軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百二十五話 大陸のために

『皇国は全面的に帝国の主張を支持しよう』

賢王会議。

大陸中の王たちが集まるその会議は、帝国皇帝の呼びかけで始まった。

帝国の主張は、現在、連合軍と交戦中の王国を〝大陸の脅威〟と判断し、各国の最強戦力を派遣するべし、というものだった。

真っ先に同意を示したのはソーカル皇国の皇王、ミハイル・アーラ・ソーカルだった。

「皇王から支持される日が来ようとはな」

『儂とて気に食わんが、連合軍の中心は帝国。その帝国が相手は悪魔なのだと主張するならば、否とはいえん』

「配慮に感謝する」

大陸三強。

そのうち、王国は敵対中であり、残る帝国と皇国の足並みはそろった。

さらに。

『現在、冒険者ギルドはAA級以上の精鋭を派遣する準備中です。各国が帝国の主張に同意なさるなら、SS級冒険者たちにも集結を命じます』

ギルド長のクライドはそう言って、帝国を援護した。

ギルド長が独断で動かせるのはS級までの冒険者だけ。

もちろんSS級冒険者も一人、二人なら動かせるが、全員を集結させて国家間の戦争に参加させることはできない。

大陸中の王たちが、連合軍が戦っているのは王国ではなく、悪魔なのだと認識しなければそれはできないのだ。

大陸の敵と判断されたのは王国。しかし、すでにその域は越えた。

今の王国は大陸の脅威。

人類に敵対する悪魔とその協力者なのだ。

ほかの国々も支持を口にする。

証拠はほとんど揃っている。

反対する理由はいまだに悪魔が姿を見せていない、という一点しかない。

そして、悪魔が出てきてからでは遅いからこそ、この賢王会議は開かれている。

『賛成しない国は何を躊躇っておるのだ?』

支持を表明してから、これまで黙っていた仙国の代表であるオリヒメが口を開いた。

いくつかの小国はいまだに決めかねている。

ここですべての王によって承認されれば、各国の最強戦力が王国へ向かう。

大陸中の精鋭が集まるのだ。

簡単に決めていいことなのだろうか?

帝国も皇国も大国だが、ここでは同列の王だ。

ゆえに慎重さを見せる王たちにオリヒメは告げた。

『今、ここで妾たちがのんびりと喋っている間にも、前線では連合軍の兵士が命を落としている。熟考は構わんが……その時間は連合軍の兵士の命によって稼がれていると承知しておるのだな?』

「仙姫殿……」

『打算は捨てよ。妾も捨てる。皇王よ。転移魔法をたしか再現できたな?』

『使えば精鋭の魔法大隊が一か月は動けなくなるが……やれなくはない』

『妾が従者たちと向かう。王国まで送るがよい』

それはとんでもない提案だった。

皇国は仙国と敵対している。

仙姫の作る結界を攻略できず、手出しできていないが、その仙姫が皇国に向かうというのだ。

当然、暗殺の恐れがあった。

しかし。

『死んでもごめんと言いたいところじゃが……この状況では仕方あるまい。ノーネームを送るついでに、仙姫も送ってやろう』

皇王はそれを了承した。

仙姫を皇国内部に入れることは、皇国にもリスクがある。

それでも大陸の脅威を排除するため、皇国は了承したのだ。

それを見て、黙っていた王たちも帝国の主張に支持を口にした。

全会一致。

その結果を見て、クライドは告げた。

『では、大陸のすべての王の同意を得られました。これより連合軍の敵は悪魔です。どれほどの数が出現するかわかりません。各国は、最強戦力をあらゆる手段でもって、王都へ派遣していただきたい。そして我が冒険者ギルドは……五人のSS級冒険者を集結させます。それでも勝てるかどうかわからぬ相手です』

クライドはそこで言葉を切る。

そして。

『それでも勝てると信じております。我らは五百年、備えてきました。各国の支援に期待します』

すべての国が派遣できる戦力を保持しているわけではない。

皇国のように転移の魔法を使えるわけでもない。

立地的に間に合わない場合もある。

そういう国は戦闘以外での支援をする必要がある。

これは人類の総力戦だからだ。

『〝大陸〟のために』

クライドの言葉を聞き、すべての王が告げる。

『『『『『大陸のために』』』』』

■■■

帝国。

帝剣城の遠話室と、総司令部の遠話室。

どちらも一度だけという条件で設置された。そのため、皇帝は帝都支部にいた。

皇帝ヨハネスは立ち上がる。

「アリーダ! 近衛騎士団は出撃可能か!?」

「はっ! いつでも」

「勇爵家はどうか!?」

「こちらもいつでも行けます」

傍に控えるのは帝国において剣の双璧を成す、近衛騎士団長のアリーダとテオバルト勇爵。

皇帝ヨハネスは二人を従えながら歩き出す。

「出撃する! 戦力をこの場に集結させよ!」

■■■

藩国。

「我が国の騎士団には派遣できるほどの手練れはいない。しかし、大陸の脅威を前にして、何もしないわけにもいかないであります。どうか……藩国の代表として向かってほしいであります」

