軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97 可能性の種②

「まあポイントはいいや。心配をかけた詫び、というわけでもないんだけど、これを受け取ってくれ」

そういって俺は可能性の種を一つ手に取り、ななみに渡そうとする。それと同時にななみの笑みが消え、目が鋭くなる。

「何をなさっているのですか? ダンジョンマスターですら、価値あるものとしてカウントするこれを、私にですか? 混乱されているのですか? 自暴自棄ですか? いったん心を落ち着かせてください」

そういって、ななみは俺の手をどけようとする。

「落ち着いているさ。考えに考えて、最初に考えたことが最終的な結論で落ち着いたんだ」

もちろんダンジョンに突入する前から使用方法は考えていた。

実の所、これをツクヨミポイントに換金して、何らかのアイテムをごっそり買うことも考えた。しかし、それよりも皆に使ってもらいたいと思っていたし、ダンジョンでその思いはより強くなった。

「ここまでこれたのはみんなのおかげだと思っているし、ここから次のステップに進むためには、皆がいないと無理だ」

そもそも皆の強化イコール、俺の強化であろうと思っている。

俺一人ではいけない場所も、これから先たくさん出現するだろう。俺一人では倒すことが難しいモンスターも出てくるだろう。攻略したいイベントも一人では無理なものも多い。

しかしそういった場所にこそ、いいアイテムや良い狩場が有ったりもする。それに複数人で戦えば、効率の良い稼ぎが行える場所もある。

「ななみは予想したみたいだが、実は学園ダンジョンが結構きつかった。この先一人じゃ辛いであろうことをひしひしと感じたんだよ」

そういうと、ななみはジト目でこちらを見る。口には出してないが、言いたいであろうことはすごく伝わった。

「す、すまん。それで、ななみには申し訳ないが、これから先も力を貸してほしい。だからこそもらってほしいんだ」

そういって種を差し出す。

ななみはそれを見て、やれやれと首を振る。

「何をおっしゃいますか。力を貸してほしい? 私のあるところ、ご主人様のあるところです」

彼女は立ち上がると、メイドらしいお辞儀をした。

「いついかなる時も、私はご主人様のメイドであり、それは何が起きようとも揺ぎ無いことです」

ななみはそういうと種を一つ手に取る。

「こうまでされては仕方ありませんね、いま私の全てを捧げますね?」

思い重い思い重い。

「アホなこと言ってないで、普通に取ってくれ……」

「まあ、いいでしょう。そういえばほかの人には渡されたのですか?」

「いや、まだだ」

俺がそういうと、ななみは首をかしげる。

「いったいどうして……私を最初に?」

「これから先、一番相談するだろうし、一番一緒にダンジョンに挑むことになるだろうからな。そう考えると、なんか悪いな。連れまわしてしまって」

ななみは古代語を理解しているし、あまり語れないだろうが、ダンジョン知識がある。相談事は多いであろう。

そして罠系スキルが充実してる、ななみにこそ、特にダンジョンへ来てもらいたい。必然的に声をかけることは多くなるだろう。また先輩やリュディは一応学園生で、何らかがあればダンジョン攻略に来れない可能性もあるし。

「そうですか、私への信頼度はすさまじい数字になっているであろうことが予想できますね……!」

「まあ、信頼しすぎて数値化出来ないぐらいだな」

リュディや先輩たちも同じだが。

ななみは目を見開き、酸素を求める金魚のようにパクパクと口を開いた。

「……わ、私も702億と申しておりましたが、実のところ数値化できない特異的な数字がございまして、つまりエターナルな信頼が……」

「お前は何に張り合ってるんだよ」

しかも何を言っているかまったく分からんぞ。

「まあ冗談は置いておきましょうか、それでご主人様は種をご使用されましたか」

「実はまだだ」

「では今二人で使用しましょう」

俺も自分用に取り出し、それを口に入れようとして……ななみに止められた。

「ご主人様は知っておられますか、実はこの種には食べ方があることを」

「……そんなのあるのか?」

「ええ、そうなんです。ご主人様はメイドに、メイドはご主人様に食べさせ合わなければならな……すごく胡散臭そうにこちらを見ますね」

「いや、明らかに嘘だろ」

「貫き通せば真実になることもあります」

「いやそれ嘘だと認めてるじゃないか」

俺は手に取った種を飲み込むと、ななみも種を口に入れた。体に変化は……今のところない。

「大丈夫です、必ず効果は表れてくるはずです。それよりもほかの種をどうするか、です」

「ああ、自分とななみ、リュディ、先輩は確定として、あとは……クラリスさんか姉さんに渡そうかと思ってた」

「そうですか……妥当でしょうね」

「少し気になるのは姉さんかクラリスさん、そして毬乃さんに渡せないことか……」

「いえ、花邑毬乃こそ一番種が不要な人物です。アイツには私が話をつけておきますから、ご主人様はリュディ様たちに」

いつも思うが、毬乃さんにだけは敵対心むき出しだよな。

「分かった、じゃあこの後はみんなの部屋に行こうかな」

「夜這いの際は私も混ぜてくださいね」

「しないし、意味不明なことを言わんでくれ」

何かを考えるななみをしり目に、ふと気になったことを聞いてみる。

「そういえばなんだが……」

「そういえば、ですか?」

「あの机の上にある紙が気になるんだが、あれは何なんだ?」

そういって机の上にあった紙束へ指をさす。

「ああ、あれですか? デフォ……」

「デフォ……?」

「……デフォルト寸前のルイージャ様をどうすべきか計画を立てておりました」

「そいつは難しい問題だな」

学園のテストで満点を狙う方が楽に感じてしまう。

「でもさ、本当にそれだけか? なんか人形とかいう文字が見えるような気が……しかもサイズとか……」

「! さあ、善は急げです。種を渡しに行って来てください」

「あっ、おい……」

俺は無理やりななみに押し出され、部屋から退出した。