軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都の攻防戦(13)(フランツ視点)

早速、捕らえたシカ達の血抜きをし、腹出しもする事にした。

意外なのは、気の弱いコルネやヘレーネが、「すごーい」「大きい」と言いながら見入っていて、しっかり者のアグネスやリーゼレータの方が怯んで目を背けている事だ。

「経験の差だと思うよ。」

私の感想にレベッカがそう答えた。

「ヘレンやミレイは、家ではメイドのような仕事をしていたから、解体を実際に見たり自分でもやったりした事があるのだと思う。コルネやリーシアはお母さんがいた頃、お母さんが食材を手に入れて調理とかしていたらしいから、やっぱり見た事があるのではないかな。でもアグネスやリーゼレータは深窓のお嬢様だから、お肉なんて切り身になって皿の上に乗っているものしか見た事ないんだよ。」

なるほど。と思った。しかし、それを言うならおまえはこの場にいる誰よりもお嬢様ではないのか?

その時私は、ある光景に目がいった。

血抜きの為切断されたシカの頭を、ユリアがじーっと見ていたのだ。

「ユリア、どうかしたのかい?」

「あ、旦那様。いえ、その、最近『東行記』という本を読んだのですけれど、東大陸のある国では大切なお客様が来ると羊を一頭丸焼きにしてお出しすると書いてあったんです。その際、羊肉の最上の部位である脳はお客様に食べて頂くとあったので、シカも脳も食べられるのかな?って考えていたのです。」

可愛い顔して、言う事はシュール!

少々引いてしまった私の後ろで、ウルリヒが

「食べられるよ。おいしいよ。」

と返事をした。

「骨を割って、取り出してあげよう。」

「あ、いえ。シカの頭は剥製にして飾られる人もいるので、捕獲したアーベラさんに聞いてみないと。」

ユリアの声が聞こえていたのだろう。アーベラが

「いりませんよ。遠慮なく割ってください。」

と言った。それから続けてこう言った。

「そういえばお嬢様。シカは舌も食べられます。私はシカ肉の中で一番好きかもしれないです。」

「ユリア様、こういうの平気なんですね。キャーって言うタイプかと思っていました。」

少し意地悪な顔をしてコルネが言った。でも私もそう思っていた。

それに対してユリアは少しむっとした顔をして

「平気ですわ。ブルーダーシュタットの朝市では、マグロやブリの頭だけが並んでいたりしますもの。魚の神経じめの方がよっぽど衝撃でしたわ。」

と言った。確かにそうかもしれない。コルネは『神経じめ』の意味がわからなかったようだが、ユリアに聞くのはプライドが許さなかったようだ。レベッカに聞きに行っていたが、意外にもレベッカは

「知らない。」

と言っていた。

我が子ながら、意外な事を知っていて意外な事を知らない子だ。

「さて。腹出しは畑の周辺に残る組がやって、私達はシカの足跡を追おう。」

と私は騎士達に声をかけた。

先刻見たシカの群れの行動を調べないとならないし、先刻の群れはメスと子供だけの群れだった。レベッカ達が見たという、ツノが立派なオスのシカもどこかにいるはずなのだ。

「お嬢様。私はしばらくお側を離れますが、無茶をせず皆の言う事をちゃんと聞いてくださいね。」

追跡組のアーベラが言うと

「待て、待て。」

と何人かの男性騎士が言った

「アーベラ。おまえ、もう二頭も仕留めたんだから代われよ。」

「そうだ、そうだ。自分が仕留めた獲物の処理は自分でやらなきゃだぞ。」

アーベラが私をちらっと見た。

私としては、有能なアーベラを連れて行きたい気持ちもあるが、仕留められなかった騎士の気持ちもわかる。

「アーベラ。ヨアヒムと交代しなさい。」

と指示を変更した。