軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの選択

別邸に帰って来た時、もう三十分経っていた。三十分後にはエリーゼがやって来る。

帰るなりユリアとコルネがべたっと、私にくっついて来た。

「うぅっ!良かったあ。ベッキー様、ご無事で。また何か騒動に巻き込まれて今度こそ監獄行きになるのでは?と心配していました!」

そんな心配されていたの?知らんかったよ。

「みんなにエリーゼ様から伝言があるの。」

私は友人達を呼び集めて言った。

そしてエリーゼ様がボランティア団を組織する事。ヘレンとミレイはそれに参加する事。三十分後にエリーゼが迎えに来るので、自分も参加したいと思う者は一緒に行くように、という事を伝えた。

「参加は自由だそうだよ。強制じゃない。ボランティアには興味無いって人もいるだろうし、家族に許可をとってからじゃないとって人もいると思う。好きに判断すればいいから。ちなみに。私は。」

そこで一回言葉を切った。

「行きません。」

よし!

自然に。ナチュラルに嘘をついたぞ。我ながら完璧だ。

「えー、本当ですかー?」

という声が聞こえた。アグネスだ。

「エリーゼ様がわざわざベッキーお姉様を王宮に呼び出してボランティアの話をしたのに、それを拒否するなんて事ベッキーお姉様にとても出来ると思えないんですけれど。」

・・・さすがは、伯爵令嬢。わかっている。私の事も。エリーゼ様の事も。

「絶対嘘でしょう。私達がろくに考えもせずに『じゃあ私も行くー』と言ってついて来たらウザいとか思って、そういう事言っておられるんでしょ!」

「違うっ!・・ボランティアに行ったら、お母様が出産する時側で付き添えない。生まれた直後の赤ちゃんの顔を見られない。と思って、だから行きたくないの。出産予定日来月だから!」

半分本音である。だから嘘ではないのだ。

「ホントですかー?」

「本当です!」

「そうなんですか。でも私はボランティアに行きます!」

そう言ったのは最年少のリーゼレータだ。

「ボランティアが募集されているのに無視する、なんて事をしたら私お父さんとお母さんに怒られちゃいます。だから私は行きます。」

「私も行きます。」

とユスティーナが言った。

「私は、将来医療省で働きたいんです。ボランティアに行く事は将来の勉強になるし、それにもしかしたら採用試験を受ける時有利になるかもしれません!」

「私も!」

とオルガマリーが言った。

「私はヘレン様やミレイ様ほどエリーゼ様と親しくないから、これを機会に親しくなりたいのです。そしたら、社交界デビューした後いろいろ力になって頂けるかもしれないから!」

なんか、だんだん動機が生臭くなって来た。ボランティアは無償で行われる奉仕活動だが、おぜぜ以外に手に入るモノは確かにあるのだ。

「私も行きます。」

とリーシアが言った。

「妹が苦しんでいるんです。あの子わがままだから、お医者様や看護婦さんに迷惑かけてるかも。だから、私が手伝いに行かないと申し訳ないです。私が行かないといけないんです。」

リーシアはそう言ってエイラの方を振り返った。

「エイラは、残ってくれていいからね。私に付き合わなくてもいいから。」

「何を言っておられるんですか!私はどこまででもついて参ります。」

美しい主従愛を見せる二人に私は一応言っておいた。

「隔離地域は四ヶ所あるらしいけれど、エリーゼ様達が行くのはフェーベ地区だよ。そこに義妹さんがいるかどうかはわからないからね。」

「・・フェーベ地区。」

ずっと黙っていたコルネがつぶやいた。

「フェーベ地区だったら、私行きます。お父さんが心配だから。マルテさんもデリクもハルもいるし。ずっとずっと心配してたから。ごめんなさい。ベッキー様。ベッキー様と少しの間離れる事になっても私行きたいです。」

「謝る必要ないと思うよ。さっきからベッキーお姉様は挙動不審だよ。」

とアグネスが言う。

アグネスとユリア以外の全員が「行く」と言った。そしてアグネスとユリアの二人は、うさんくさいモノを見るような目をして私を見ている。

この二人は私が「行く」と言ったら行く「行かない」と言ったら行かない気なのだろう。二人の表情はまるで熟練のギャンブラーだ。二つに一つ。どちらが正解かを見極めようとしていて・・・。たぶんもう答えを出している。

「私行きます。」

「私も行こうかなっとっ。」

ユリアとアグネスはそう言った。

「で?ベッキー様は本当はどちらですの?」

とユリアに聞かれた。

「・・・行きます。」

エリーゼが来るまでもう十五分を切った。これ以上うだうだ言っていると支度が間に合わない。私は正直に自白した。

というわけで、急いで支度をしていると、約束の時間の三分前に王家の紋章付きの豪華な馬車がやって来た。

これからボランティアへ行くというのに、この派手な馬車に乗るのかと思ったらちょっと・・いやかなり引いた。

だけど、その馬車に乗っていたのはエリーゼではなかった。扉が開くやいなや、ルーイ王子がすごい勢いで飛び出して来た。

「ベッキー!」

「ルーイ様。」

「エリーゼと隔離区域に一緒に行くって本当か⁉︎」

「はい。そうです。」

「行くんじゃない!」

耳がキーン!となるほどの大声でルーイ王子は叫んだ。ルーイ王子の後から更にもう一人馬車から降りて来た。フィリックスだった。もう、自宅謹慎が解けたのか⁉︎何という仕事の速さだエリーゼ様!日本の民主主義ではあり得ないスピードの、王様の政治判断だ。

フィリックスも、耳がキーン!となってしまったのか耳を押さえている。

というか、「行くんじゃない」と言われて、「はい、承知しました」というわけにはいかないのですけれど・・・。