軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝2 第二話 別大陸

古代遺跡。

その入り口は封印されていた。しかも厳重に。

このまま放置していても、藩国の者では入ることはできないだろう。

とはいえ、そんな厳重に封印されている古代遺跡をこの国に放置しておくわけにはいかない。

俺以外に破れないと確信できるならまだしも、この程度なら破れる奴はいるだろう。

そうなると、この場にあること自体が危険だ。

さっさと中を確認して、危なそうな物は運び出すか破壊。

それが一番だと判断し、俺は封印を破って、中に潜入する。

古代遺跡はとにかく一方通行だった。

しかし、地下に向かって通路は走っている。

妨害らしい妨害はない。

たびたび結界による封印があるだけだ。

それらを破っていくと、広い空間に出た。

何かの装置だろうか? とにかくでかい。

外見は円柱。びっしりと文字が彫られている。

作動はしていないようだが、これがこの古代遺跡に隠されていた目玉らしい。見た限り、死んでいる装置だ。

ただ運び出せるものでもない。完全に遺跡の一部だ。

破壊してしまうか、別の手を考えるか。

そう思っていると、俺があらかじめ張っておいた探知結界に誰かが触れた。

おそらく近くの村人。

ここに近づかれるのはまずいため、俺はその場で追加の隠蔽結界を張る。

これで気づかれることはない。

そう思っていると、突然、円柱が光り始めた。

「俺の魔力に反応したのか!?」

死んでいる装置だと思っていたから、油断していた。

しかも、起動が早い。

一瞬で、天井付近に黒い穴が出現した。

この穴には見覚えがある。

「転移門か!?」

咄嗟に脱出しようとするが。

俺が装置の発生させた黒い穴に吸い込まれるほうが少しだけ早かった。

そして。

気づいた時には俺は見知らぬ荒野に立っていた。

地面には文字がびっしりと刻まれた円形の物質。

どうやらここが転移先として指定されていたようだ。

「やれやれ……」

転移系の古代遺跡とは驚いた。

まぁ、飛ばされるだけなら大きな被害は出ない。

遺跡自体の危険度はそこまでではないとわかったことが救いだろう。

無駄な魔力消費だと思いつつ、俺は転移門を開こうとする。

だが、転移門は開かない。

「おや?」

思わず首をかしげてしまう。

ただ、しばらくして気づく。

どういうわけか、転移が発動しないとなると。

見知らぬ土地で帰る手段がないということになる。

まさかまさか。

転移遭難することになるとは。

「これは……まいったなぁ」

そんなことを呟きながら、俺はため息を吐くのだった。

■■■

転移ができないことに疑問を抱きつつ、俺は周囲を見渡す。

見たことのない場所だ。

広い荒野。

建物らしいものは見えない。

唯一の建築物は、俺が転移してきた円形の場所。

ただ、周りを見る限り、遺跡が風化したのだろう。

かすかに跡地が垣間見える。

それくらいしか周りにはない。

本来、こういうときは闇雲に歩き回るのは得策ではないが、待っていても助けがくるわけではない。

俺がここにいることを誰も知らないからだ。

そうなるといつまでも留まってはいられない。

休みを取ったとはいえ、留守が長くなるのは避けなければいけない。

ここがどこだかわかれば、帰る方法も見えてくる。

とりあえず近くの村、できれば町に入りたいところだが。

なんて思っていると。

「土煙か」

奥から大きな土煙がたちのぼっていた。

何かが移動している。

人とは思えないが、それでもかまわない。

「モンスターの生息地でだいたい予想はつくか」

そんなことを思いつつ、俺はそちらのほうに歩いていく。

好都合なことに土煙はこちらを目指していた。

なかなかのスピードだ。しかも地面を削るようにして移動している。

いくつかモンスターの名前を頭に浮かべていると、声が届いた。

「助けてくれぇ! 誰かぁ!!」

声は土煙から。

正確には土煙の少し先から。

一人の少年が全力で走っていた。

体に似合わない大きな剣を背負っている少年は、とにかく叫んでいた。

