軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百八十一話 不安的中

前線都市を落とした帝国軍は、北部都市群を調略したレティシアに陥落した三つの都市を任せ、前線を上げていた。

布陣は変わらず、三つの部隊が前に出て、その後ろに本隊という布陣だった。

その本隊でレオは各地の情報を頭に入れていた。

「北部では続々と都市が降伏していて、南部ではいくつかの都市が帝国寄りの態度を示しはじめたか」

王国軍が兵糧を燃やした一件を帝国軍は喧伝していた。

聖女を切り捨てた王国は、民も切り捨てる。

情報戦術ということで、過剰なほど王国軍が悪、聖女が正義という形での喧伝となっているが、事実が混ざっているため、否定できないのも事実。

強固だった防衛網は崩れ始めた。

一丸となって帝国軍に対抗するという、王国のスタンスが崩れてしまったからだ。

「このまま行くと思う? ヴィン」

「オレに聞くな。オレは忙しいんだ」

レオの問いにヴィンは書類をめくりながら告げる。

そんなヴィンの様子にレオは苦笑する。

「軍師なのに?」

「軍師だと思うなら軍師として扱え」

ヴィンはイライラした様子で書類をめくる手を早めた。

現状、ヴィンがしているのは前線に張っている三つの部隊に対する兵糧供給と、本隊の兵糧管理。

十五万を維持する兵糧の管理は重大であり、敵に狙われる場所でもある。

ゆえにレオは兵糧に関することをヴィンに一任した。

任されたヴィンは忙しく動き回りながら、細かく兵糧を管理していた。

一日でも多く帝国軍が戦えるように。

「自分で言ったんでしょ? 十五万の大軍の軍師は無理だって」

「だから聞くな。今のオレは兵糧を管理するだけの存在だ」

「意見くらい聞かせてよ」

「……凡人には天才の考えることはわからん」

「そう。じゃあこれから王国軍が取るべき選択は? 定石通りでいくなら」

「その質問なら答えてやる。王国軍が戦略を変えないなら前線を引き下げて、防衛網を再構築する。辺境の都市が多少寝返ったところで、中央にはあまり影響がないからな」

「戦略を変更するとしたら?」

「オレが思いつくような戦略は敵将は取らないと思うが……オレなら北部に移動する。状況は王国軍に不利だからな。どうにか好転させるためには動くしかない。ただ、攻められるのは北部しかない」

「そうだよね。この状況じゃそれしかないよね」

自分と同じ意見であることを確認し、レオは頷く。

状況は王国軍に不利。

このまま戦略を変えないなら、下がるしか手はない。穴だらけの防衛網を再構築しなければ食い破られるからだ。

その戦略を捨てるとするなら、攻めに転じるしかない。

そして攻めるべき場所は北部しかない。

調略された都市群を落とせば、士気の回復と他の都市への牽制となる。

「ただ、北部を奪還したとしても状況が好転するとは限らない。はじめから王国軍が不利な戦いだ。互角だったのはしっかりと準備があったから。準備したものが壊れれば、不利な戦いを強いられるのは当然だ」

「要塞に撤退はないね?」

「よほど追い詰められたら別だろうが、こちらの狙いを見透かしていた相手だ。わざわざこちらが望む展開にはしないだろう」

「やるとしたら……偽装撤退かな?」

「十分注意するべきだろうな。ただ、下がられても困るほどじゃない。前線の三つの部隊には厳命しておけばいい。追わなくていい、とな」

有利なのは帝国軍。

その有利を自覚して、一つ一つ都市を攻略していけばいい。

最大の懸念だった兵糧は北部の都市群のおかげで、幾分か余裕ができた。

敵の士気も下がっており、鉄壁を誇った防衛網にもほころびが出始めている。

有利なのは確か。

しかし、レオには言い知れぬ不安があった。

果たして、本当に自分は有利なのだろうか、と。

開戦前から不利を覚悟してきたレオにとって、有利な状況というのは逆に不安材料でしかなかった。

敵はここから何をしてくるのか。

予想はしているが、きっと予想を超えてくる。

そういう相手でなければ、アルが警戒するわけないからだ。

「とりあえず全軍に注意を促すとするよ。敵が何をしてくるかわからないからね」

「気を緩めるな。と言いたいんだろうが、無理だと思うぞ。明らかに帝国軍が優勢だからな」

ヴィンの言葉にレオは頷く。

その優勢が怖いのだ。

そして不安は的中する。

翌日。

前線に出ていた三つの部隊はそれぞれ次の都市攻略に取り掛かったが、右側の部隊との連絡が突如として途絶えた。

しかし、少しだけ本隊はその把握が遅れてしまった。

理由は簡単だった。

最初に攻めていた前線都市のときよりも、本隊と三つの部隊との距離が開いていたからだ。

しかし、それは僅かな差。同時に三つの都市を攻略するなら許容するべき差だった。

しかし、その差が致命的だとレオが気づいたのは右側から急ぎの伝令が届いたときだった。

それは結局、右側からの最後の一報となった。

内容は、敵総司令アンセム現る、というものだった。