軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56 ルイージャ先生

悪いことをしたなぁ、とは思う。

魔法第三研究所に場所を変えた俺達は事の経緯を聞かせて貰った。

どうやらルイージャ先生は俺といっしょに「えいえいおー」した後に、この体質について色々調べてくれたらしい。しかし一向に午後授業に来てくれない事を姉さんに愚痴っていたら、なんと俺が姉さんと親戚かつ同居していることが発覚したとか。

「はつみは私の後輩だったの! よく一緒にダンジョンに潜ったわぁ」

目尻を下げ懐かしむように先生はそんな事を言った。

カワイイ先生と二人っきりで個人レッスン……いや個人授業……あれ、なぜエロく聞こえるのだろうか。

「そうだったんですね」

「そうよぉ! あれ、はつみに聞いてない?」

そういえば学園での交友関係って聞いてないな。とても失礼なこと言うと、友人関係広くなさそうだから……聞いたらまずいのかなとも思っていた。姉さん知り合いと出かけるって事ほぼ無いし。

「そもそもですけど、姉さんあんまり喋らないし」

そうねえ、と苦笑いで頷くと「でもはつみにしては饒舌に君の事話してたわよ?」

饒舌に話す姉さんを想像出来ない。

「ホントだってばぁ」

どうやら顔に出てしまっていたらしい。てかさ、姉さんのことを話すのも良いんだけど。俺はそれよりも非常に気になることがございまして。

「あの、そろそろコレの説明を頂けないでしょうか?」

細長い管のような物の先に、吸盤のようなものが付いている。一応心電図でも計るかのような装置にも見えなくもない。ただ、なんて言うんだろうか。管とつながっている機械が、そこはかとない不安を感じるのだ。

「これ? 見て分かるでしょ? 魔力計測器です」

分かりません。いままで花邑家でいろんな物を見てきましたが、全く分かりません。

「じゃあコレはなんですか」

俺は機械の側面から伸びる、羊の頭に生えているような巻き角を指さす。

「それは角です」

そうじゃないんだ、それは見れば分かる。俺は英語の教科書みたいなことをしたいんじゃない。

それがなんのために付いているか知りたいんだ。

「じゃあ何で角が付いてるんですか」

「分かりません」

思わずしゃがみ込みながら頭を抱える。俺は鋼の意思で立ち上がり、問題を置いておいて次の疑問に移ることにした。

「ここ、機械にディスプレイがあるのは分かります。その下辺りにある入力デバイス(キーボードのような物)にドクロマークみたいなのが大量に付いている上に、いくつかのスイッチがオンになっているのはなぜでしょうか?」

「私にも分かりません」

「急用を思い出しました」

と身を翻す俺の肩を、ルイージャ先生はがっちり掴む。

「まってくださぃぃ。今日予定が無いことは、はつみに確認済みですぅ」

姉さーん!

「大丈夫です。最初見た時私も不安に感じましたが大丈夫です。ええ、学園でも一目置かれる天才発明家から借りたので大丈夫です。大丈夫ったら大丈夫なのです。多分」

まるで自分に言い聞かせているようにしか聞こえないんですが。それに最後聞き逃せない単語がありましたよ。

「ルイージャ先生、これ試運転したんですか?」

あからさまに目をそらさないで頂きたい。

「……ちなみにこの機械の発明者は?」

「多分知らないかも知れませんが……アネモーヌさんです」

俺は思わず顔をしかめる。そして先生の肩に手を乗せて首を横に振った。

「先生、悪いことは言いません、返品しましょう」

アネモーヌはマジエロを進める上で、必ず仲間になるサブヒロインのエルフだ。そしてマジエロ内に置いて、トップレベルの辛い過去を持つ人物の一人である。

彼女は確かに天才である。それは揺るぎようのない事実だ。彼女は 紳士達(エロゲプレイヤー) から、マッドサイエンティストを 捩(もじ) って、『エッロサイエンティスト』やら『マッゾサイエンティスト』と呼ばれ(勘違いしないで欲しいが、俺達紳士は彼女と彼女の発明品に幾度となくお世話になり、尊敬の念を持ってそうお呼びしている)ており、人気投票でも上位に位置するキャラクターだ。ゲーム内で瀧音はこのエッロサイエンティストを「天才であるが変人。 種族(エルフ) の例に漏れず非常に美形で、胸はそれなりにある」と表し、A評価を与えている。

しかし現実の 紳士達(エロゲプレイヤー) は彼女の評価を数段階上げるだろう。彼女自身がカワイイ事もあるが、なにより開発する物は大抵素晴らしいからだ。

しかし、その発明品は男が使っても意味を成さない(男が好きな人にはご褒美かも知れないが)。やはりここは。

「先生が使ってみてください」

正直に言いましょう、みたいです。

しかし先生は少し引きながら無理ですと呟いた。

「なんだか嫌な予感しかしないんです……そもそも君の体質の事を簡単に相談したら、それを貸し出してくれたんです。だから君用の物なんです。私用のではないんです。それに結果を報告すれば、以前の事は誰にも話さないって言うから……」

さて、なにやら不穏な言葉が聞こえたような?

