軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9 事件発生②

オーレリアンがクラリスを蹴飛ばすと、ずかずかと大股でリュディに向って歩いて行く。そして彼女に手を伸ばした瞬間、俺はその場を飛び出した。

俺は真っ先にスキンヘッドを狙った。近くにあったテーブルを第三の手(ストール右側)で持ち上げ、スキンヘッドらが居る場所にぶん投げる。

テーブルにのっていたガラス食器が割れるのと、オーレリアンがリュディのスカートを破るのはほぼ同時だった。そっちに意識の行っていた彼らは、俺の投げたテーブルに反応が遅れた。

幾人かの人間がテーブルによって吹き飛ばされる。俺はリュディの元に走りながら、すぐに第四の手(ストール左側)でテーブルを掴む。そして人が固まっているところに投げた。

「なにものっ、どわぁぁぁぁぁあ!」

全て叫ばれる前にそいつは吹っ飛んでいった。俺は走りながら第三の手で倒れていたクラリスをひろうとすぐにお姫様だっこに持ちかえる。そしてすぐさま第三の手を硬化させ、飛んできた銃弾を弾いた。

「くっ」

頭に衝撃。大きく首に圧力が掛かる

全て弾くことが出来たわけでなかった。いくつかの銃弾はしっかり第三の手が弾いたものの、一つが頭に当たったらしい。

(マフラー巻いてなかったら死んでたな……)

そして第四の手で振りかぶると、呆然としているオーレリアンの横っ面を本気で、それはもう粉々にするつもりでぶん殴った。

「ぎゃああああぁぁぁぁあ」

俺はすぐに第三と第四の手を広げながら、片手でクラリスを支え、反対の手でリュディをひろう。そして三人が隠れる位にストールを広げた後、魔力を大量に送り硬化させる。

ガンガンと雨のように銃弾がストールに降り注ぐ。なんども銃弾を弾く音が聞こえるが、ストールは微動だにしない。どうやら破られることはないようだ。しかしだ、こちらは手詰まりでもあることをしっかり自覚している。

ストールから視線を外し、二人を見つめる。

リュディは混乱しているのか、呆然と俺を見つめていた。そしてクラリスの方は体中がボロボロではあるが、なんとか意識はあるようだ。

さて、こんな二人を抱え俺は何が出来るだろうか。そもそも自分一人でさえ立ち回れるか不安だというのに。

「あんた、回復魔法は使えるか?」

俺は右腕に居るリュディに訪ねると、彼女はびくりと震え、首を横に振った。

「そうか……」

想像できてはいた。彼女は遠距離攻撃特化の魔法使いで、回復魔法は基本使えなかったはずだ。無論俺も使えない。中盤に入手出来るアイテムやとあるイベントで覚えさせれば、リュディ、そして俺も回復魔法が使えるのだが、無い物ねだりしても仕方ない。

と、ふいに背中からほんの少しの熱を感じ取る。どうやら今度は火魔法を使っているらしい。なんとかストール盾は耐えているようだが、すぐにでも止めさせたい。このストール盾がどれくらいの強度があるかも分からないのに、黙って攻撃を受け続るなんてそんなバクチしたくない。

いや、現状を考えればバクチにでるしかないような状況ではあるのか。

もしかしたら相手の攻撃を全て防ぎきれるかもしれない。だけどこのままずっと防御に徹していても俺の魔力が尽きたら終わりだ。まだまだ余裕そうではあるが、尽きたらコレはただの布で、俺は役立たずだ。

しかし、だからといって攻勢に出ることも出来ない。なぜなら。

「……こんな欠陥があったとはな、どうすりゃ良いんだ」

思わず呟く。ストール全体を円形に覆っているせいか、全く前が見えない。

ストール壁は確かに頑丈だ。しかし覆うように広げることは、視界をふさぐという事でもある。大きな真っ黒傘を広げて前につき出すようなものだ。ビニール傘みたいなものだったら相手が見えるというのに。

いや、しかしだ。逆に言えば今の俺たちの状況が相手は分からないわけだ。何らかの策を講じるにはうってつけなのかもしれない。何らかの用意をして相手の不意を突ければ……。

