軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

宰相室にて(3)(フランツ視点)

「どうした、シュテルンベルク伯?」

「税金を免除されるのはありがたいですが、それはそれでまたいろいろと言われそうだな・・と。」

シュテルンベルク領は、伝染病が流行らなかった数少ない領地だ。その為に妬まれて、随分と陰口を叩かれているのである。

「伝染病が流行れば良かったのに!」程度の陰口はかわいいものだ。「アイツの領地やヒルデブラント領に伝染病が流行らなかったのは、アイツらが病原菌をわざとばら撒いた犯人だからではないか?」などという噂も流れているのだ。

「君の領地は、相当伝染病禍の中で儲けたと聞いているしね。」

と宰相も言う。

「人が言うほど儲けてはいません。アイデア料だって、ちゃんとエーレンフロント家に払っているのですよ!」

火の粉がこちらに飛んで来た。

シュテルンベルク家は、伝染病が流行っていた期間『パズル』を大量に売って大儲けしたのである。

シュテルンベルク領は元々、木工製品の製造が盛んな土地だった。木で作った小物入れ、おもちゃ、櫛などだ。原料となる木がたくさん生えているし木細工工房もたくさんあったからだ。

そんなある日の事。レベッカがヘンリクの為に知育玩具が欲しい。と、リエ殿とメグ殿に相談した。外国に存在するという『パズル』だ。名称を『タングラム』という。

複雑な形のパズルではない。むしろ素朴で原始的な形だ。リエ殿達はすぐにシュテルンベルク領の工房に発注しパズルを作らせた。

だが、そのパズルは、幼児が出来るレベルのパズルではなかった。否。成人した大人でも難しかった。

そして大人達が夢中になった。エーレンフロイト家の大人達が皆夢中になって、そのパズルに挑戦した。レベッカの友人達も夢中になり、そのパズルの話を自分達の実家の家族に話した。引きこもり生活で、皆退屈している。他の家門の人達も『タングラム』に夢中になった。

このパズルは売れる。と確信したリエ殿は、シュテルンベルク領の工房に大量にタングラムを作らせて売った。タングラムは飛ぶように売れた。

複数の工房があると、仕事の丁寧な所といまいちな所に分かれるものである。レベッカは仕事が丁寧な工房に更に『ソーマキューブ』と『ジクゾーパズル』というパズルを発注した。どちらも、暇つぶしにはもってこいのうえ、成功すると達成感の半端ないパズルだ。これらのパズルも飛ぶように売れた。

当初ジグゾーパズルは、木彫りの板を10かける10の100ピースに分けた物だったが、アルテミーネ嬢の提案で木の板に紙を貼り美しい絵をつけた。そうすると完成したパズルは美しい芸術品になった。客の要望でピース数も増えていき50かけ100の5000ピースなどという物まで売られるようになった。

シュテルンベルク領は新たなる雇用に湧き、領民の生活はかなり潤った。そしてレベッカの豚のぬいぐるみも肥え太り、数を増やしていった。

薬の販売でヒルデブラント家は相当この三年間儲けたはずだが、シュテルンベルク家もかなり儲けた。だからこの二家門は、尚の事妬まれているのだ。これで復興税も払わなくて良いとなったら、激怒する領地もあるだろう。ちなみに、我がエーレンフロイト領もあまり大きな声では言えないが、パズルのアイデア料とレベッカの作った絵本の売り上げとでまあまあ儲けている。

「レベッカには、ものすごく感謝しているんだ。本当に心から、ものすごくあの子をコンラートの嫁に欲しい。」

「うちのエリーゼもいつも言っているよ。レベッカ姫を愛人にしたいって。」

宰相閣下がそう言った。冗談だよね?

それにしても、ようやくガルトゥーンダウム家も零落してくれるのか。と思うと私はほっとした。三年前に大げんかをした相手だ。勢いを盛り返されたらどんな報復をされたかわからない。ガルトゥーンダウム家に脅された医学生とその家族達も、伝染病が収束して私が後見人になって、国立医大に留学する予定になっているミッフィー君も、これで安心して生活していく事ができる。

「そうだ。エーレンフロイト侯。陛下は、ガルトゥーンダウムを司法大臣から引きずり落とした後、その後継に君を据えたいと希望しておられる。」

・・・。

突然とんでもない情報がぶっ込まれて来た。