軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい家族達(23)(アルベルティーナ視点)

騒ぎの予兆は、翌日には既に起きていました。

レベッカ宛に複数の家門から手紙が届いたのです。

はっきり言えば、レベッカのハンドベル仲間の、アグネス嬢、ユスティーナ嬢、オルガマリー嬢、リーゼレータ嬢からです。

内容は全て、我が家を訪問したい。レベッカと話がしたい。というものでした。

四人と、その保護者達は一緒にやって来ました。アグネス嬢とオルガマリー嬢は母親と、ユスティーナ嬢は姉と、そしてリーゼレータ嬢は義理の叔母であるローテンベルガー公爵夫人とです。アグネス嬢には双子の弟のエリアスも同行していて、ヨーゼフとエリアスは

「わー、久しぶりだねー。」

と手を取り合って喜んでいました。

しかし、四人の女の子達はカンカンです!

「ベッキー様ひどい!王宮の侍女になる為のお勉強会に、リーシア様とヘレン様とミレイ様だけを誘うなんて!不公平です。差別です。ひどいですーっ!」

アグネス嬢が代表して叫ぶと、他の三人もうんうん、とうなずきます。

「まず、何でそれを知ってるの?」

友人達の剣幕に、たじたじになりながらレベッカが聞きます。

「ベッキー様は私のおとー様の職業を忘れたんですか⁉︎」

「情報大臣って、そんな情報まで集めてるの?」

側で聞いていて私もびっくりです。そして、情報大臣はそういう情報を家族にダダ流しにしているのですか?

「あのね。家庭教師に来てもらっているのは、将来王宮で侍女として働く為なの。侍女になる気も無いのに教えて頂いたら、先生の時間を無駄にしてしまう事になるでしょう。でも、ユスティーナ様は将来官僚になりたいのでしょう。医療省に入るのが夢なのでしょう?」

とレベッカがユスティーナ嬢に言いました。

「・・それはそうですけど。」

「オルガマリー様は、故郷に婚約者がいるんでしょう?アカデミーを卒業したら結婚して領地で暮らすんでしょう。」

「はい・・・。」

「だったら、侍女教育なんか受けても意味無いじゃない。それに、アグネス様はお母様であるファールバッハ夫人が、元王宮侍女だったのでしょう?だったら、他人に教えてもらわなくてもお母様に教えて頂いたらいいじゃないの。あと、リーゼレータ様は、お母様や公爵閣下が王家をお嫌いなのでしょう。なのに、リーゼレータ様を誘ったら領地におられるお母様がお怒りになるかもしれないじゃないですか!」

娘は上手に言い訳を考えました。

本当の理由は、リーシア、ヘレン、ミレイの三人が家族から虐待を受けていたので、三人を家族から引き離す為です。他の子達は、家族から虐待を受けている可能性はなかったので声をかけなかったのです。でも、今この場に三人がいるのでそれは言えないでしょう。

「お母様に教わるなんて嫌!出来ないとぐちぐち言い出して、そのうち全然関係ない事で文句を言い出して、結局喧嘩になっちゃうんだもの!」

とアグネス嬢が叫びました。

親子あるあるですね。

「婚約を解消する可能性はゼロではないですもの!それに、今はこんな時代です。婚約者が伝染病で死んじゃうかもしれないじゃないですか。」

不吉な事を、オルガマリー嬢はさらりと言います。今時の子はシビアですね。

「官僚試験は落ちるかもしれないし。だから、将来の選択肢は一つでも多くしておきたいんです。」

苦労人のユスティーナ嬢の言う事は堅実です。

「仲間はずれは嫌ですーっ!」

リーゼレータ嬢のこの発言が結局全員の本音なのでしょう。

私は保護者達に視線を移しました。ユスティーナ嬢の姉であるセレスティーナさんは妊娠しておられたはずですが、今はお腹がスレンダーになっておられます。

「セレスティーナさん。赤ちゃんが生まれたの?」

「はい。二ヶ月前に生まれました。女の子で『クリスティーナ』と名付けました。」

「まあ!おめでとう。良かったわね。」

そう言うと、セレスティーナさんは疲れたような微笑みを浮かべ「ありがとうございます」と言われました。

「可愛らしいでしょう?でも、子育ては大変かしら?」

「・・夜泣きがひどくて。私が抱っこしていないと絶対泣き止まないんです。乳母や夫では駄目なんですよ。ようやく泣き疲れて寝たかな?と思ってベビーベッドに置くとまた泣くんです。一晩中そんな調子で。ユスティーナは、そんな事なかったのに・・。」

