軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都の攻防戦(24)(フランツ視点)

翌日、森を歩いていてイノシシとエンカウントした。すぐさま矢を放ったが、猛スピードで走って逃げられ当たらなかった。最悪な事に、イノシシは畑の方向に逃げて行った。

「姉様逃げてー!イノシシがそっち行ったー!」

ヨーゼフが大声で叫んだ後、

「うきゃああああー!」

とレベッカの悲鳴が聞こえてきた。

全速力で畑の方へ行くと、レベッカと子供達は屋敷の中に避難していた。イノシシは畑の側で息絶えていた。レベッカの側にいたアーベラが矢で仕留めたようだ。しかし、その直前イノシシはトマト畑とナス畑を縦断した。収穫直前の野菜を蹴散らされ、レベッカは悲鳴をあげたらしい。手で顔を覆い

「おナスとトマトが・・。」

と、嘆いていた。そんなレベッカを孤児院の子供達が

「姫さま、泣かないで。」

「野菜は、また育てればいいよ。」

と励ましていた。

「被害にあったのが野菜だけで良かったよ。おまえに何かあったかと思って焦った。」

私は、ほっとしてため息をついた。

イノシシの血抜きをして、川に浸けてから私は王城特区の屋敷に戻った。

入浴し着替えをした後、書斎で仕事をしていると慌てた様子で執事が入って来た。

「旦那様。ファールバッハ伯爵とシュテルンベルク伯爵が面会を求めて訪ねて来られました。」

「・・・え⁉︎」

少し驚いた。連絡が来るだろうと思ってはいたが、まさか13議会の議長自ら訪ねて来るとは。

「シカ肉の御礼でも言いに来たかな?」

「わかりませんが、訪問の予約も無しに押しかけて来るなど、ただ事ではないように思いましたので、中にお通ししました。」

「ああ、それでいい。」

私は応接室に向かった。

中に入ると、アルベルとゾフィーがお茶を出している最中だった。私が13議会に推薦されているという話は誰にもしていない。アルベルとしては、リヒトはともかく、ファールバッハ伯爵の急な来訪は驚きだろう。

「アグネスとエリアスは、まだ畑から帰って来ていないのです。」

とアルベルは言った。二人に会いに来たのだと思っているようだった。

「二人は楽しくやっていますか?」

とファールバッハ伯爵は聞いた。声に子供達への愛情がこもっていた。

ファールバッハ伯爵の年は50代の後半だ。年をとって生まれた子供達は可愛いだろう。

「はい。とても。」

「良かった。」

と紅茶を飲みながらファールバッハ伯爵は微笑んだ。

「エーレンフロイト侯爵。今日は13議会の代表として会いに来ました。」

そう言ってファールバッハ伯爵は、従僕から巻き物を受け取った。封蝋には王室の印が押してある。

巻き物を開き、伯爵は中の文面を読み上げた。

「エーレンフロイト侯爵を13議会の新たな議員とする。」

アルベルとゾフィーが、驚いて目を見開く。私は

「拝命致しました。」

と言って、胸に手を当て頭を下げた。

「侯爵には期待しています。」

とファールバッハ伯爵が言った。「何を?」と心の中で思う。突撃隊長にでもなって玉砕する事だろうか?

だけど代わりに私はこう尋ねた。

「一つお尋ねしても良いでしょうか?」

「何でも聞いてください。」

「誰が裏切って、私に賛成票を入れたのですか?」

ファールバッハ伯爵とリヒトが苦笑して顔を見合わせた。

「賛成票を入れたのは、私にシュテルンベルク伯爵、宰相閣下、近衞騎士団長、そしてアーレントミュラー公爵の五人です。」

ガルトゥーンダウムは入れなかったらしい。ディッセンドルフ公爵を裏切れなかったという事か。

「反対票は四票。棄権票が三票あったので、その三票が賛成票に取り込まれ、賛成票が八票になりました。」

「棄権票が三票?」

「二人、領地に戻っていますから。そしてあと一人。ガルトゥーンダウム伯爵が病で棄権したのです。」

「病気?何の?」

「感染性の胃腸炎だと。」

とリヒトが言った。

「本当に?」

「さあてねえ。国王陛下が王宮から医師を遣わせたから、仮病だったらすぐバレるだろうけどね。」

なんとまあ。私は呆れてしまった。ストレスのあまり腹を壊した可能性もゼロではないが、まあ99%仮病だろう。

そんな事をしても、かえって悪手だろうに。国王陛下に逆らったというのは変わらないし、奴のせいで私が新メンバーになったという事実も変わらない。間違いなく、陛下かディッセンドルフ公爵かどちらかに粛正されることだろう。

ある意味、その程度の能しかない奴が、国を動かしていたのだ。順調な時は良かったが、国難の時に、いろいろな事が回らなくなるのは当然の事だったかもしれない。

「旦那様、おめでとうございます。」

とアルベルに言われた。

正直、『おめでたい事』なのかどうかはわからない。これは新たなる戦いの嚆矢なのだ。

私の前に立ち塞がる人間はクマより厄介な連中なのは間違いない。

だが、これはクマとの戦い同様避けられない戦いなのだ。

「ああ、ありがとう。」

と私はアルベルに言った。

以前思った事を改めて思った。愛する家族の笑顔を守り抜いてみせる。この笑顔を守る為なら、何とだって戦ってみせる。と。