軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百四十九話 冥壊

放たれたのは漆黒の奔流。

それは真っすぐ連合軍へと向かう。

させまいと立ちはだかったのは、宮廷魔法師団が作り出した三層の儀式結界と、オリヒメが作り出した五層の結界。

まず、宮廷魔法師団が作り出した三層の儀式結界との衝突が起きた。

しかし、一瞬で二層が破られる。

「ぐっ!!」

全力で維持する宮廷魔法師団だが、相手の力があまりにも上すぎた。

あっさりと最後の三層目も破られ、儀式結界は消え去った。

そしてオリヒメの結界が漆黒の奔流を受け止める。

「ええい!! なかなかやるではないか!!」

オリヒメの結界ですら、あっさり一層目と二層目が破られた。

だが、オリヒメはそこで踏みとどまる。

自分が最後の砦という自覚があったからだ。

「妾は仙姫……大陸最高の結界使い……妾が攻撃を通したら……この大陸の誰も止められぬ……背負っているものが違うのだ……妾は……防ぐことに関しては誰にも負けぬ!!!!」

オリヒメは残る三層の結界で漆黒の奔流を押し返す。

あちこちにヒビが入っていくが、それでも最後のところではやらせない。

そして。

「はぁはぁ……」

オリヒメは荒い息を吐きながら、アスモデウスの攻撃を防ぎ切った。

しかし、オリヒメの作り出した結界はすでに崩壊寸前。

ギリギリだった。

だが。

「なかなかやるな。では、これならどうだ?」

アスモデウスは先ほどよりもさらに力を溜める。

それを見て、連合軍内から悲痛な叫びが上がった。

もう終わりだ、という悲鳴。

それに対して、オリヒメは告げる。

「狼狽えるな!!!! 妾がいる!! この仙姫がいるかぎり! 攻撃は通さぬ!!」

先ほどよりも多い六層の結界を展開し、オリヒメは声を届けた。

相手の攻撃は先ほどよりも強力。

受け止められるかと、さすがのオリヒメでも不安になった。

しかし。

「儀式結界魔法!! 仙威結界!!」

宮廷魔法師団はまた儀式結界を作り出した。

三層の結界。

それはオリヒメのものと比べれば、頼りないものではあったが、それでもオリヒメにとっては強力な援護だった。

「そなたたち……」

「我々も……皇国の名を背負っておりますので……役に立たなかったでは陛下に申し訳が立ちません……」

そう言いながら魔導師たちは口から血を流していた。

すでに最初の段階で限界を超えている。そこからさらに二回目の儀式結界を作っているのだ。

命を削って、彼らは結界を作っていた。

「では……共に行こうではないか」

「お供しましょう」

そう言ってオリヒメと宮廷魔法師団はアスモデウスの攻撃に備える。

アスモデウスが攻撃する瞬間。

空間に振動が走った。

あちこちにヒビが入り、世界全体に影響を与えていることがわかる。

そんなアスモデウスは一言、つぶやいた。

「――冥壊」

先ほどの黒い奔流は通常攻撃。

今回はしっかりとしたトドメの攻撃。

螺旋状の黒い奔流がオリヒメたちの結界へと向かう。

一瞬で、宮廷魔法師団の儀式結界は破られる。

仙姫の結界を模倣したその結界が脆いわけではない。

その証拠にオリヒメの結界も一気に四層が破られた。

隣で血を吐き、宮廷魔法師団の魔導師たちが倒れていく。

ここで破られれば、彼らの犠牲が無意味になる。

宮廷魔法師団の魔導師たちの命の火が消えていくのを感じ、オリヒメは血が出るほど口をかみしめ、両手を前に出す。

「ここから先は……何も通さぬ!!」

決意を新たにオリヒメは結界に力を込める。

さきほどの比ではない攻撃。

幾度も意識が飛びそうになりながら、オリヒメはそれでも結界を維持し続けた。

押し返すことはできない。

ただ防ぐことしかできない。

耐えることしかできない。

それでもオリヒメは耐え続けた。

やがて、アスモデウスの攻撃が消え去る。

オリヒメは思わず膝をつくが、それでも意識はあった。

「防ぎ切ったぞ……」

どうだと言わんばかりにオリヒメは笑う。

虚勢だ。

それでもオリヒメは笑った。

しかし、オリヒメの笑みが凍り付く。

同じ攻撃をアスモデウスが放つ準備に入っていたからだ。

「……おのれ……」

オリヒメはなんとか立ち上がり、結界を張ろうとするが、体に力が入らない。

ここまでか。

そうオリヒメが思った時。

「大丈夫。あとは任せて。オリヒメ様ばっかに頑張らせたりしないから」

オリヒメの横でそうつぶやいたのはクロエだった。

クロエは双剣を左右に広げる。

≪我は簒奪者なり・冥府の底より黒を簒奪した・這い出ろ冥黒・万象を闇へ沈めろ・漆黒の王とは其の黒なり・深淵の主とは其の黒なり・根源の冥黒・終点の漆黒・すべてはその黒より現れ・すべてはその黒に沈む・集いて染めよ――ダークネス・フォース≫

これまで部分部分でしか使ってこなかったダークネス・フォースをクロエは使った。

今が勝負どころ。

全力の発動だった。

そう思っていたのはクロエだけではなかった。

「迎撃準備!! ありったけの攻撃をぶつけるぞ!!」

そう言ったのは冒険者ギルドのクライド。

多くの者がオリヒメの元に集まっていた。

これ以上、防ぐことは不可能。

ゆえに攻撃による相殺を試みる気でいた。

「仙姫と宮廷魔法師団が稼いだ時間を無駄にするな!! 力を溜めろ!!」

「了解ですわ!!」

「その喋り方! どうにかならないか!? 気が抜けそうになるんだが!?」

「わ、私のアイデンティティですわ! これだけは譲れませんですわ!!」

ジャックとミアもその相殺攻撃に参加していた。

何もしていなかったわけじゃない。

次に来る攻撃に備えて、力をジッと溜めていたのだ。

諦めかけていた連合軍全体が、なんとかしようという意識で動いていた。

だが、受け止めたオリヒメだからこそわかった。

まだ足りない。

これでは相殺できない。

しかし、結界を作り出そうにもすでに自分は空っぽだった。

だからオリヒメは呟いた。

「後は頼んだ……シルバー」

「心得た。任せろ」