その後ろには巨大な蛇みたいな……ミミズ。ただ、俺の知っている巨大な蛇型モンスターとは一致しない。

大抵のモンスターのデータは頭に入れてあるが、あんなモンスターは見たことも聞いたこともない。

とはいえ。

間違いのない事実として、少年はモンスターに追われている。

冒険者としてこれは見過ごせない。

「こっちに来い」

「無理だ! 追いつかれる! 火! 火をくれ! こいつらは火が嫌いなんだ!!」

「なるほど」

一つ頷くと、俺は少年の傍に転移門を開く。

試しにやってみたが、成功した。

これで一つわかったことがある。

使えないのは長距離転移だ。

瞬時に少年が俺の傍に転移してきた。

そのまま俺は左手を前に突き出した。

≪我は天意を代行する者・我は天と地の法を知る者・断罪の時来たれり・咎人は震え罪無き者は歓喜せよ・我が言の葉は神の言の葉・我が一撃は神の一撃・この手に集まるは天焦がす劫火・天焔よ咎人を灰燼と化せ――エクスキューション・プロミネンス≫

巨大な蛇だかミミズだがわからないモンスターに対して、俺は炎の魔法を使う。

弱点ならこれで十分だろう。

突然、目の前から獲物が消えたモンスターは、こちらに向かって突進してきている。

だが、俺の魔法の完成のほうが遥かに早い。

輝く炎の閃光が魔法陣から発射され、モンスターを一瞬で飲み込む。

そのまま炎はモンスターが通ってきたルートを一瞬で焼き尽くす。

ここが荒野でよかった。

周りに被害がないのはいいことだ。

「弱点を教えてくれて助かったぞ、少年」

「じゃ、じゃ、じゃ」

「じゃ?」

「弱点とか関係ないだろ!? なんだよ!? あんたは!?」

茶色の髪に勝気なつり目。

頬に傷のある少年は、見た目は十五、六歳くらいだろうか。

俺の魔法の威力を見て、尻餅をついて目を見開いている。

そんな少年に俺は告げた。

「俺は冒険者ギルド帝都支部所属SS級冒険者、シルバーだ」

これで通じるだろう。

そう思っての自己紹介だった。

しかし。

「ぼ、冒険者ギルド……? な、なにいってんだ?」

「冒険者ギルドを知らないだと……?」

「し、知らねぇよ……」

「では、ああいうモンスターは誰が討伐している?」

「く、駆除人だよ……」

そう言って少年は腕に刻まれた紋章を見せてきた。

見たことのない紋章だ。

竜のようなモンスターを剣で貫いた紋章。

「駆除人だと?」

「駆除人組合がモンスターを駆除するんだ……大陸の常識だぞ……?」

少年は俺に訝し気な視線を送ってくる。

大陸の常識。

それならば冒険者ギルドも大陸の常識のはず。

田舎だから知らないということは、おそらくない。

そうなると。

「少年、この大陸の名は?」

「しゅ、シュランゲ大陸だ……なんでそんなこと聞くんだよ?」

常識も常識。

なぜそんなことを聞くのかがわからないと言った様子で少年は困惑している。

しかし、俺も困惑していた。

まさかまさか。

古代魔法文明が別大陸にまで手を伸ばしているとは……。

長距離転移が発動しなかった理由もわかった。

遠すぎるのだ。しかも中継地点もないから、どこかを経由することもできない。

そう。

俺は別大陸に転移させられてしまったのだ。

「やれやれ……困ったことになったな」

帰る望みは二つ。

方角を割り出し、全速力で飛んでいくか。

もしくは古代遺跡を見つけるか。

来た方法があるなら、戻る方法も用意しているはずだ。

とはいえ。

あまりにも土地勘がない。

何をするにも情報が必要だ。

「少年、名前は?」

「俺はアレン……駆除人のアレンだ」

「そうか。ではアレン、助けた礼といってはなんだが、大きな街まで案内してもらえるか?」

「大きな街まではかなり歩くぞ? それでもいいのか?」

「構わない。俺は今、情報を必要としているんでな」

「案内はいいけど……かなり遠回りになる。ここから直線で目的地にいこうとすると……廃城を根城にしている山賊団にかち合う。回り道をして向かうことになるし、そうなるとどこかで食料や水を調達して……」

「問題ない」

「え? 食料や水を持ってるのか?」

「いや、山賊から奪えばいい」

そう言って俺はアレンを引き連れて歩き始めたのだった。