軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

論功行賞

五日後。

コンラートとジークが戻って来た。そして我が家に挨拶に来た。

二人共、もう少年ではない。立派な青年になっていた。二人並んで立たれると、眩しくて目が潰れるかと思ったくらいだ。

これは、女の子達が放っておかないだろう。実際私の背後でも友人達がキャアキャア言っている。だが、その声に混じって

「本当にお二人はお似合い。」

という声が聞こえる気がするのは幻聴だろうか?ジークが実は女性だという事を知っているのは、このメンツではユリアだけのはずなのだが。

「お二人ともご無事で何よりです。またお目にかかれて嬉しいです。」

そう言うとジークは美しく微笑んだ。

「僕も嬉しいよ。ベッキー変わらないなあ。ほんと、身長も胸囲も変わってないんじゃないか?変わったのは前髪だけか。その前髪って、何か事故?」

そうだよ!事故だよ!

このはっきりと物を言う性格。この人もほんと変わってないな!

私は手で前髪を押さえた。昨日コンラートとジークが帰って来ると知って私は、バウムクーヘンを焼き始めた。そしたら炎が爆ぜて前髪の右の方を焼いたのだ。

チリチリになってしまった前髪は切るしかない。だけど、その切った長さに合わせて前髪全部を切ったら、前髪が無くなるレベルのオンザ眉毛になる。なので私はアンシンメトリーになるよう、前髪を斜め切りにしたのだ。

前衛芸術家のように奇抜なこの前髪を見てお母様には嘆かれたが、友人達の間では評判が良い。

「私もしてみたい。」

とユリアもコルネもミレイも言っているので、たぶんお世辞ではないだろう。

ところで。

今までの話を読まれた方には、こう思う方もいるだろう?

ヒルデブラント領とシュテルンベルク領には、ボランティアに行かなかったの?

答えは「行ってない」

なぜならば、この両領地は、強運にも伝染病が流行らなかったのだ!

すごいよね。小さい領地の領主様の所は流行らなかったってケースもけっこうあるんだけれども、この人達の領地広いんだよ。人口すごい多いんだよ。それで流行らないとかいう事あるの?

王妃派の貴族とかは「奴らの領地は金も食料も余っているんだから、大流行すれば良かったのに!」と、人間性を疑う悪態をついているようだけれども、でも思うに金があるから流行らなかったのではないの?と思う。お金があって貧民層が少ない領地って、ようするに領民が健康で免疫力が強い。って事だもんね。

それと後は、厳しすぎる検疫と領民に浸透している医療知識のおかげかな。

シュテルンベルクは『聖女エリカ』にゆかりの土地だし、ヒルデブラントは薬学の聖地だ。領民は迷信によらない正確な知識を持っている。ワクチンや手洗いうがいの重要性についてだ。

でもまあ、どれだけ検疫を努力しても、手洗いうがいをしても病気になる時はなる。この二つの領地はとにかく強運だったのだ。

ちなみに私の友人の領地でもう一つ、天然痘が流行しなかった領地がある。アイヒベッカー侯爵領だ。

理由は、三年前天然痘が流行り出してすぐ全領民が種痘を打ったからだ。ちなみに『全領民』達の数は、30人ほどである。

コンラートの顔を見て安心したと言って、リエ様とメグ様は夫の所に帰って言った。お二人は、外国で暮らしているのだが、里帰りしている間に伝染病のせいで国境が封鎖され帰れなくなってしまっていたのである。

それからしばらくして。

論功行賞が行われた。

ヒンガリーラントでは長く戦争が無かった。その為、大々的な論功行賞は何十年も行われていなかった。

今回の論功行賞は戦争並みの規模で行われた。勿論、勝ち戦だ。

伝染病の封じ込めの為、力を尽くした男性医師達は『男爵位』を授与された。

エーレンフロイト領の医師であるエデラー医師や、ヒルデブラント侯爵の乳兄弟のベンヤミン医師。リーゼレータの父親のコール医師、国立大学の医師達など数十人だ。リーゼレータも、国立大学の耳鼻科の教授を父親に持つオルガマリーも『男爵令嬢』となる事になる。

そして医者以外で、300日以上ボランティアをした男性に『準男爵位』が与えられた。

そして女性医師と、300日以上ボランティアをした女性に『デイム』の称号が与えられた。私と私の友人達、エリーゼ様と仲間達は皆300日以上ボランティアをしている。つまり、全員デイムになるわけだ。

侯爵令嬢である私がデイムになったら何かが変わるのか?と言われそうだが。デイムになったらデイムとしての品位を保つ為、報奨金と終身年金が出るのである。報奨金は、金貨1000枚。年金は一年で金貨150枚だ。一生遊んで暮らせる額である。

弁護士のデイム・クリューガーが自分が興味のある事件にしか首を突っ込まないってんの、わかるなあ。生活の為に働く必要がないのだ。

ちなみに私や友人達がもらう年金は金貨150枚だが、コルネだけは300枚だ。コルネは、持っていた『種痘』の専売権を国に寄付したからだ。

グラハム博士の救出作戦にほぼ全財産を注ぎ込んだコルネが、お金持ちになってくれたのはすごく嬉しい。

生きる為に働く必要のなくなったコルネが、宮廷画家にならないかもしれないからだ。もしそうなったら死亡フラグが一本折れる事になる。

他にも専売権を持っていた、アルト同盟の商人達が五人『男爵位』を授けられた。そのうちの一人がユリアのお父さんのレーリヒ氏だ。

なのでユリアも以後『男爵令嬢』になる。

そして、ジーク様も『男爵位』を授けられる事になった。ジーク様も種痘の専売権を手放したからだ。それに三年間ボランティアに駆け回っていたからだ。

正直コレはまずいんじゃないの?と、ちょっと不安だ。

ヒンガリーラントで『男爵』になれるのは男性だけなのだ。実は女性だという事が後日バレたらまずい事にならないだろうか?

それにしても、こんなにもたくさんの人達に身分と報奨金と終身年金を出すなんて、王家も太っ腹だなあと思う。そんなに国庫にはお金があるのだろうか?デイムと準男爵がもらえるのは、報奨金と年金だけだが、男爵は領地ももらう事ができる。お金もだが、数十人に領地ってかなりの土地がいると思う。王室直轄地を分譲するのだろうけれど、そうしたら王家の収入は激減するはずだ。なのに、何十人にも終身年金を出すなんて、国庫が破綻するのではないだろうか?

戦争と違って他国の土地を分捕ったわけでも、敗戦国から損害賠償を受け取ったわけでもない。それなのに、こんなばら撒きみたいな事をして大丈夫なんだろうか?

と思っていたが大丈夫そうだという事がわかった。

世の中飴があったら鞭もある。

数日後、貴族社会を激震させる発表がなされた。『復興貴族税』という物を貴族は払うようにと王命が下ったのである。