軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39 三会②

「この学園にはな、三会っていう、大きな権力を持った組織があるんだ」

と俺はモニカ先輩に視線を向ける。

「一つ、モニカ・メルツェーデス・フォン・メビウス先輩が率いる生徒会。モニカ先輩については入学式の時にでも見ただろ?」

てか俺と伊織は見てないな。まあいいや。

今度は制服の上に白いローブを羽織ったステファーニア先輩に視線を向ける。

「二つ、ステファーニア・スカリオーネ先輩もとい聖女様率いる風紀会。聖女様ったら当代の聖女様だ。この方こそ説明は不要だよな」

俺と一緒に彼女達の視線が動く。キザっぽそうな彼と、和服美人に。

「三つ、ベニート先輩率いる式部会。あの和装麗人も式部会の幹部だ。ベニート先輩は法国の貴族様らしいぜ」

「貴族、ね。なんか……式部会ってのがどんな組織なのか知らないけど、良い感じを受けないのは確かだわ」

とカトリナ。俺はうなずいておく。

「ま、受ける印象は置いといて、これら三会がこの学園を回す上で重要なことのほとんどを決めてるんだ。まあ三会に入会するには魔法使いとして一流でなければなれないが。要するにエリートだな。もし将来魔法騎士や宮廷魔法師になりたいだとか、権力のある仕事に就きたいなら、三会を目指すのが良いかもな。聞くところによると、やっべぇ内申点をもらえる上に、企業や国側も相当評価してくれるらしい」

「でも、簡単にはなれないんでしょ?」

「ああ、もちろん。魔法使いとして一流でなければならないし、会によっては別の条件もある。それに人数制限もあるしな。一学年に生徒会二人、風紀会三人、式部会二人。七人しかなることが出来ない。まあ下部組織だったら制限はない。ちなみに式部会には下部組織はないぞ。下部組織があるのは生徒会と風紀会だ」

ゲームでは生徒会と風紀会に入るためには、下部組織から成り上がりが必要だった。式部会だけはちょっと特殊で、2周目以降でなければなることは出来なかったが。

俺が説明を終えるころ、ベニート達の言い争いは佳境に入っていた。

「おいクソニート……もう一度言ってみろ」

つんつん頭が親の敵とばかりに睨みつけるも、ベニートは見下すように小さく息をつき、唇を片方つり上げる。

「ああ、言ってあげよう。ダンジョンはまだ攻略出来ない、学力は低い、素行は悪い。ただでさえ目障りなんだから、さっさと辞めて田舎に帰ると良いよ。その方がよっぽど君のタメさ。ははっ、僕ってなんて他人思いなのだろうか!」

そうベニートが言うと隣にいた和服麗人はまあまあとたしなめる。

「ベニート卿、本当の事であろうが、もう少しオブラートに包んでやったらどうじゃ?」

「いや、はっきり言ってあげた方が彼のためだと僕は思うよ」

そんな式部会の二人を見て生徒会長は大きくため息をついた。

「式部会は平常運転ね。あなたたちには人間として大切ななにかが、一部欠落してるようね」

ベニートの隣に居たお嬢様は、あら、と呟くとにこりと笑い生徒会長に向き合う。ただ、目は笑ってない。

「ほほ、生徒会長殿。不信任にして差し上げてもよろしゅうございますが?」

「出来るならどうぞ。私の記憶違いでなければ式部卿(会長)ではなく式部大輔(副会長)の権力では出来ないのじゃなかった?」

「権力で出来なくとも、そなたを公式の場でたたきのめして差し上げまする。評判が失墜したそなたが、会長職から転げ落ちる様を観覧させていただくのじゃ」

「へぇ……負けて評判が失墜するのは果たしてどちらかしら……!」

見つめ合う二人の顔を見てるだけで冷や汗が伝う。笑ってるんだけど笑ってない。これが少年漫画だったらゴゴゴゴゴゴなんて擬音が描かれ、なおかつ二人の後ろに竜やら鬼やらが描かれてるだろう。

「そろそろ授業が始まりますし、そこまでにしては?」

いつまで続くのだろうかと思われた睨み合いだったが、聖女ステフの言葉で終わりを告げる。

「フンッ」

二人同時に顔を背けると、それぞれ違う魔方陣に入っていく。それを見たベニートは、はぁっはっは、また会いましょうステファーニア様と言って転移魔法陣に入っていった。つんつん頭は魔方陣へは行かず、出口の方に歩いて行く。