でも、どうすれば良いんだ。策を講じようにも、俺が戦闘で使えそうな魔法は、ストールを使った第三の手、第四の手ぐらいだ。他はほぼ練習していない。奴らを潰すには接近するか、何か投げるものを探さないとダメだ。しかしそれをしたら……。

ストールから目を離し二人を見つめると、不安そうな瞳でこちらを見るリュディと目が合う。

今ここで俺が攻勢に出ても、彼女達に危険が残る。せめて俺のストール盾をここで発動しっぱなしに出来れば問題はないのだが……。いや待てよ。

抱き寄せている手でクラリスの体を軽く揺する。

「おいアンタ、頼む力を貸してくれ!」

「ヴうぅ……ぅう」

さっきリュディはクラリスが鉄壁の魔法使いと言っていた。ならば盾魔法を唱えることが出来るはずだ。彼女にリュディを守ってもらうだけで、この状況は全然違う。

彼女は苦しそうな表情を浮かべたまま、ゆっくり口をひらく。

「うぅ……お前、は何、者だ……」

思わず舌打ちが出た。そんな事をしている暇はないのだ。もし後ろで魔法の一斉射撃をされ、俺の盾が耐えきれなかったら? いやな想像が脳裏をよぎり、苛立ちが募る。

「わりいがちんたら自己紹介してる暇はねえんだ。ハイかイイエで答えてくれ。お前は今後ろのあいつらから身を守る魔法をつかえるのか?」

「……ガァッぁぁぁっ」

俺がクラリスの体を強く揺すると、彼女は苦悶の表情を浮かべた。彼女はどこか骨を折っているのだろうか。やっちまった、不用意に動かすべきではなかったと後悔したがもう遅い。

「クラリスっ!」

リュディは心配そうにクラリスのことを見つめる。クラリスはリュディを見つめながら、

「なん、とか、使え、ると思、う。ただ、長くはもた、ない」

と言った。

「じゃあ頼む。それとお前は動かず、死んだふりをしながら魔法を使ってくれ」

今度はリュディに向き直る。

「お前が盾魔法を使っているように仕向けろ、魔力を活性化させて『アイギス』を唱えるふりをするんだ。呪文を叫べ。だがフリだけだぞ。お前が使うのは……目くらましだ」

リュディはクラリスから視線を外し。不安そうな顔で俺を見つめる。

「めくらま、し?」

「ああ、そうだ。フラッシュぐらい使えるだろ。一瞬で良い。後は俺がぶちのめす」

悪いが彼女達にはオトリになって貰う。今彼らが一番に処分したいのは間違いなくリュディとクラリスである。いきなり登場した瀧音幸助ではないはずだ。

だったら真っ先に彼女達を狙う。一部が俺に来るかもしれないが、それは少数だろう。

そしてリュディが盾魔法を使っていると臭わせておきながら、目くらまし魔法を唱える。上手くいくことを祈るしかない。

「よし、じゃあやるぞ」

「えっ、あのっ……」

とリュディがおそるおそる俺に言う。

「なんだ? 急いでるんだが」

リュディは何も言わない。困ったような表情をしているリュディの視線をたどったところ、そこには俺の腕があった。

「っ!?」

柔らかい。非常に柔らかい。意識しだしたことでか、肌の暖かさが俺の手のひらを伝わって脳に届く。彼女達の体と俺の体は完全に密着していて、彼女の荒い息づかいさえ感じられるぐらいに近い。

今まで気がついていなかったが、どうやら俺はずっと彼女を抱き寄せていたらしい。もう少しだけ手が上に行けば、彼女の小ぶりな……。いろんな意味でいっぱいいっぱいだったため、まったく気がつかなかった。

「すまないっ……」

俺は慌てて手を離し、小さく咳払いをする。

「よし、確認だ。アンタは俺が行った瞬間に盾魔法。そしてアンタは魔法使うふりをして、皆が魔法を打ち終わったころに灯りの魔法で目くらましでも何でもしてくれ。分かったな。悪いがすぐに行くぞ。十秒だ」

