂道のような雲がある上に復帰しやすい。

ここでしっかり練習して、それからダンジョンで本番というのが本来の流れだ。

ゲーム時代にはミニゲームがあったのだが、さすがに今はないみたいだ。

タイムアタック式で、俺は相当やり込んでいる。

だからこそ、あれだけの操縦技術が身についたのだ。

「ここなら落ちても死にはしない。好きなだけ乗り回すといい」

ちなみに、船には自動修復機能つきだ。

壊れても気にしないでいい。

「じゃあ、私から!」

「ずるい、ルーナも早く乗りたい」

お子様たちがわいわいがやがやいいながら、俺がだした船を二人で持ち上げ走っていく。

「あいつらが飽きたら、セレネやフィルも操縦してみるといい。自分で乗ると楽しいぞ」

「ええ、お言葉に甘えるわ」

「ですね。いい経験になります。それまでは釣りでもしておきましょう」

それがいい。

獲れたての空魚の天ぷらも楽しみの一つ。

あの子たちはよく食べる。たくさん釣らないとな。

今日は休日、遊び、うまいものを食い、そして明日は、万全の体調で三竜の祭壇に挑むのだ。