それは大変です。というか明日は我が身です。

悪阻がひどいと、早く生まれて来て欲しいと思いますが、生まれたら生まれたで赤ん坊は大変です。

「そんな状況なので、ユスティーナにあまりかまってやれなくて。実家の義姉も今妊娠していて悪阻が大変なんです。それで、兄も義姉に付きっきりで、ユスティーナに何もしてやれなくて。」

だから、ちょっと預かってくれませんか?という心の声が聞こえて来ました。

そうかー。アウレリア夫人も妊娠しておられるのね。生まれる時期はうちの子と同じくらいかしら。だったらアカデミーで同級生になるかも。と考えました。そうなるとツァーベル家には、今から親切にしておいた方が良いかもです。

「私、王宮の侍女だったと言っても、結婚したので四ヶ月で辞めてしまったんですよ。娘に教えてやれる事もそうないので、先輩方に指導して頂きたいですわ。勿論、御礼はお支払いしますから。」

とファールバッハ夫人が言われました。

年齢的に、エルヴァイラ夫人とモニカ夫人は先輩で、きっと指導係だったのでしょう。

「家にいるとエリアスと喧嘩ばかりして、エリアスを泣かせて。先輩方に淑女の何たるかをガツンと言ってやって欲しいです。」

こちらが本音のようです。

だったらアグネス嬢だけと思いますが

「エリアスにもいろいろ教えてやってください。ダンス練習のパートナーくらいは務まりますから。」

と、息子も押し付ける気満々です。うちで喧嘩されて泣かれても困るのですけれど。

「ローデリヒ様が領地に戻ってだいぶ経つので、私心配で、私も領地へ戻ろうと思うんです。ローデリヒ様ったら、私とリーゼレータを連れて帰るのは伝染病が心配だ。すぐ帰って来るから待っていてくれ。と言って私達を置いて行ったのに!海沿いの領地には感染が広まっていっているって聞くし、連絡もくれないし。」

と公爵夫人が言われました。

「病気にかかっていないか心配ですよね。」

「浮気してるんじゃないか⁉︎というのが心配なんです!アレも病気みたいなモンだから!」

「・・・。」

「というわけで、私は領地に帰ろうと思うのですけれど、リーゼレータを連れて行くのも心配だし、置いて行くのも心配だし、こちらで預かってもらえませんか?」

うちは、託児所じゃないんですよー。

と、公爵夫人に対しては言い辛いです。

私とレベッカは視線を交わし合いました。

「・・国王陛下が大規模集会を禁止しておられるのに、あまり大人数で集まるのは。」

とレベッカが言いました。

実際、今応接室は人で溢れています。うちの家族にユリアとコルネにリーシアにヘレンにミレイ。お客様に先生方が三人。リエとメグまで様子を見に来ていて、客が来た以上お茶を出さないわけにもいかず、ちょっとしたお茶会のレベルです。

クラスターが出たらどうしよう?と思うくらいの人の入りです。

しかし、

「リーシア達は残って良いけど、他の人は駄目。」

などと言えるでしょうか⁉︎しかも、厄介な事に『他の人』達の方が身分が高いのです。

だからと言って、リーシアとヘレンとミレイを家に帰すなど論外です。

そうなると・・・。

「私共は、人数が増えても構いませんよ。」

とエルヴァイラ夫人が言われました。

「まあ、六人も十人も大差ないですしね。」

アルテ令嬢もおおらかな事を言われます。

「『御礼』が増えるならむしろありがたいです。」

とモニカ夫人が言われました。

こう言われてしまったら、反対する理由はもうありません。

「わかりました。お預かりしましょう。」

と私は言いました。

「はー、やれやれ。」

と言って私はソファーに倒れ込みました。

ようやく保護者達も帰ってくれました。子供達はさっそく授業を受けています。ついさっきまで

「ヘレン様、腕どうしたの?」

とか

「ミレイ様、どうして黒髪のカツラかぶってるの?」

とぴーちくぱーちく、ちゅんちゅんガクガクうるさかったのです。

学校の先生ってご立派ねえ。と私はしみじみ思いました。

「アルベルー。大丈夫?」

とリエとメグが様子を見に来てくれました。

「疲れてるみたいだけど、話があるのよ。ちょっといい?」

とリエが言いました。

「何かしら?」

「オルヒデーエ先生の事、あなた覚えてる?」