軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

光輝会についての調査(2)

エリカ様はシュテルンベルク伯爵の一番上のお姉様だ。伯爵には二人の姉と二人の妹がいて、上からエリカ、リーリエ、ローゼマリー、マルガレーテという。シュテルンベルク家では長女に必ず『エリカ』という名前をつける風習があり、お母様にも姉が二人いるが、年上の方のお姉さんの名前はエリカというそうだ。

初代伯爵夫人と同じ名前ね。と人は言うが、『エリカ』は初代伯爵夫人のあだ名で、彼女の本名はリーゼロッテである。

応接室へ行くと、エリカ様はお母様と一緒にお茶を飲んでいた。実を言うと、リーリエ様とマルガレーテ様はお母様とすごく仲が良いので私も何度も会った事があるが、エリカ様に会うのは初めてだ。黒い髪に黒い瞳で、お母様と顔がよく似ている。エリカ様の一人娘のコリンナ様も一緒にいたが、彼女の髪色は栗色だった。

エリカ様の夫は海軍の軍人だそうで、現在とある植民地の島で副総督をしているという。

で、総督の奥様の親友がキルフディーツ伯爵夫人という人なのだそうだが、その人の娘のアデリナ嬢をコンラートの婚約者にどうかという話が出ているのだそうだ。

アデリナ嬢はコンラートと同じ16歳だそうだが、学問が大好きだそうで常々「自分よりも馬鹿な男と結婚するのは嫌」と言っているらしい。なので、アカデミーでトップクラスの成績のコンラートとお似合いなのでは、と大人達は盛り上がっているという。

それでエリカ様はコンラートに、キルフディーツ家の夜会に一緒に行こうと誘ったらしいが、コンラートに断られたそうだ。

それで考えたのが、アイヒベッカー家のお茶会である。アデリナ嬢は、エレナローゼ嬢と仲が良くアイヒベッカー家のお茶会に必ず参加する。そのお茶会に私が行くと言えば、私と仲の良いコンラートも行くというはずだ。二人に顔合わせをさせる為、どうかアイヒベッカー家のお茶会へ行ってくれ。と頼まれた。

いや、別に私とコンラートはそこまで仲が良いわけではないし。私がお茶会に行くからってコンラートも来るとは限りませんよ!

そう言ったのだが、耳を貸してくれない。

コンラートの事が心配なの。母親がいない分、伯母である私が世話を見てやらないと。シュテルンベルクの家をコンラートの代で終わらせるわけにはいかないの!

と、涙ぐみながらグイグイくる。

気持ちはわかりますが・・・。

あの嵐の夜。ひしと、抱き合っていたジークとコンラートの姿にシュテルンベルク家の使用人さん達めちゃめちゃ動揺していたからね。

その時の事を使用人の誰かがエリカ様にチクったのだろう。

コンラートは一人息子だし、女性より男の方が好きだから結婚しないとかいうのは許されない。とにかく一日でも早く新しい婚約者をシュテルンベルク家の人達は当てがいたいのだろうなあ。

でもねー。あの、ジーク様は実は女なんですよ。そして、現在行方不明になっているコンラートの婚約者本人なんですよ。

そして、何よりこれが一番重要なんですが、ジーク様は怒るとものすごく怖い人なんですよ。

あの人ユリアに

「僕はコンラートの為なら、女の子の顔でも切り裂けるよ。」

と言って脅迫したからね。その五分後にはコルネに

「シュテルンベルク家の秘密を話したら、ナタで頭叩き割る。」

みたいな事を言っていたからね。

私、あの人だけは敵にまわしたくないんですけれど。

って言えないから弱ったな。

ジーク様は

「自分にとって一番大事なのはお兄様。」

って言って、コンラートの婚約者から身を引いたけど、決してコンラートの事が嫌いなわけじゃないんだ。

否。たぶん二番目か三番目くらいにはコンラートの事が大事なのだ。

そしてあの人は、とっても愛が重い人なので、そこいらの女共のコンラートを『好き』よりはるかにジーク様の『好き』の方が重くて深い。

ええ、正直に言いますとね。私だって、無事ルートヴィッヒ王子との婚約が解消できたら、コンラートと結婚してみたいなあ。と思った事もありましたよ。

でも、私は略奪愛反対派ガチ勢だし、コンラートへの愛情はジークには敵わないと骨身に染みている。

それでも、もしも、万が一、億が一にもコンラートが私を好きだと言ってくれたら、と思った時もあるけれど、あの嵐の日のコンラートを見て「あ、これは見込み無いわ」と痛感した。

噂じゃアカデミーでのコンラートはジークに超冷たいとの事だったけれど、噂は所詮噂、真実じゃない。二人はアカデミーの寄宿舎で同室なのだ。当然それなりの絆が生まれるよね。そもそも、うちの弟と同室だったのを解消して、ジークを同室者に選んだ時点でコンラートにはジークが見捨てられなかったのだ。あの時点で割り込むのは無理だな、って思ってた。

そんな二人を引き裂くのに協力しろと?絶対嫌だよ!

お母様は貝のように沈黙しているので、どーしよっかなー。考えてみますね。でへへへへ。と話をごまかした。

で、再び櫛の確認に戻ったのだけど、そうこうしているとドロテーアが戻って来た。

さっそく、自室に引きこもってドロテーアに

「デリクさん、何て言ってた?」

と聞いたが、うつむいてしまったドロテーアの顔色は、なんかやけに蒼かった。