軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝2 第三十話 責任

ウィルフレッドの援軍が入ったため、エルフ軍は持ち直した。

その中で戦っていたアレンは、チラチラと山頂の戦いの様子をうかがっていた。

その様子を見ていたウィルフレッドは、少し思案した後。

「アレン! 行かねばならない理由があるのか!?」

「……あります!」

「なら、行け! アレンの道を作れ!」

ウィルフレッドはアレンの背を押した。

なぜ行かなければいけないのか。

その理由は知らない。

ただ、その表情に責任感を見たから、背を押した。

力になれるとは思えない。

危険かもしれない。

けれど、行かなければと思っているなら行かせてあげるべきだと思ったのだ。

「アレン!」

騎士たちがモンスターたちを打ち破り、アレンに道を作る中、一本の矢がアレンの道を完璧に作り出した。

「私は……君を信じている!」

「はい!」

矢を放ったサディアスはそう言うと、またモンスターたちとの戦いに戻っていった。

そんな後押しを受けて、アレンは山頂を目指し始めたのだった。

■■■

「無謀ですね」

結界の外。

次の一撃に備えていたレイナは、シルバーとヴリトラ以外の気配を感じて、瞑想を中止して目を開けた。

その目に飛び込んできたのは山を登るアレンだった。

しかし、そもそも山はそう簡単には登れない。

それなりに身体能力があるアレンといえど、シルバーやレイナのように一瞬で登ることはできない。

しかも地面は揺れている。

山頂は化け物同士の戦場なのだ。

そんなアレンを見て、レイナは呟くが。

「……半数はあの少年の強化に回りなさい」

「はい?」

「聞こえませんでしたか? あの少年を援護しなさい」

「は、はい! しかし、よろしいのですか……?」

「足りない分は技量で埋めます。無謀も無謀……しかし、あのレベルの戦いに首を突っ込もうとする無謀さ、そして蛮勇さは評価に値します。この中に一人で山頂に登りたい者はいますか?」

レイナの問いかけに部下たちは押し黙る。

とても登りたいとは思えない。

エルフのように恐怖でおかしくはならないが、それでも圧倒的な威圧感に身がすくむ。

近づきたいとは思えない。

だから。

「あの少年が何をするか、私は見たい」

「しかし……命を落とすやもしれません」

「覚悟の上でしょう。自分の命より大切な何かがあるから、彼は上を目指すのです。少々の後押しくらい、神も駄目と言わないでしょう」

「かしこまりました」

レイナの指示を受け、半数がアレンに対して強化魔法をかけ始めた。

突然、身体能力が向上したアレンは、体の軽さを感じながら、とんとん拍子で山を登り始めた。

理由はわからない。

そしてなぜと考えこむことはしない。

そんなことは後だ。

今は恩恵を享受するだけ。

とにかくアレンは全力で山頂を目指した。

何ができるかはわからない。

けれど、体が止められない。

心が叫んでいた。

パトリシアを助けるのだ、と。

「今、行くから!」

そんなアレンの視界に山頂が見えてきた。

そこでは倒れたヴリトラとシルバーの攻防が繰り広げられていた。

だが、そんなことはアレンにとってはどうでもいい。

アレンにとって大切だったのは、白い玉に閉じ込められていたパトリシアが倒れているという事実のみ。

「パトリシア!」

声をあげ、アレンは駆け寄ろうとする。

だが、一歩踏み出した瞬間。

ヴリトラが身じろぎしたことにより、足場が崩れ去った。

そのままアレンは土砂崩れに巻き込まれたのだった。

■■■

暗い。

そんなことを思いながら、アレンは光を求めて左腕を振った。

その手には咄嗟に握っていた剣があった。

向上した身体能力により、アレンはその一撃で土砂の中から脱出した。

危うく生き埋めだった。

危なかった。

「こんなところで!」

止まっている場合じゃない。

早くこんなところからパトリシアを連れ出さないと。

気持ちは急く。

しかし。

「っっ!?」

右腕が動かなかった。

大きな岩と岩。

そこに挟まれて、右腕が引き抜けない。

舌打ちをしながら、岩に向かって剣を振るうが、不十分な状態では巨大な岩を壊せない。

右腕の感覚は僅か。

押し潰されているわけではないようだが、抜くことはできない。

岩も壊せない。

この状態からの脱出は一人では不可能。

だから。

「歯を食いしばれ! 俺!!」

自分に言い聞かせ、アレンは迷わず左手の剣を右腕に振り下ろした。

脱出はできない。しかし、右腕を捨てれば解決する。

命だって惜しくないのだ。

右腕程度、惜しくはない。

だが、痛みはある。消失感もある。

それでも。

それでも。

それでも。

「今……行くから!!」

すべては自分の我儘だから。

多くの人に背中を押してもらった。

その責任がある。

腕を惜しむな。足を惜しむな。命を惜しむな。

何もかもを捨て去っても。

必ず傍に行く。

そこで息たえてもかまわない。

この身のすべてを彼女のために。

それが自分の責任だ。

生きてほしいと言ったのだから。

彼女が生きていられるように、すべてを捧げよう。

右腕からおびただしい量の血を流しながら、アレンは駆ける。

ただ、ひたすらに。

そして、結界に守られたパトリシアを見つけた。

アレンが近づくと、結界が解除され、アレンはパトリシアを抱き上げた。

温もりがある。

死んでいない。

生きている。

そのことに安堵しながら、アレンは上を見つめる。

そこではヴリトラがジッとアレンを見つめていた。

自分のモノを奪う不届き者。

そんなアレンにヴリトラは罰を与えようとするが、それよりもアレンのほうが早かった。

「結局、最後は人頼みか……」

呟きながら、アレンは地面を蹴った。

そして宙に浮きながら叫んだ。

「シルバーーーーー!!!!」