軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百五十一話 黒い奔流

≪我は銀意を代行する者・我は天と銀の法を知る者・断罪の時来たれり・咎人は震え罪無き者は歓喜せよ・我が言の葉は神の言の葉・我が一撃は神の一撃・白銀は黒焔に・黒金は白灰に・この手に集まるは天焦がす劫火・銀焔よ咎人を灰燼と化せ――シルヴァリー・エクスキューション・プロミネンス≫

銀属性を付与したエクスキューション・プロミネンス。

銀光を纏った焔が魔法陣に浮かび上がる。

迎撃に参戦するのは俺だけじゃない。

エルフの戦士団は炎の精霊を召喚し、連合軍や冒険者の魔導師たちはおのおのできる限りの魔法を準備している。

俺の横ではクロエがダークネス・フォースの魔力をすべて、双剣に集中している。

次はないと踏んでの全力だ。

さらに、ジャックとミアが最大威力での魔弓を放つ準備をしている。

加えて。

「負けっぱなしってのは性に合わないわ」

「それには同感です」

エルナとノーネームも参戦した。

戦力は十分。

【――冥壊】

アスモデウスが攻撃を放ったと同時に俺は銀焔を放つ。

それに続いて、多くの攻撃がアスモデウスの攻撃を食い止めにかかる。

一撃一撃は弱いかもしれない。

だが、塵も積もれば山となる。

一撃一撃はアスモデウスの攻撃に及ばないかもしれない。

しかし、人類の集団攻撃はアスモデウスの攻撃を押し返していた。

「このまま押し切るわよ!!」

エルナがそう叫ぶと、多くの者がそれに呼応した。

徐々に徐々に。

アスモデウスが放った黒い奔流が押し返されていく。

このまま貫け。

そう思って力を込める。

そうすれば奴にも隙ができる。

隙さえできれば、勝負を決めにいける。

けれど、俺は魔王に匹敵する悪魔の力を見誤っていた。

黒い奔流とのぶつかり合い。

完全にこちら側が優勢だった。

このまま押し切れる。

そう思った時。

声が聞こえてきた。

【――冥壊】

連射。

こちらがどうにか溜めに溜めて、迎撃できている攻撃を。

アスモデウスは連射してきた。

その前にオリヒメによって二回も攻撃を防がれているのに。

一気にこちらの攻撃が押し返される。

とはいえ、それでも互角。

「踏ん張れ!!」

ジャックがそう周りに声をかける。

まだ互角。

また押し返せばいい。

そっちが連射というなら、こっちも連射するまでのこと。

≪我は銀の理を知る者・我は真なる銀に選ばれし者・銀星は星海より来たりて・大地を照らし天を慄かせる・其の銀の輝きは神の真理・其の銀の煌きは天の加護・刹那の銀閃・無窮なる銀輝・銀光よ我が手に宿れ・不遜なる者を滅さんがために――シルヴァリー・レイ≫

片手で銀焔を維持しつつ、俺はシルヴァリー・レイを発動する。

そのまま片手で光球を潰し、七つの銀光を放つ。

またこちら側が優勢となる。

ここで押し負けたら、もう連合軍は立ち上がれない。

心が折られてしまう。

オリヒメが保った士気。

無駄にするわけにはいかない。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

気合の声と共に俺は古代魔法の同時発動を維持する。

しかし、そこまでだった。

そこまでしたのに、絶望的な声が聞こえてきた。

【――冥壊】

さらなる攻撃。

同時に大きな亀裂が空に走った。

空間にヒビではなく、裂け目ができ始めている。

かつて魔法を捨てざるをえなかった古代魔法文明の魔導師たちと同じ。

アスモデウスの力に世界のほうが耐え切れなくなっているのだ。

追加攻撃により、完全にこちら側が劣勢となった。

まずい。

これは本当にまずい。

そうは思っていても、頭は冷静だった。

「全員散れ!! 巻き込まれるぞ!!」

声を発すると、迎撃しようとしていた連合軍の兵士や冒険者が散っていく。

それに合わせて、ジャックがミアを連れて戦線を離脱した。

クロエもオリヒメを連れて離脱する。

「ぐっ……!!」

残るは俺とエルナ、そしてノーネームの三人。

なるべく粘ったが、もう限界だ。

まだ避難は済んでいないが、二人を失うわけにはいかない。

俺は攻撃をやめ、二人を連れて転移門に入る。

止める者がいなくなったアスモデウスの攻撃は、避難しきれなかった兵士や冒険者を蹴散らし、一気に父上のところへ向かう。

だが、かなり減衰していたその攻撃は聖剣とその他、複数の攻撃によって迎撃された。

聖剣を使ったのは勇爵で、残存する近衛騎士団が父上の周りを固めていた。

「このままじゃ!!」

エルナが叫ぶ。

勇爵と近衛騎士団は正真正銘、最後の砦だ。

しかも、一度きりの。

次は防げない。

わかっているからエルナは叫んでいる。

実の父親が死に直面しているのだ。落ち着いてはいられないだろう。

ただ、それは俺も同じこと。

すでにアスモデウスは次の攻撃体勢に入っている。

奴のエネルギーは無限かと疑いたくなるが、それでも消耗していると信じるしかない。

俺個人で迎撃は困難。

そうなると、やれることは一つ。

俺は自分だけ転移すると、アスモデウスの射線上に入る。

そして巨大な転移門を出現させる。

防げないなら、奴にそのままお返しするまでだ。

【――冥壊】

螺旋状の黒い奔流が直線的に向かってくる。

これまで、攻撃は直線的だった。

だからこその転移門。

しかし。

「なっ……!?」

黒い奔流はいきなり弧を描いて、転移門を回避する。

これまでしてこなかった挙動。

やろうと思えば避けられたのに、避けなかった。

ここにきて、小細工を。

ほくそ笑むアスモデウスが見える。

思わず後ろを振り返る。

威力の減衰していない攻撃を止める力は、勇爵と近衛騎士団にはない。

父上が死ぬ。

思わず手を伸ばすが、届かない。

やられる。

そう思った時。

猛スピードで二つの影が俺の横を通り過ぎた。

「隙を見て攻撃するために温存しておったのじゃが……」

「その役目は任せたわよ?」

通り過ぎたのはリナレスとエゴール翁だった。

弧を描いた分、黒い奔流の速度は遅い。

二人は一気に黒い奔流と皇帝との間に割って入ると、一気に力を解放した。

「古い世代は損な役割と決まっておるでな」

「失礼ね。私はまだ若いわよ」

「それよりも若い者たちがおるでな」

「まぁ、それもそうね。次代を紡ぐのは若い子たちに任せるとしようかしら」

そう言って二人は笑みを浮かべながら、黒い奔流と激突したのだった。