「ほう、誰にも話さない?」

「はぇっ」

と先生は俺から目をそらす。そして小さい体をさらに小さくしながら、もじもじしていた。

お前教師だろ、なんで学生に弱み握られてんだよ! と言いたいところだが、そういえば先生は弱みを握られてそうな設定だった。むしろマジエロ主人公は先生の弱みを握る。

「……分かりました。使いましょう……でも洗いざらい吐いてください」

「え、そ、それはちょっと……」

「誓って悪いようには致しません」

「じゃ、じゃぁ……」

「それがダメなんだよぉぉぉお!」

と、思わず頭を抱えた。

「先生は今一度だまされました。何が悪いかおわかりですね?」

ゲームでルイージャ先生と関係が進展するのは、ルイージャ先生の授業を選択した場合ではない(フラグを立てるため、一度は出席しなければならない)。

彼女と出会うのはエッチなお店である。

瀧音に「エッチな店行こうぜ」と言葉を濁さず直球で誘われた伊織は、一緒にとある店に行くのだが(選択肢で行かないこともできるが、 紳士(エロゲプレイヤー) なら迷わず行くだろう)、そこで初出勤の先生と 邂逅(かいこう) する。ちなみに瀧音は店の人に失礼な事をして叩き出されているため、先生と接触はしない。エロゲ主人公の友人としてほぼ満点の行動だと思う。ゲイに捕まって話のネタ提供をしていれば100点満点だったんだが。

「はい……」

ゲームでのルイージャ先生はお金に困ってこのバイトを始めたとのことだ。詳しくは明かされないが、主人公がゲーム1周目では終盤まで渡せないくらい大量の金を渡すことによって、これを解決に導く。また同時に金という弱みを握られた先生は、主人公の手足みたいな感じになる。

金で解決って、かなりの力業だよな。

もし先生が紳士達からとても人気であれば、パッチで物語が追加され、金に困った理由が明かされたのであろう。しかし残念な事にさほど人気は出なかった。俺は声を当てている人のファンだったこともあり、とても好きだったんだが。アラサーがダメだったのだろうか?

「なんとなく察せました。でもやっぱり色々吐いてください」

「えぇ、察してくれたんじゃぁ」

アナタがほっとけないからですよっ!?

と睨みつけると、先生は体を小さくした。

「ご、ゴメンなしゃい」

「まあいいです。とりあえずさっさとアネモーヌ先輩の機械を動かしてこれを片付けましょう。その後は」

分かってるよな、と先生を見る。

「は、ハイ……えっ、機械を動かしても良いんですか?」

「アネモーヌ先輩なんて一番弱みを見せちゃいけない人物ですよ」

女性なら特に。男性はまあ、犬扱いされたいと思う人もいるだろうし何も言わない。

「本当に良いんですか?」

と信じられない物を見る目で俺を見てくる。そんな目するのなら、最初から機械使おうとするなと思ってしまうが、仕方ないだろう。

俺は吸盤みたいなのをつけるため、ストールを外すと上着を脱ぐ。そしてワイシャツを脱ぐと先生は感嘆のため息を漏らした。

「はぇぇ、すっごぉぃ……」

とボディビルダー程ではないがそれなりに引き締まっている体をさわりだす先生。最初はおそるおそるだったが、今は手つきが大胆だ。

だが、そのだな。くすぐったいんですが。

「先生、早く準備を……」

「は、はい。今すぐ!」

と慌てて説明書らしき物を取り出してそれを見ながら、準備を進める。が。俺は説明書を見て小さくため息をついた。

「……ズボンも脱ぎますね?」

「お、お願いします」

と、俺がベルトを緩め、ズボンに手をかけ一気に下ろす。ふと見れば先生は両手を顔に当て、指の隙間から俺を見ていた。

流行ってんのかな? 学園教師では手の隙間から裸体を覗くのが今の流行なのかな? そもそもだが、先生アラサーなんだからいちいち男の半裸でうろたえないで頂けないですかね。もしや俺がイケメン事務所クラスの美男子である可能性が微レ存?

「先生、早くして欲しいんですが……」

「ご、ごめんなさい……キャッ」

と先生は何もないところで躓くと、勢いよく俺に突撃してきた。俺は先生の体を受け止めるも彼女の手は俺の大切なところに……。

「はわ、はわわわわわ」

「おうふっ」

なんだろうこのご褒美。いろんな意味でヤバイから早く除けてくれ。

「ご、ごめんなさいぃ」

気を取り直して俺は体に吸盤のようなものをつけていく。そして全てつけ終わると、先生に頼み、装置を起動した。