藩王トラウゴットはそう言って頭を下げた。

それに対して、藩国唯一の手練れは告げた。

「もちろんですわ! 悪魔などドーンですわ!」

ミアは努めて明るく引き受けた。

もちろん、死ぬかもしれないことは承知の上だ。

相手は悪魔。

SS級冒険者たちが戦う相手だ。

ミアですら最低ライン。

それでもミアは引き受けた。

「この大陸に藩国ありと必ず知らしめてくるですわ!」

「感謝するであります。冒険者ギルドからは待機と言われているであります。どうやら、〝拾って〟くれるようであります」

「拾う?」

「意味はわからないであります。しかし、五百年、悪魔に備えた組織であります。何を隠していようと驚きはしないでありますよ」

そう言ってトラウゴットは苦笑するのだった。

■■■

皇国。

「宮廷魔法師団は出撃準備じゃ! 転移魔法大隊はすぐに準備に取り掛かれ!」

「皇国最強の宮廷魔法師団を送り込むとは、本気ですね」

皇王の傍にいたノーネームは静かに告げる。

それに対して皇王は不満そうに返す。

「SS級冒険者のような特殊戦力以外は全滅する可能性が高い。しかし、我が皇国は帝国と同等の義務を背負っておる。損耗を恐れて派遣しないなどありえんのじゃ。悔しいが、我が国に勇爵家はおらん。代わりを務めてくれるか?」

「私は冒険者ギルドのSS級冒険者です。ただし……皇国支部所属として戦うことは約束しましょう」

「不満だが、まぁいい。頼んだぞ? ノーネーム」

「お任せください。必ず……この大陸は守ってみせます」

■■■

仙国。

「今すぐ皇国へ向かう! 支度せよ!」

オリヒメは側近たちに指示を出す。

オリヒメに万が一のことがあれば、ほかの者が仙姫を引き継ぐ。

だが、オリヒメと同格の者はいない。

移るのは称号だけだ。

そうなれば仙国はピンチに陥る。

それでもいかねばならない。

「そなたも……ついてくるであろう?」

「当たり前だぜ。これでもS級冒険者なんでな」

オリヒメはフッと笑うと歩き出す。

その後を背の高い短髪の男が続くのだった。

■■■

ドワーフ自治領。

「我がドワーフ族も参戦したいが、さすがに今からでは間に合わんな」

ドワーフの王、マカールは残念そうにため息を吐いた。

ドワーフは人間の騎士よりも強力だが、その中に飛びぬけた強者はいない。

ゆえに冒険者ギルドはここに〝立ち寄らない〟。

どうしても参戦したいならば、自力で向かうしかない。

「エルフの連中も参戦しているというのに、悔しいかぎりだ」

「そう落ち込むでない。儂がおるでな」

「行かれるか?」

「無論。故郷が焼かれ、同胞たちが逃げる中……何もしなかったのは、今、この時のため。儂はこの大陸を守るSS級冒険者じゃ」

そう言ってエゴールは目の前に置かれた酒を飲み干した。

それを見て、マカールも酒を飲み干す。

「ご武運を」

「任せておくがよい」

そう言ってエゴールは白い杖を手にして、立ち上がる。

そして自治領の入り口。

そこにはソニアが見送りに来ていた。

「一人で迷子にならない?」

「真っすぐ走るだけじゃ。迷子にはなるまいて」

「そうだといいんだけど……」

「安心せよ。悪の気配は見逃さぬ」

そう言うとエゴールは微笑み、背伸びをしてソニアの頭を撫でた。

「大丈夫じゃ。この大陸の人類は……強い。どれだけ対立しても、縁が結ばれておる。儂とお嬢さんが一緒にいるのがその証拠じゃ。エルフとドワーフ。変なコンビじゃが、上手くやれておる。これは悪魔にはない力じゃ。それを……儂が証明してこよう」

エゴールはそう告げると、その場からフッと姿を消したのだった。