軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

婚約式(8)

「えっ、えっ?えっ⁉︎」

視線の先でルートヴィッヒ王子があわあわしている。

そうだね。わかるよ。男二人と女の子が一人いて「二人が楽しそうにしているのを邪魔しちゃ駄目」と言って女の子を連れて行くって、B級のBL 小説かよ!って感じよねー。

でも、ごめんねえ。私ではエリーゼには逆らえないの。だから、男二人で遠慮なく仲良くしてね。

私とエリーゼはその場を離れて屋敷の中に入った。茶会室以外にも複数の応接室が開放されている。そのうちの一つに私達は入った。と言っても二人きりではない。ユリアとコルネがついて来ているし、私とエリーゼ様双方の護衛も一緒である。

「3人で何話してたの?」

とエリーゼに聞かれた。

「いえ、別に自己紹介して後はなんという事もない中身の無い世間話ですね。グラハム博士とは『稀人』の話題で盛り上がったんですけれど。」

「ふうん。」

「北大陸には、稀人と呼ばれる神秘的な人がいるのだそうですよ。」

「西大陸にもいるわよ。」

とエリーゼは言った。

「フェルゼ河に橋をかけた工学者のエルマーや、ピアノやヴァイオリンやチェロを発明した音楽家のサンテミリオン、地球の大きさを計測した天文学者のミラー、秘術師のエユ・レークは稀人だったと言われているわ。」

「そうなんですか!」

「あなたの先祖の『聖女エリカ』もそうだったのではと言われているのよ。」

・・それはちょっと納得できるかも。私も内心そう思っていたもの。

「自分で自分を『稀人である』と公言したのはエユ・レークだけだけどね。そしてついでに言うとあなたも稀人ではないかと言われているのよ。」

「・・・は?」

「あなたも、そう言われているの。だから、カサンドラ陛下やグラハム博士はあなたにその話題をふったのだと思うわよ。」

私はぽかんと口を開けてフリーズしてしまった。視界の隅でユリアとコルネがうんうんとうなずいているのが見えた。

「あなたは、次々と変わった物を作り出しているでしょう。それにあなたは、シュテルンベルク伯爵夫人が亡くなられた10年前からチェス大会で優勝する6年前までの4年間、人前に全く出てこなかったから。人の噂にものぼらなかったわ。」

「ほほう。」

思わずフクロウの鳴き声みたいな声が出た。

というか、こういう時の正解の反応って何?否定すべきなの?肯定すべきなの?肯定したら魔女裁判みたいなのにかけられる、なんて事まさか無いよね。そもそも、私って『稀人』なの?私は元異世界人だけど異世界転移者ではないよ。

「否定しないのね?」

意外そうな顔をしてエリーゼが言った。

「赤ん坊の頃にこの世界に来たという可能性はゼロじゃないですからね。」

結局私は『はぐらかす』を選んだ。

だって18歳で殺されて、地球で18年暮らして、11歳のレベッカに戻って来て、来年エリーゼかユリアかコルネかそれ以外の人に殺される予定。なんてさすがに言えない。

「それより、さっきずらずら羅列した人の中で一人、気になった人がいるんですけれど『秘術師』って何ですか?魔法とかが使えたりしたんですか?」

「それより・・ってあなたね。エユ・レーク自身は科学や物理学だと言っていたわ。自分が元いた世界と科学のレベルが違い過ぎて原理を言葉で説明する事はできないって。エユ・レークは聖女エリカと同時代を生きた人だし、その頃は今より更に世界の科学レベルが低かったから。」

「ああ、それはわかる気がしますね。」

「わかるの⁉︎そんな事を言った人、あなたが初めてよ!」

だって私だって、元いた世界の科学の成り立ちや仕組みを説明できないもの。

電気とは何か?半導体とは何か?どうして冷蔵庫は冷んやり冷たいのか?何故自動ドアは自動で開くのか?飛行機はどうして空を飛ぶのか?

こちらの世界の人が自動ドアや飛行機を見たら、きっと魔法だと思うだろう。

「具体的に、エユさんとやらはどういう事ができたんですか?」

「エユ・レークは権力者や財産家に様々な秘術を授けたそうだけど、授けた人にそれをしゃべってはいけないと言っていたらしいの。」

なんか詐欺っぽいような気がするんですけど。詐欺師だったんじゃないの、その人?

「だから私が知っている秘術は一つだけよ。ヒンガリーラントの王族に授けられた秘術なのだけど。」

エリーゼは一瞬遠い目をした。

「『時を戻す秘術』なの。」