軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百十九話 目立ちすぎ

「何か言うことは?」

「すまん」

「素直でよろしい」

案内された屋敷の一室。

そこでエルナが俺をジッと見てきたため、素直に謝罪する。

エルナは呆れた様子ながらも許してくれた。

まぁ、想定内なんだろう。

わざわざ俺が敵陣に向かった以上、何事もないわけがない。

長い付き合いだ。その程度のことはわかるんだろう。

「お前がその調子なら、レオも謝ったら許してくれそうだな」

「どうかしら? レオは許してくれても、ヴィンは許してくれないわよ?」

「ヴィンはレオが許せば許してくれるさ」

すでに両軍の代表が話し合いの場を持っている。

俺が人質として滞在している間に、ドロルムたちはほかの戦場へ向かう。

偽人兵を見るためだ。

手配はすべてヴィンがしてくれるだろう。

時間はロスするが、上手くいけば人の血は流れないし、三つの都市が自動的に陥落する。

悪い話じゃない。

問題なのは総司令なのに誰にも相談しなかったことだろう。

あまりにも勝手がすぎる。

怒られそうというのが、唯一の欠点だ。

ただ、もっとも警戒すべきエルナがあっさり許してくれた。

考えすぎだったかもしれない。

■■■

「総司令としてのご自覚はないのですか?」

「わ、悪かったよ。けど、これが最善かと……」

「相談するべきです! 思いつきで行動すれば周りの方々が困るのですよ!? あなたが都市に向かった時、軍がどれほど動揺し、レオがそれを鎮めるのにどれほど苦労したか! お分かりですか!?」

小さな部屋で俺はレティシアに詰め寄られていた。

予想外な刺客だ。

謝っているのに全然許してくれない。

なぜだ……。

「悪かったって……」

「いいえ! あなたは悪かったと思っていません! しっかり反省を見せてください!!」

「反省を見せろと言われても……」

困り果てて、俺はエルナの方を見るが、エルナは助け船を出してくれそうにない。

レティシアは間違いなく怒っている。

普段怒らない分、こういうタイプは怒ると長い。

どうやって許してもらおうかと思っていると。

「失礼いたします。レティシア様、そろそろお時間です」

「まだお説教が終わっていません!!」

「しかし、長く留まれば相手方に不信感を与えることになります」

やってきたのは第二近衛騎士隊のセオドアだった。

レティシアとセオドアは俺とエルナに必要物資を持ってきただけだ。

持ってくるなら誰でもよかったわけだが、俺の行いに怒ったレティシアがわざわざ来た。

しかし、人質として認められているのは俺だけ。護衛はエルナだけ。

セオドアやレティシアは過剰な戦力だ。エルナだけでも安心できてないのに、さらに戦力が都市内に滞在することは許されない。

一瞬、やっと解放されるという安心感が表情に浮かぶ。

それをレティシアは見逃さなかった。

「アルノルト元帥!! 今、やっと終わると思いましたね!? 反省していたら、そんな風には思わないはずです!!」

「いや、思ってないから……」

「嘘です! 反省しない人は同じことを繰り返します! ここで心からの反省を!」

「では、殿下。私たちは失礼します」

「ああ、苦労をかけて悪いな」

「近衛は苦労するためにありますので」

このままじゃ埒が明かないからか、セオドアはレティシアを無理やり、部屋の外に連れ出す。

そして苦笑しながら帰っていった。

一応、嵐は過ぎ去ったな。

「反省してるって言ってるのに……」

「けど、同じ状況になったら同じことをするでしょ?」

「もちろん。血が流れるより、人質になるほうがマシだ」

「考え方はわかるけど……アルの身を案じる人もいるのよ?」

「知っているよ。だから珍しく謝っているだろ? 言い訳せずに謝るのは珍しいんだぞ?」

「知っているわよ。だから許したでしょ。けど、無茶しそうで怖いって思う人はいるのよ」

「心配をかけているのはわかっている。けど……あとで無茶をすればよかったと後悔したくない。人の命がかかっているからな」

王太子は王都から動かない。

偽人兵があちこちに配備されているだけだ。

今、王都がどうなっているかもわからない。

潜入を試みたが、向かわせた部隊は全滅している。

王都の情報は何もないのだ。

中で民がどんな目に遭っているか……。それすらわからない。

だから、被害が拡大しないようにやれることをやるしかない。

「エルナ……ドロルムは有能だ。ちゃんと現状を把握すれば降伏するだろう。そしたらお前はレオの傍にいてやってくれ」

「アルの護衛はどうするのよ?」

「俺はさっさと総司令部に戻る。フィンもいるしな。ここを突破できれば、王都が見えてくる。王都での戦いは苛烈なものになるだろう。お前を傍に置いておく余裕はない」

「……直接指揮は取らないの?」

「王都を落とすのはレオじゃなきゃダメだ。俺は……目立ちすぎた。これ以上、功績をあげたら俺を皇帝にという勢力が出始める。先のことを考えたうえでの判断だ」

「考えがあるなら……従うわ。けど……気を付けてね? 私から見ても今のアルは危ういわ。なんだか自分を軽んじているみたいで……見ていて不安になるの」

エルナの言葉に俺は苦笑する。

その不安はあながち間違いではない。

レオの影に隠れていた実力者、アルノルトはここで消えるのが一番都合がよいのだから。