軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国立大学農学科(3)

建物から違う出口を使って出ると、目の前は田んぼだった。

黄金色の稲穂がワサワサと揺れている。

「うわー、お米だ。」

季節はもう冬である。まだ刈っていない米があるとは!と思ってビックリしたのだが

「姫君は米をご存じでしたか⁉︎」

と教授にビックリされた。そういえば、ヒンガリーラントの米輸入率は100%だ。今まで国内では栽培されていないのだから、知っていたらおかしいかもしれない。

「ほ・本の挿絵で見たんです。実物を見るのはもちろん初めてですよ。」

文子だった頃、農家だった友人の家の田んぼで、田植えと稲刈りのバイトを毎年していた事は秘密にしておこう。

「これが『実るほどこうべの垂れる稲穂かな』と、詩にも読まれた稲穂なのですね。素敵な香りにうっとりします。」

「その詩は初めて知りました。どういう意味なのですか?」

と教授に聞かれた。

「人間を稲穂に例えて、年をとって成熟するほどに頭や腰を低くしましょう。みたいな意味らしいですよ。たぶん。」

「それは、素晴らしい詩ですね。学生達にも紹介したいです。」

「ところで、このお米は十分成熟していそうな気がするのに、まだ刈り取らないのですか?」

「国王陛下に上奏するまで、この一画のみ残しているのです。教育省の方々に大地から生えている姿を見てもらいたくて。」

なるほど。だから建物の周辺のお米だけ刈り取っていないのか。

「しかし『刈り取る』という言葉を使われるとは、姫君は農業にとてもお詳しいのですね。確かに米は『切る』のでも『摘む』のでもなく根本から刈り取ります。学生でも、結構な数の者がハサミで穂先のみを切り取ろうとしたりしたのですよ。それなのに、米は刈るものだというのをご存じだとは、恐れ入りました。」

やばい。文子だった頃の常識がついぽろぽろとこぼれ出てしまう。これ以上余計な事を言うのはやめよう。

「ははは、娘は読書好きで。」

とお父様が胸を張っている。

「さすが、アーレントミュラー教授が10代最高の知恵者と褒められた姫君ですね。」

と教授が言った。

余計な事を言わないでくれ、アーレントミュラー教授。

と、思っていたのに。

しばらく歩くと、藤棚みたいな棚があって、そこに葉が生い茂りゆで卵サイズの実がなっていた。

実は泥団子みたいな外見だ。たぶん、ユリアもユーディットも食べ物だという事に気がつかなかった事だろう。

でも、私はこれが何か知っていた。農家をやっていた友人の家でも育てていたからだ。

私はこれが大好きだった。だから、ついうっかり言ってしまった。

「キウイだ。」

「ええっ!」

教授と学生達が叫んだ。

「これをご存じでしたか⁉︎東大陸から取り寄せて、研究用に植えていて、まだ外部には一切出していませんのに!」

やあっば!

でも、でも大丈夫だ!これはまだ言い逃れが出来る!

「私の大好きな絵本で『ブラウン・シュガーと不思議な果実』という本があるんです。主人公が、病気になった王妃様の為騎士団の仲間達と共に、外国の栄養豊かな果物を探しに行くのですけれど、それがキウイという果物だったんです。」

「そうなんですか?そんな本があるとは知りませんでした。」

「先月出たばかりの、子供向けの絵本ですよ。ただ、その絵本を読んでどんな果物だろうと憧れていたんです。泥団子に毛が生えたみたいな見た目なのに、中身の実はエメラルドのように美しい緑色なんですってね。見た目ではなく中身が大事というテーマの物語でした。」

「そうなのです。とても美しい果物なんですよ。食べてみられますか?」

「え?でも、研究用の大切な植物なのでしょう?」

「ぜひとも、姫君のような方に食べて頂きたいのです。」

そう言ってくださるのなら食べてみたい!

スーパーでキウイを買う時は、グリーンよりもゴールド派の私だったが、ただで食べさせてもらえる物なら何色でもかまわない。

「ただキウイは木になった状態では完熟しません。収穫した物を追熟させなければ食べられませんので、追熟済みの物をお出し致します。」

と教授に言われた。そうなのか。そこまでは知らなかった。

「寒いのでサンルームに行きましょう。」

と言って、小さな小屋を目指した。たどり着いた小屋は、南側に大きな窓があった。

もう何を見ても絶対に「あ、◯◯だ。」とは言わないぞ!と心の中で決意する。

「わー、初めて見ます。」

「こんな果物があるんですね。」

と言う!可能な限り自然に。

「どうぞ、ご覧ください。」

と言われた見せられた、大きな鉢の中には緑の葉っぱと茎と白い花があった。

正直私は、きょとん、とした。

果物と聞いていたので木になっている物と思っていたのだ。