軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5月12日(1)

光陰矢の如し。

というけれど。

ぼけーっと毎日を過ごしているうちにXデイが来てしまった。

その日はずばり5月12日。

この6年間の間に必死で思い出した日付けである。

そしてその日私は結婚式・・・。

に出席していた。コンラートお兄様とジーク様の。

「わー、おめでとう。」

と口では言いつつ。

何故だ⁉︎と心の中で私は100回くらい連呼していた。一周目の私は、今日王宮に呼び出されていたはずだ。なのに何故、二周目の今日は辺境のシュテルンベルク領にいるんだろう?

どうして『初恋の相手』の結婚式に出席し、シンバルを持ったチンパンジーのぬいぐるみのようにひたすら拍手をしているのだろう。(※レベッカの『初恋の相手』はジークルーネの方です)

私は一周目の今日の事をじっくりと思い返してみた。

私は王都にいた。お父様は収穫祭の後ずっと領地にいてまだ戻って来ていなかった。

ルートヴィッヒ王子からの呼び出しは急だった。前日に突然呼び出されたのである。午後に来るようにとの事だったので、私は正午には王宮に着いていた。

それから二時間、応接室で王子を待っていた。同伴者はユリアだけだった。今思うと不思議なのだが護衛騎士はいなかった。

実は私は一周目の時間軸でアーベラに対する記憶がない。私には専属の護衛騎士がおらず、騎士達がローテーションで護衛をしていたので、一人一人を覚えるという事がなかった。そのうえ、天然痘でエーレンフロイト騎士団の三分の一が死んだ。と聞いている。

アーベラも死んでしまったのか、あるいは極端に人手不足になった領地で働いていたかしたのでは?と思う。

とにかく、私が死んだ頃、アーベラは王都にはいなかった。

私はユリアに「一人にして欲しい」と頼み、部屋から追い出した。応接室は一階だった。私は掃き出し窓から庭に出て一人で庭を歩いた。

途中一人の少女とすれ違った。私は顔を背け、相手は深く頭を下げたのでお互い顔は見なかった。

少女は大きな画板を持っていた。今思うとあれはコルネだったのでは?と思う。

そして私は運命の石段の前に立った。

私を殺した犯人は、ユリアかコルネ。

ルートヴィッヒ王子、王子を訪ねて来ていた四人の友達。フィリックス、コンラート、ジーク、エリーゼ。そして王宮で働く侍女、近くにいた近衞騎士の中の誰かだ。

しかし。

二周目の現在。5月12日。

私がいる場所は王都から遠く離れたシュテルンベルク領で王宮じゃない。

結婚式に招待された家門はエーレンフロイト家だけだ。ヒルデブラント家さえ呼ばれなかった。その代わりアレクサンドラ女男爵とジークハルトさんが呼ばれている。つまり、ルートヴィッヒ王子は呼ばれていない。フィリックスも呼ばれていない。だから二人はいない。そして当然王宮の侍女も騎士もいない。

それにユリアとコルネもいない。

コンラートとジークは勿論いるが、十重二重絵に人々に囲まれていて二人きりになる事も、姿をくらます事もできずにいる。

そしてエリーゼ。

彼女は私の隣に座っている。でも更にその横にいるヨーゼフとイチャイチャラブラブしているので正直砂を吐きそうな程ウザい。

後30分一緒に座っていたら、私がこの二人のどちらかを高所から突き飛ばしてしまいそうだ!

とにかくエリーゼはヨーゼフしか見ていない。新郎新婦を見ろよ!と私は言いたい。

そしてそんな私とエリーゼとヨーゼフの背後には、ずらりとエーレンフロイト騎士団員が並んでいる。

「ちょっと、手を洗いに行って来る(トイレに行くという意味です)」

と言って立ち上がると女性騎士が三人、男性騎士が二人ついて来た。

「男は来なくていい。」

と言うと

「いえ、危険ですのでレベッカお嬢様の側に最低でも五人着くようにとエリザベートお嬢様に指示されておりますから。」

「何が危険なの?ノコギリを持った殺人鬼が襲いかかって来るとでもいうの?」

「お嬢様。シュテルンベルク領は昨年の秋ドングリが豊作で、そのせいでこの春、熊スタンピードが起きているそうです。領都内でも何頭も熊の目撃情報があって、人間の被害も実際に出ています。お願いですので絶対に我々の側から離れないでください。」

まじかー。

人に突き飛ばされて死ぬのはごめんだが、熊にチョップをくらって死ぬのはもっとごめんである。

熊鈴を持って来れば良かったと思いつつ私はトイレに行った。