軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3

「エルヴァン公爵令嬢。」

朝早くから席につき、本を読んでいた私の横に立っている人物へ顔を向ける。顔を見てつい目を丸くしてしまった。

紺色の髪はきちんと切り揃えられており、灰色の瞳が鋭く私を射抜いている。

ーーゼイン・マクリス侯爵令息。

侯爵家の三男で、王宮で文官として働くことを目標としている。頭が良く努力家だが、運動はそこまで得意ではないようで、その分を座学で全てカバーしている。

中性的な顔立ちとは似つかず、冷静で冷徹なキツい性格をしており、令嬢には避けられているようだ。

なぜ、私が知っているのかというと、彼が攻略対象の一人だったからだ。そして、本来は彼が首席を取り、入学式で挨拶をする予定だったのだ。

内心面倒なことになりそうだと思い、彼に笑いかける。

「どうされましたか?」

「……随分と余裕そうですね。」

「……。」

私の問いかけに顔を顰めたゼインは、イライラとしたように話す。それなら話しかけなければいいのにと思うが、笑顔は崩さない。

「なぜ、貴方が首席なのか、私には理解ができません。」

「……。」

何も言わない私に飽きたのか、舌打ちをすると、くるりと自分の席に戻っていった。

(実際に目にすると案外イライラするわね。)

そう、ゲーム序盤での彼は酷い態度なのだ。綺麗な見た目をバカにされることが多いらしく、捻くれた態度をとる彼は、努力をしない者が一層嫌いなようだ。

そのため、ヒロインに最初は冷たくあたる。しかし、裏できちんと努力をする様子を見て、認識を改め距離を縮めるストーリーなのだ。

(あんな態度をとるくせに、一度認めると案外チョロいのよね……。)

攻略の難易度は難しくないことを思い出しながら、私には関係ないことだわと、本に視線を落とした。彼に努力を認めてもらわなくてもいい。

(私だって、首席をもう譲る気なんてないわ。)

意趣返しに、テストでは絶対に手を抜いてやらないと心に決めて、モヤモヤする気持ちを払った。

****

初めての授業を聞きながら、前世で学校に行っていたら、こんな感じだったのかしらと教科書に目を落とす。

今は魔法理論の授業中で、担任であるクロードがとても暑苦しく、力説している。

(ほんとに、魔法が好きなのね……。)

生徒たちの、若干引いたような目線に気付かないクロードに、少し呆れてしまう。

窓の外に目を移し、さわさわと揺れる花を眺める。

「では、この中で、詠唱を短縮して魔法が使える人はいますか?」

直前までどうでもいいことを考えていた私は、クロードの質問に、何も考えずに手を挙げてしまい、視線が集まったことでやらかしたことを悟った。

キラキラとした視線を向けるクロードは、私に対してものすごい勢いで質問を投げる。

「それは無詠唱魔法ですか!?」

クロードの言葉に、諦めた私は静かに頷く。

「おお、素晴らしい!やはり父君が?どのように習得したのですか?コツとかはあるのでしょうか!?」

焦る私の様子に、気付くことなくクロードは続ける。

「是非、見せて頂きたい!」

クロードの圧に負けた私は、掌を上に向け「水」と呟く。詠唱はしなくても発動するが、初日からこれ以上目立つのは少し困る。掌の上でふよふよと浮いている水を見て、クロードは感嘆の息を吐いていた。

「無詠唱魔法をこの目で見れるとは……っ!いいですか、皆さん。無詠唱魔法を扱える人は現在、魔法学士と呼ばれる方とアメリア嬢のみです。今魔法省では、完全無詠唱魔法を習得する方法を探しているそうです。詠唱なしの魔法の発動は夢がありますよね!」

ペラペラと語るクロードに、若干冷や汗をかきつつ深呼吸をする。

(やっぱり恥ずかしくても詠唱はするべきね。もしもの時以外は、使わないようにしましょう……。)

そう思い外の景色を眺める。既にクロードは複合魔法について語っており、私へ質問が飛んでくることは無いだろう。

天気が良く、窓から入る光に暖められた掌を、机の上でぎゅっと握っていた。