作品タイトル不明
新しい家族達(18)(アルベルティーナ視点)
レベッカの友達がうちへ来て、三日が経ちました。
今日は家庭教師の先生方が、うちに初めて来られる日です。
子供達に会わせる前に、まず私が三人の先生方と面会しました。
エルヴァイラ・フォン・ネーフェ夫人は、いかにもステファニー様のお友達。という方です。優しげな面差しの清楚な美人で、ステファニー様と雰囲気がそっくりです。七人の子供がいらっしゃるというのに、全然太っていなくてスレンダーなのが正直不思議でなりません。
モニカ・フォン・リールクロイツ夫人は、キリッとした面差しの知的な女性です。切れ上がった目に、気の強そうな光があって、正直ちょっと怖い。と思いました。しかし、話してみると親しみやすい女性で、頼りになるお姉さん、という感じでした。
アルテミーネ・フォン・ミレッカー令嬢は、都会的なおしゃれな女性という感じでした。私の友達にはいないタイプで、内気で引きこもり体質の私には眩しくて、多分夜会とかで出会ったら話しかけられないタイプの相手だと思いました。
胸元にとても大きな美しいカメオのブローチをつけておられて、何とそのブローチは彼女の手作りの品なのだそうです。素晴らしい才能の持ち主なのだと驚きました。そのカメオを見て一瞬で、私は彼女を尊敬したのですが、はてレベッカはこのブローチの価値に気がつくでしょうか?
「ブローチなんかつけてたっけ?」
とあの子なら真顔で言いかねません。
その後、子供達に会ってもらいました。レベッカ、ユリアーナ、リーシア、コルネリア、ヘレーネ、ミレジーナ(年齢順)です。
一昨日、面会したデューリンガー伯爵夫婦の前で、足を組んで腕まで組んで座っていた、という話を聞いているので「お願いだから、ステファニー様推薦の、教師の方々に失礼な態度をとらないでよ」と祈るような気持ちです。
お互いに自己紹介を済ませた後
「私達に何か聞きたい事はありますか?」
と、モニカ夫人が聞かれました。
ここで何を聞くかも『社交術』です。レベッカ以外の子供達には、何を聞けば良いのかためらうような空気が流れています。
レベッカは、アルテミーネ令嬢をじっと見ていました。
「ミレッカー先生。」
「アルテと呼んでください、レベッカ様。何でしょうか?」
「アルテ先生。そのカメオの柄は、シマエナガですか?」
最初の質問がそれですかっ⁉︎
ブローチの存在に気がついた。という点は感心しました。けど、最初に聞くことですか?
でも、聞かれたアルテ令嬢は嬉しそうです。
「そうです。私の故郷の島にだけいる固有種の鳥なのですよ。よく名前をご存知でしたね。レベッカ様。」
「えっ?その小鳥は実在する鳥なのですか?あまりにも可愛いから、空想上の生き物なのかと思っていました!」
コルネが驚きの声をあげました。
「私も、可愛いブローチだわ、って気になっていたんです。」
とミレイも言いました。
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。これは自分で彫った物なの。」
ブローチを触りながらアルテ令嬢が答えます。あまりブローチに関心を持っていなかったリーシアやヘレンも食い入るようにブローチに注目をし始めました。
「ええっ!石に自分で彫ったのですか?いったいどうやって?」
とコルネが言いました。「あちゃー」という表情がレベッカとユリアに浮かびます。
「・・コルネ様。先生のカメオはシェルカメオです。シェルカメオは石ではなく貝ですよ。」
ユリアがコルネにそう言います。間違いを指摘されてコルネは真っ赤になってしまいました。
私は、恐る恐る先生方の表情を覗き込みました。こんな事も知らないなんてと、呆れておられないでしょうか?もしも、コルネを厳しく叱りつけたりされたら、レベッカがどう反応するか・・・。
「す・・すみません。」
コルネは泣きそうな表情をしています。
「いいえ。知らない事があるから、これから勉強していかれるのでしょう。何でも聞いてくださいね。」
アルテ令嬢が優しくそう言われたのでほっとしました。
「もっと近くで見させてもらっても良いですか?」
とレベッカが言い、他の子達も寄って行きました。やはり、年の近いアルテ令嬢が子供達も一番近寄りやすいのでしょう。
これなら大丈夫かしら?
私は、考えていた計画を実行する事にしました。
計画とはずばり、一緒にお昼ご飯を食べて頂くことです。
いえ、元々一緒に食べてもらうつもりだったのですけれど。そのメニューをプランBではなく、プランAにしようという計画です。ちなみにプランBの料理は腸詰とオムレツでした。しかしプランAは・・・。
案の定レベッカは、皿の上の料理を見て
「えーっ!」
と抗議の声をあげました。