軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハーゲンベック領へ(1)

「危険だぞ。」

とジークルーネは言った。

「だからジークルーネ様一人で行かせられないんじゃない。私も行く。」

「本当に?」

とカトラインが言った。

「だったら私も・・。」

「それは駄目。」

とジークルーネがピシャっと言った。

「これはヒンガリーラント貴族の起こした問題だ。だから、ヒンガリーラント人同士で話をつける。」

「・・わかった。」

カトラインはわがままを言わなかった。彼女はちゃんとわかっているのだ。彼女は王女だが難民である以上立場が弱い。

そして彼女が問題を起こせば、この場にいる難民達を含む全ての難民の立場を悪くするという事を。

「私は同行させてください。」

とライルさんが言った。

「私は半分ヒンガリーラント人です。お供させてください。」

「私も。」

「自分も!」

とブラウンツヴァイクラント人の騎士達が言う。

ジークルーネは

「同行者は二人まで。」

と言った。

「ここまで馬車二台で来たから、馬の数が四頭だろう。ハーゲンベック領まで騎馬で行く。だから、私とベッキーと一緒に行くのは残り二人だ。」

「馬で何日くらいかかりそう?」

と私は聞いた。季節は既に夏の始めとはいえ、野宿は辛い。着替えも手に入るかわからないし。

「全速力で走ったら一時間かからないよ。」

あ!王都のご近所に領地があるんですね。少し羨ましいかも。

「じゃあ、行って来るからリーシア姫、コルネリア姫、悪いけど辻馬車で帰ってくれる。でもってエーレンフロイト騎士団にハーゲンベック領まで迎えに来てくれるよう伝えてくれる?」

とジークルーネが二人に言った。

「承知しました。」

「どうかご無事で。」

と二人は言った。本音ではついて来たかったのかもしれないが、もう馬がいないし二人は馬に乗って全速力では走れないのだ。

それより助けを呼びに行く方がいいと、わかってくれたようだ。

私はアーベラとヨアヒムを見た。

「行ったら駄目です!」

と反対されるかと思ったが二人は反対しなかった。むしろ、馬車につないだ馬を離したり積極的に行動してくれている。

「反対しないの?」

と一応聞いてみた。

「しても無駄でしょう。」

とアーベラが言った。

「ユリア様を海賊から守った時といいコルネ様の時といい、こういう時のお嬢様は絶対妥協しませんからね。」

とヨアヒムも言った後

「むしろご友人だったジークレヒト卿に恥じない行動をお嬢様にはとって頂きたいです。」

と言った。

アーベラもヨアヒムも『ジークレヒト』が死んだと思っている。ヨアヒムはエーレンフロイト領で天然痘が蔓延していた頃、ジークと一緒に活動していた。『ジークレヒト』の死にはいろいろときっと思うところがあるのだろう。

アーベラとヨアヒムが馬の背に鞍をつけてくれる。馬車の中には万が一馬車が壊れた時、馬を走らせて助けが呼べるよう鞍やらあぶみやらが積んであるのだ。21世紀の地球の車に予備のタイヤが積んであったのと同じである。

今の私は、鹿の解体を手伝う気満々だったのでドレスではなくオーバーオールの作業着を着ている。だから馬の背にまたがるのに何の問題もない。実際に鹿の解体をしてからそのままの格好でここへ来たジークルーネもパンツスタイルだ。

話し合いの結果、三人の護衛騎士の中からエイダンさんという人が一緒に来る事に決まった。

私、ジークルーネ様、ライルさん、エイダンさん、それにアーベラとヨアヒムの六人でハーゲンベック領に向かう事になった。

「何か注意点はある?」

とジークルーネに聞いたら

「人と人とは誠実な気持ちで話し合ったら必ず心が通い合うものだ。という思い込みを捨てろ。」

と言われた。

ハゲ一族は海賊並みに厄介そうな相手だ。まあ、そもそも誠実な人間は不幸な境遇にある女性を監禁なんかしないだろうしね。

そして私達六人は出発した。