軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5.ルーチェは必死に語る

カラカラに乾きそうな口を一度閉じて、答える。

「今回調査をされたのは0歳~10歳までのこの国の女性です。何歳差まで許容されるかは存じませんが、11歳以上の女性や来年以降に生まれる女性に強い耐性者がいないとは断定は出来ません。

11歳ですと5歳差となりますので年上としてはギリギリ許容範囲なのではないでしょうか?

そして年下でしたら10歳程度の差は違和感は無いかと。それを考えると少なくとも後4年の間に生まれる女性も対象者に含んでも良いと思います」

「目の前に求める能力があるのに4年待て、と?」

「短気は損気と言います。

4年待てば私よりも力強く美しい方が生まれる可能性はあります。その方が殿下も嬉しいのではないでしょうか」

「希望的観測だな」

慌てて首を振る王子の隣で陛下は鼻で笑ってみせる。確かに可能性の話であって確実ではないのだ。もっともな反応だと頷いて話を続ける。

「さらに希望的観測を続けさせて頂けるならば、国内に限らなければ更に対象は広がるのではないでしょうか。

魅了耐性は定かでは在りませんが、友好国である隣国エニシャでは第3王女を筆頭に魔力の強い者が多いと聞きます」

「他国の者を迎え入れろと?」

「政治の世界ではよくある話かと」

それに 隣国(エニシャ) には魔術に特化した学校はないので、魔力の強い者は16歳になれば自ずと我が国の魔術学園に通う事になるだろう。素質がありそうな者たちが向こうから来てくれるのだ、そのチャンスを活かすべきである。

もちろん本当に耐性者がいるかどうかは分からないのだが。

「…ここまでが 婚(・) 約(・) 者(・) の代替案です」

「…続けよ」

「はい。その他、更なる代替として魅了の力を抑える魔具の開発を考えております」

「…魔具の開発は今までも行っている。ろくな成果は出ておらぬがな」

魅了の効果を抑える魔具は父が属している王宮魔導士が開発を行っている。これまでに何度も試作品を作ったが効果はいまひとつだったそうだ。

陛下の言葉に「うぅ…」と小さく呟く父の脇腹を小突いて説明を求める。少し嫌そうな顔をした後、恐る恐る魔具の現況についての説明を始めた。

「えーと…現状で躓いている点が2つ。

一つ目が魔具の出力が不安定である事。二つ目は魔具に込める魅了耐性の魔力が不足しているという事です。

その内一つ目は術式の書き換えで対応が出来るのでは無いかと研究を重ねているところです」

「そして二つ目の問題に関しては私の魔力が使用出来るのではないかと考えています」

「…フルール嬢が開発に携わるというのか?」

「お力になれるかと」

現在分かっている中では私の魅了耐性が一番強いそうだ。この魔力を研究に活用し、それで王家を救い、晴れて私の身が自由になるのならば万々歳である。

「もし魔具が完成すれば、殿下も私という望まぬ相手を伴侶として迎えずとも良くなるというものです」

国同士の繋がりを深める為の婚姻になった場合は好きな人と結ばれるかは知らないが、少なくとも私しか選べない現状よりよっぽどマシだろう。

それに私としても、私しか居ないからと仕方なく選ばれるより、私が良いのだと言ってくれる結婚がしたい。

普段は情けなくて頼りなくて酷く適当な父が、亡き 母(つま) を今でも想い続けるように、そんな相手と巡り会いたい。

ちらりと父の顔を見上げる。それに気づいた父は上出来だとでも言うように私の頭をくしゃりと撫でた。

「私からの話は以上でございます」

「…なかなか気の強い娘だな」

「…恐れ入ります」

褒められているかは微妙だが陛下の表情を見る限り好意的に捉えていいだろう。なにやらその隣で王子が暗い顔をしているのが気になるが、王子が何かを発する前に陛下が口を開いた。

「良いだろう。その話乗ってやる」

「!ありがとうございます!!」

「だが18までだ。18歳になりセシルが成人の儀を行うまでに、強い魅了耐性を持つ者が現れず、魔具の完成にも至らなかった場合には、有無を言わさず婚姻を結んでもらうぞ」

「……仰せのままに」

深々と頭を下げる。やっと緊張から解放され小さく息を吐いた。

その後の話し合いによって、18歳までは婚約者候補という名目で城へ通い王子の魅了を打ち消し続ける事となった。

あくまで候補扱いなので王妃教育は免除される。代わりにその時間を使い魔具の開発を進めよとの事だった。

そして私に課せられた使命がもう一つ。

「来週からひと月ほど儂の公務に付いて参れ」

「陛下の公務に、ですか…!?」

「そうだ。合同会合があり 隣国(エニシャ) まで行かねばならんのだが、身重の后を駆り出すわけにもいかぬのでな」

「え、エニシャへひと月も…!?」

「そうだ」

焦る私と父を他所に、もちろん王子も連れて行くから2人分の魅力の打ち消しを頼んだぞ、と気軽に言われてしまった。

……気のせいでなければ陛下は私の事を便利な道具だと思ってないだろうか。確かに代替が出来るまで従うとは言ったけれども。言ったけども…!!

選択を早まっただろうかと一瞬だけ考えてしまったのだった。