軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大陸歴318年(1)

大陸歴318年。

私、レベッカ・フォン・エーレンフロイトが殺される年が遂にやって来た。

何故、殺されるとわかっているのか?

それは私が現在、人生二周目を生きているからだ。

一周目の私はごくごく普通に、地球のヨーロッパに似た世界の侯爵令嬢として普通に呑気に生きていた。

しかし14歳の時、天然痘に感染しそれから人生が坂道を転がるように転落していく。

挙句18歳で何者かに階段から文字通り転落させられ、命を落としてしまうのであった。

その後私は地球の日本で文子という名前の少女として生を受けた。

そこでの私はごくごく平凡な、平和ボケした日本人だった。テレビの刑事ドラマと世界を旅する系のバラエティーが好きな小市民で、神童と呼ばれて注目される事も激しくグレて人様に迷惑をかける事もない、完璧にモブな存在だった。

そんな穏やかで平和な人生を18年歩んだ後、私は再びレベッカの人生に回帰した。戻って来た時私は11歳だった。

それからの人生は、主に3つに区分される。

まず14歳までの『ビフォー天然痘期』。来るべき天然痘の襲来期に向けて対策を練りつつ、殺人事件の死亡フラグを折って回っていた時期だ。天然痘対策はまあまあ上手くいったが、フラグを折るのはだいたいにおいて失敗した。この作品の第一章から第五章の話である。

次が3年に渡る『天然痘襲来期』。国内で天然痘が蔓延した時期だ。自分がまた感染しないよう注意を払いつつ、食料不足対策とボランティアに励んでいた時期である。この時期は、やるべき事に手一杯で死亡フラグ折りは中断していた。この作品の第六章と第七章での話である。

そして『アフター天然痘期』。天然痘の流行で社会が混乱し、外国で革命が起こったりした中で愚かな人間達が更に愚かな行動をした時期だ。大々的に貴族の粛正が行われ、王太子だった第一王子も流刑にされてしまった。この時期もあまり死亡フラグは折れていない。この作品の第八章以降で紹介している。

そして遂にやって来てしまった大陸歴318年!

ろくに死亡フラグが折れていないまま、後五ヶ月足らずで運命のXデイがやって来る。

私は自分の部屋で、小雪舞い散る景色を眺めていた。

今の社交界を駆け巡るニュースは一つだった。

エリーゼ様が社交界デビューするのである。

天然痘襲来期に10代の半ばを過ごし、今年で19歳になられる宰相家の嫡女エリーゼ様の社交界デビュー。そのデビュタントパーティーがどの程度の規模か?自分は招かれるか?貴族達は今寄ると触ると噂しているのだ。

正直、このヒンガリーラントの貴族社会でエリーゼ様を知らない人などいない。なのに、デビュタントパーティーが必要か?と思うが必要であるらしい。まあ、それならそれ、どんなど派手なパーティーでも勝手にやってくれ。所詮他人事だ。と言いたいところだがそうもいかない。

何故なら今年15歳になる私の弟のヨーゼフが、エリーゼ様のデビュタントパーティーのエスコート役に指名されたからだ。

それは。

つまり!

ヨーゼフとエリーゼ様が婚約をするって事だ!ゆくゆくは結婚するって事だ。エリーゼ様が未来のエーレンフロイト侯爵夫人になるって事だ!

それを聞いた時には、ジャンボジェット機のエンジン音並みの大声で

「えーーー!」

と叫んでしまったものである。

「何で、ヨーゼフなの⁉︎」

「他に相応しい方がいらっしゃるでしょうか?」

とミレイに聞かれた。

「いっぱいいるでしょ!エリーゼ様より年上で身分の高い人。アーレントミュラー家のフィリックス様とか、ハーゼンクレファー家のエディアルド様とか、ヒルデブラント家のクラウス様とか⁉︎」

「エリーゼ様は、以前から近親結婚をする気はない。だからブランケンシュタイン家の一族の中から夫は選ばない。と一族の人達に言っておられたので、従兄にあたるフィリックス様やクラウス様とも結婚される気はなかったと思いますわ。それに、ブランケンシュタイン家とハーゼンクレファー家はとても仲が悪いので、ハーゼンクレファー家の人とはさすがにあり得ないです。」

「確かに四歳差というのはびっくりですけど、でもベッキー様のお父様とお母様だって三歳差じゃないですか。」

とコルネが言う。

「というか、ノエライティーナ夫人とそのご家族と初めて会う昼食会にエリーゼ様を招いている時点で、ベッキー様もわかっているんだとばかり思っていました。」(※第九章の『希望と笑顔』での話です)

・・・・。

空気の読めない子。と思っていたリーシアにそう言われて私はかなりショックを受けた。

「エリーゼ様には、シンフィレアの王太子様と結婚なさるのでは。という噂もありましたが、でもああいう事になりましたし・・・。」

とユリアが言う。

去年の建国祭の頃は『あの騒動』一色だったもんな。ヒンガリーラント社交界は。

国王陛下の妹であられるクラウディア殿下がいろいろと騒ぎを起こしていたのである。