軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百六話 雷霆

時間は少し遡る。

「左舷魔導砲、一斉射! 敵船を近づけるな!」

要塞の近くまで来ていた俺たち連合艦隊に対して、足止めを行ってきたのは王国の南部艦隊だった。

その数は三十隻。さらにはよくわからない空飛ぶモンスターまで引き連れていた。

幸い、こちらにも航空戦力がいたため、空中戦でモンスターを撃退できているが、いなければ良いようにやられていただろう。

「閣下! アルバトロ公国の旗艦が近づいてきます!」

「何か話したいことがあるんだろう」

三十隻の南部艦隊は、奇襲してきた艦隊よりもだいぶ手強い。

しっかりと陣形を組んでいるし、こちらを足止めしようという意図を感じる。

そのせいか、戦闘は長引いていた。

とはいえ、このままいけば問題なく勝てるだろう。

「ジュリオ殿下が参られました!」

俺は声を聞き、振り返る。

小舟でこちらに乗り移ったジュリオが近づいてきていた。

「閣下、ここは両公国艦隊に任せて、帝国艦隊は先に進んでください!」

「たしかに空のモンスターはだいぶ片付いたが、俺たちが離れるということは、航空戦力も離れるということだぞ?」

「偵察に出ていた船より、要塞がモンスターに襲われているという情報が入りました。要塞には多数の帝国旗も確認されています。おそらくモンスターに襲われているのは、レオナルト殿下の軍かと」

「王国の要塞にレオが入っていると?」

「おそらく、ですが」

しばし俺は考え込む。

確証のない話だが、あり得ない話でもない。

さきほどまで戦争をしていた相手と、共闘できるかは怪しいが……。

相手がモンスターならば人類という枠組みで共闘もできなくもない。

さらに。

「どう考えてもあのモンスターは王国軍と連携しているしな……」

どういう経緯でそうなったのかは知らない。

ただ、事実として王国軍はモンスターと連携している。

襲われている要塞も元々は王国のものだ。

王国内で分裂があったとみるべきだろう。

そしてその兆しはあった。

「レオとアンセムが手を組んだか……王太子は越えてはならない一線を踏み越えたようだし……いよいよ混沌としてきたな」

呟き、俺は笑う。

最悪な状況に事は進んでいるが、悲しいかな。だいたい予想通りだ。

この戦争の目的は王国に潜伏しているだろう悪魔を引きずり出すこと。

それが上手くいったと捉えることもできる。

前線の将兵からしたらたまったもんじゃないだろうけど。

「わかった。この場は両公国艦隊に任せる。帝国艦隊は戦線を離脱。そのまま要塞へ向かう。天隼部隊を収容し、すぐさま離脱だ! 急げ!」

いつもならもう少し情報を集めたいところだが、相手がモンスターでは考えている時間は無駄になる。

こちらも決断を早める必要がある。

そのため、俺はこの場を両公国艦隊に任せることに決めたのだった。

■■■

「要塞が見えてきました!」

「敵のモンスターの配置を確認しろ!」

「要塞内部に四足歩行のモンスターを多数確認! 要塞上空でも竜騎士団と、有翼モンスターが交戦中! さらに後方に約一万! 有翼モンスターが待機しています!」

情報を聞き、俺は船長に視線を移す。

「嫌な予感がしますなぁ」

「当たりだ。あの待機している一万を雷霆で狙う。射線を通してくれ」

俺たち帝国艦隊は要塞の東側。

邪魔するような建物はないため、射線を通そうと思えば通せる。

ただ、チャンスは一回。

しかも要塞に近づきすぎると、要塞が邪魔で狙えない。

この場でしかできない挑戦だ。

「無茶を言いますね……」

射線を通せ、という命令自体は単純だが、雷霆は一隻じゃ打てない。

随伴船も同時に動かす必要があるし、連結してしまえば大きく動くこともできない。

周りに指示を出しながらの位置取りが求められる。

「なるべく陸地側に船を寄せろ! しっかりとあの待機しているモンスター群を捉える位置まで移動する!」

簡単なことではない。

それでもできると信じて俺は指示を出す。

「雷霆発射準備! 連結後、すぐに発射できるようにしろ!」

「閣下! 要塞を攻撃中の王国艦隊もいますが、モンスターを狙うんですか!?」

「狙いはモンスターで変わらずだ。艦隊ならどうにかなるが、あの有翼モンスターは叩けるときに叩くに限る」

もっとも危険なものを排除するために、最強の攻撃兵器を使う。

単純な話だ。

この場にいる帝国艦隊は二十五隻。そのうち四隻は随伴船。

対して、向こうは三十隻はいる。

雷霆を撃てば位置もバレてしまう。

艦隊に使うべきという意見はわかる。元々、そういう兵器だからだ。

しかし、この状況ではモンスターを排除することが最優先だ。

「閣下! そろそろ準備を! いつまでも同じ場所に留まっておくことはできませんよ!」

「わかっている!」

船長の見事な位置取りで、雷霆の射線上にモンスター群が浮かび上がった。

即座に俺は命令を発した。

「カスパル、ヨルダン、クリストフ、オスカー、連結開始」

「カスパル、ヨルダン、クリストフ、オスカー! 連結開始!!」

四隻の随伴船。

それが一気に旗艦アルフォンスと連結する。

これで雷霆を撃つ準備はできた。

しかし。

「船長、やや左舷に舵を切れ」

「了解!」

疑問はあるはず。

それでも船長は指示に従う。

俺の勘を信じているんだろう。

ただし、勘ではない。

しっかりと索敵魔法で敵の位置、風、波をすべて計算している。

この微調整で雷霆の命中率は一気に上がる。

「雷霆への魔力供給、十分!」

「雷霆は発射可能! 総員発射に備えろ!」

錨が下ろされ、五隻は反動に備える。

その中で俺はただ前だけを見ていた。

僅かなズレが到達時には大きなズレとなる。

しかも海の上。波の一つで大きく変わる。

だから俺は波が過ぎ去ったあと。

一瞬だけ船が静止した瞬間を見計らった。

「――撃て」

「雷霆発射!!」

爆音と共に船首の砲から強烈な閃光が発射された。

それはどんどん加速して、一気に目標であるモンスター群に到達。

大爆発を起こした。

「雷霆命中! 雷霆命中しました!」

「連結解除。カスパル、ヨルダン、クリストフ、オスカーは後方に下がり、天隼部隊を展開。我々は前に出る。敵艦隊を迎え撃つぞ」

言いながら、俺は指揮官の魔導具に手をかける。

かなりの数になる連合艦隊。

そのすべてに声を届かせるために、調整された拡声用魔導具。

それを持ち、俺は戦場にいる全ての将兵に声を届けた。

「こちらは帝国軍総司令 帝国元帥アルノルト・レークス・アードラーだ。我が艦隊はこれよりモンスターに敵対するすべての勢力の援護に入る。邪魔する者は大陸の敵として全力を以って排除する。少しでも自らの行動に疑問を抱くなら、邪魔をするな。我々はいつでも敵を撃滅する用意がある。以上だ」