それを見届けた聖女ステフは、

「はい、皆さん。これから授業ですよ? 目的の教室へ移動しましょう」

と集まった人々に解散するように言う。そしてこちらを見て(多分リュディだろう)にっこり笑うと彼女もまた魔法陣の中に入り、転移していった。

「ああ、あの人達が三大ファンクラブの……」

「やっぱりステファーニア様は素敵だ。SSSで良かったぜ」

「あたしはモニカ生徒会長の方がいいわ。なんだかステファーニア様は受け付けないの」

「いや俺は新しく三大ファンクラブの一つになったLLLがいいかな」

と辺りに居た人たちはそんな事を言う。すると今度は伊織が俺に尋ねてきた。

「ねえ幸助君。三大ファンクラブってのは?」

俺は、おいおいまじかよ、そんな事も知らねえのかよ、と大げさに驚く振りをして解説を始める。

「そりゃこの学園で人気のある生徒のファンクラブだよ。二つはあそこにそろってただろ?」

「もしかしてモニカ先輩とステファーニア先輩?」

彼女達の後ろにさりげなく控えていた、あの生徒達の姿を見ただろう?

「そ。モニカ様の 親衛隊(ファンクラブ) MMM。現聖女の 聖騎士隊(ファンクラブ) SSSだ」

「ちょっとMMMって何なのよ? 名前の略かしら? でもそうしたらSSSが分からないし……」

とカトリナが至極もっともな疑問を持つ。俺も最初モニカ様のファンクラブは名前の頭文字を取ったもんだと思ってたさ。Monika Mercedes von Möbius モニカ・メルツェーデス・フォン・メビウスだもんな。しかし実際は違うんだよなぁ。

「そりゃMMMは、モニカ様マジモニカに決まってるだろ。ちなみにSSSはステファーニア様すごくステファーニアだ」

「わたくし、意味が理解できないことこの上ありません」

リュディが狼狽しながらそんな事を言う。俺も初めて聞いたときは何言ってんだコイツと思ったよ。

「MMM曰く、モニカ様はまるで戦女神のように美しく凜々しいとのことでな。まあそれは分かる。それからな、戦女神はモニカ様だったのでは? と言う発想につながって、モニカ様は戦女神だと言う結論が出てたらしい。そんで戦女神? モニカ様の間違いだろってことになったとか」

「意味が分からないわ……」

「つまりだ。MMMの連中の言い分としては、モニカという名詞には戦女神と言う意味が含まれるとのことで、モニカ様まじモニカは、モニカ様マジ戦女神という事だ」

簡単に言えば、モニカ様まじ 戦女神(モニカ) ってルビ入れるようなもんなのだろう。多分。

「頭痛が痛いわね……」

カトリナはその言葉をヤフーでググってこい。てかブラウザによってはやりようがあるんだよな……。

「SSSも同じようなもんだ。SSSの言い分によると、ステファーニアという名詞は大天使と言う意味があるらしい。つまり」

「ステファーニア様すごく 大天使(ステファーニア) ってことなんだね」

「おう、伊織の言うとおりだ」

へぇと納得する伊織。それ納得して良い物だろうか?

「そういえば三大勢力って言ってたわね? もう一つは何なのよ?」

と言うカトリナの問いに、俺は視線で返す。

「あら、何かしら?」

しかし視線を送った先のリュディは気がついていない。カトリナと伊織は察したようだ

「なるほどね。確かにすっごく美人よね。頭も良いし、魔法も出来る」

そしてお前に比べれば胸もデカいしな。おっとお前と比べたら大抵の女性はでかいか。

「なんだかむかつく視線を受けたわ……」

ヒェッ……そういえばお前は直感スキル持ちだったな……!

「と、いう事だリュディ。頑張れよ」

と俺は無理矢理話を戻す。

「?」

と未だ理解していない様子の彼女だったが、辺りの反応は顕著だった。こちらを見てぼそぼそと何かはなしているのだ。

「俺、やっぱりLLLに行こうかな」

「ああ、あの美しさに高貴さ、何よりエルフの姫ってのがな。くぅぅ最高だぜ」

とだんだんざわめきが広がっていく。そしてようやく彼女が感づき始めたようなので、詳しく教えてやることにした。

「三大ファンクラブ最後の一つはな、最近破竹の勢いで会員数を増やしている、エルフの新星リュディヴィーヌ・マリー=アンジュ・ド・ラ・トレーフル皇女の 近衛騎士隊(ファンクラブ) LLL(ラブラブリュディヴィーヌ様)だ。そう、お前のファンクラブだよ」

そう言って肩を叩くと「ふぇ?」っとリュディの口から可愛らしい声が漏れる。

このときのリュディの呆けた顔は、一生忘れないと思う。