と俺が言うとすぐに動いたのはクラリスだった。彼女がぶつぶつと何かを言いながら魔力を活性化させているのが分かる。

「十、九、八……」

リュディも自身の魔力を活性化させる。

「七、六、五」

俺も行き渡らせてストールの魔力を変質させる準備を始める。そしてクラリスを死んでいるかのように横たわらせた。

「四、三、二」

俺はリュディを立たせるために彼女の腕を掴む。そして。

「一、リュディ、立てっ! 盾魔法だ」

俺は彼女を立たせると同時に大声で叫んだ。

「アイギスッ!」

光属性の盾魔法がはられるのと同時に、俺はストールのエンチャントを一度解除する。そしてあたりを確認した。どうやら彼らは散開していたようで、ひとまとまりになっているところはなかった。俺の突撃に一瞬戸惑っていたようだが、すぐにスキンヘッドが命令を下した。

「トレーフルを狙え!」

やはり予想通りトレーフル家のリュディを狙うようだ。ただ俺の一番近くのヤツは、俺に銃口を向けていた。

すぐに第四の手を広げて防御を作り、第三の手で彼を殴り飛ばす。ちょうどそのとき室内が眩い閃光に包まれた。どうやらリュディが目くらましを行ったらしい。サングラスをかけているヤツが一人居たが、そいつにはすぐに俺が詰めて第四の手で掴むと、助走をつけて投げ飛ばした。

「ぎゃぁぁぁあああ」

オーレリアンを介抱していた男性が吹き飛ぶのを見ながら、第三の手で壁を作る。飛んでくる銃弾を防ぎながらなぎ倒していき、なんとか最後の一人を殴り飛ばした。

俺はテーブルなどを投げつけ、彼らが動かないかを確認。そして急いでそいつらをひとまとめにする。そして近くにあったテーブルクロスに魔力を込めて広げると頭にかぶせ、かなりの魔力を使って硬質化と固定化のエンチャントを施した。

これで一安心だろう。

ため息をつきながらリュディ達に視線を移したところで、思わず息をのむ。

(やっべ、そういやスカート破られてたな)

視線の先に居たリュディは、あられもない姿になっていた。

俺の視線に気がついたのか、彼女は顔を真っ赤にしながら手で隠そうとする。しかし全体的に白色であり、紺色の可愛らしいリボンがあしらわれたそのショーツを隠しきることは出来なかった。白色の肌ととてもよく合っている下着で、彼女にしては少し可愛らしすぎるような気もしないでもない。そしてほんのり……いや考えるのは止そう。

「見ないでっ! お願い見ないでっ」

そ、そうだ。俺は今何を凝視してるんだ?!

真っ赤で泣き出しそうな彼女から視線を外し、慌てて何かを探す。しかし見つかったのは破り捨てられて踏まれた痕のあるスカートで、なんだか余計に羞恥心を増させそうな物しかない。いや、俺が巻いているストールがあるじゃないか。

急いでストールを外すと、彼女から視線をそらしながら、早歩きで近づく。

「あっ」

視線をそらしたのが悪かったのか、慌てていたせいだろうか。俺は下に落ちていた皿を踏んで思い切り滑る。そして。

「キャッ」

派手に転んでしまった。しかし痛みはあまりない。それどころか。

ふよぉん。と温かくそして柔らかい何かが俺の手に当たる。それも両手だ。右手はほんの少しの固さはあるが幸せになる柔らかさで、先端には何かが付いている。そしてもう片方はとても弾力があって、まるで波打つプリンのような……なんだコレともう一度手を動かす。

「ああぁっきゃぁぁ!」

「ンァァッ!」

と女性二人の叫び声が耳元で響く。そして俺は何を触っているのかにようやく気がついた。

「うわああああああああああああああああああああああ」

掴んでいたのはリュディの胸とクラリスの尻だった。俺は真っ赤になったままのリュディの顔を見てすぐに手を離す。そして勢いよく飛び上がるとストールを彼女の下半身に向かって投げて駆けだした。

「すすす、すいませんでしたあああああああああああああああああ」