軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

親族会議(2)(テリュース視点)

うわー、それは大変だ。だけど、気持ちは超わかるー。

というのが最初の感想だった。

しかし父にはわからなかったのだろうか?傷んだプラムのように顔を赤くして

「どういう事だーーっ!」

と絶叫した。おかげで耳が痛くなった。

「何故、そんな事になった⁉︎誰に唆されたんだ?」

「デイム・アードラーの一件を見て決断されたのだそうです。仲の良くない家族と家族でい続けることはリスクでしかないと。」

「あー、なるほどね。」

と口に出して言うと、父にものすごい眼光で睨まれた。

デイム・アードラーことヘレーネ・アードラー令嬢はリーシアの友人だ。

アードラー卿がメイドに生ませた娘だそうで、その為正妻と正妻の子供達に虐げられていた。なので、リーシア同様エーレンフロイト家に保護を求めていたのだが、その不仲な異母弟が事件を起こしその罪に連座させられたのだ。正に理不尽を絵に描いて色を塗ったような話である。

リーシアとしては、自分を殺そうとした家族の罪に連座させられるような羽目になってはたまらない。という事なのだろう。そしてリーシアの家族は清廉な人間達ではない。なにせリーシアを殺そうとしたような家族である。

リーシアはもう17歳で成人している。そして、この度デイムの位を賜った。家族と縁を切っても貴族でい続ける事ができるのだ。だったら、家族と家族でい続ける方がリスキーなのは確かなのだ。ついでに、うちの父親みたいな人間に保護者づらをされる事も。

「アルノー達家族がろくでなしなのは確かでしょう。父上だって、ついこの前まで彼らと絶縁する気満々だったじゃないですか。」

それはまだ父上が金策に駆け回っていた頃の話だ。

父上は金を作る為に、従兄弟であるアルノー達家族をデューリンガー家の本邸に引き取り、彼らが暮らす屋敷を売り払うつもりでいた。

そのアルノーの家から

『借金のカタに屋敷を奪われそうになっている。借金を肩代わりして欲しい』

と連絡が来たのである。父は激怒した。

伝染病が流行して以来、王都の物価は爆上がりした。誰もが生活苦に喘ぐなか、アルノーとベロニカの夫婦は贅沢をやめなかった。その為借金がどんどんと増えていった。

借金相手の商人は平民だ。アルノー達は借金を踏み倒せると思っていた。だが、その平民の商人はその借金の借用書を貴族が営む商会に売ったのだ。貴族が相手では借金は踏み倒せない。アルノーの暮らす屋敷と土地の権利は既に貴族が営む商会に移っていた。

アルノー達が暮らす屋敷はアルノーの物ではない。デューリンガー家が先祖から受け継いだ財産だったのだ。それが失われた事を知って父は激怒しアルノー達を一族から追放しようとした。その直後、アルノーの娘のリーシアがデイムになったので、父は思いとどまったのである。

ようするに、あの家族は誰にとっても迷惑でしかない人々なのだ。リーシアが縁を切りたいと希望するのはむしろ当然というものだろう。

「即刻、リーシアを呼び出せ!リーシアに説教をしてやる!」

父はこの期に及んで尚、上から目線だった。

やっぱ、うちはもう駄目だな。リュールの頭を撫でてやりながら僕はしみじみと思った。

リーシアとの会談は、アルノーの屋敷で行われる事になった。僕達をエーレンフロイト邸に呼ぶ事も、デューリンガー邸にリーシアが来る事もリーシアが拒否したからだ。

会談には僕と父と母、アルノーとベロニカ夫人の他に父の弟や妹とその成人した子供達が集まって来ている。

久しぶりに会うアルノーはやつれていたが、ベロニカ夫人は変わらず美しかった。この期に及んでも高価な基礎化粧品を使っているのだろうな。と苦々しい気持ちになる。

アルノーの家の談話室は二階までの吹き抜けになっていて、北側に階段がついていた。

一階の暖炉の側と階段の踊り場に大きな花瓶が置かれ花が飾られている。いくら季節は春とはいえ、花も買えば安くはない。花なんかに金をかけている場合ではないだろう。と思うが、ベロニカ夫人のリーシアに対する意地なのかもしれない。

僕は二階を見上げた。マレーネはどうしているのだろう?と思った。この三年間、彼女とは一度も会っていなかった。

まあ、会っていないのはリーシアも同じだが。ただ彼女とは定期的に手紙のやりとりはしていた。お互い、時候の挨拶の定型文しか書いていなかったが、一応僕が彼女の保護者であったので、生存確認をしていたのである。

僕達はリーシアと約束した時間より、少し早めに来ていた。

とにかく、リーシアを責めたり怒らせたりしないで機嫌をとるように。と父は全員に言った。そして、言われた親族達は必死になって父に媚びていた。復興貴族税をどれだけ払うかで、何親等までが貴族として認められるかが変わる。何とか貴族でい続けられるよう、皆必死の形相だった。

そして、約束の時間ぴったりにリーシアは現れた。

執事に案内されて談話室にリーシアが入って来た時、誰もがリーシアに目が釘付けになった。

リーシアは夢のように美しかった。