軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百七十四話 皮肉

アリーダとセオドアがいるはずの場所で、巨大な爆発が起きた。

それを見て近場で待機していた俺たちは一気に動き出した。

心底、帝都から転移させてよかったと思いつつ、俺は走り出した馬車から身を乗り出し、横を走るエルナに伝える。

「まだ終わってないようだ! 二人で苦戦する相手だ。エルナ、最初から全力で行くぞ!」

「当然でしょ!」

「やる気なようで何よりだ、じゃあ聖剣を呼んでくれ」

「わかったわ……って良いわけないでしょ!?」

聖剣は強力だ。

その強力さから呼び出すには制限がいくつかある。

緊急事態にはその制限が取っ払われるが、今は平時だ。

その制限の一つに帝都近郊での使用を禁じるというものがある。

帝都反乱時、帝都にぶっ放したエルナだが、あれは皇帝の危機だから。

今は違う。

ゆえに許可が必要となる。

「俺が許可を出す」

「皇帝陛下の許可が必要なのよ!」

「安心しろ。代理としての証は持ってる」

そう言って俺は皇帝の指輪を見せた。

本来、アリーダが父上から受け取ったものだ。

すべて任せるとアリーダに言ったのは、言葉だけではない。

皇帝の権限も含めて、アリーダに託したのだ。

それが俺の手の中にあった。

アリーダが渡してきたからだ。

万が一、聖剣が必要になった場合、すぐにそれを実行できるように、と。

俺を巻き込んだ理由もそこにあるだろう。

自分たちが太刀打ちできなかった場合、聖剣が必要となる。

用心深い人だ。

だからこそ、近衛騎士団の団長を務めていられるんだろうが。

そして戦場が見えてきた。

そこにはナイジェルと、もう一人、不気味なローブの人物が二人と対峙していた。

未確認の敵。

様子見は不要。

「帝国第七皇子アルノルト・レークス・アードラーが命じる。勇者よ、その手に聖剣を取れ!」

聖剣の解放命令を俺は下したのだった。

■■■

「我が声を聴き、降臨せよ! 煌々たる星の剣! 勇者が今、汝を必要としている!!」

エルナが聖剣を召喚し、アリーダとセオドアの前に出た。

そして。

「あなた……北部で私の邪魔をした奴ね?」

「まさか……聖剣持ちの勇者が現れるとは思いませんでした。準備がよいですね? アルノルト皇子」

ローブの人物は馬車から降りた俺へ目を向ける。

俺の周りにはセバスとジーク。

リンフィアとミアは遠巻きで戦況を見守っている。

戦闘に参加するというよりは、逃がさないための布陣だ。

「帝都に物騒な魔剣を持った奴が現れれば、当然の処置だ。一人ではないと思っていたが……北部でラファエルを逃がした奴が後ろにいたとはな。大人しく投降してくれると助かるんだが?」

「さすがにそういうわけにはいきませんね。収穫がないままでは来た意味がない」

そう言ってローブの人物はアリーダとセオドアに目を向けた。

疲労困憊の二人。

数の上では不利だが、戦力的には互角と思っているんだろう。

「なるほど。では交渉決裂だな」

「そのようですね」

言葉の後、真っ先にエルナがローブの人物に襲い掛かった。

だが、エルナの前にはナイジェルが立ちふさがる。

「聖剣持ちの勇者と戦えるとは運がいい……。俺が名実ともに最強であることを証明するいい機会だ」

「邪魔するんじゃないわよ……! 私はそいつに用があるの!」

エルナとナイジェルは一気に空まで上がる。

そして一撃一撃が周辺を破壊する異次元の戦いを始めた。

最高峰の魔剣と聖剣の戦いだ。

当然、そうなるだろう。

一方、ローブの人物はアリーダとセオドアに斬りかかる。

疲労していようが、二人は近衛騎士団の団長と副団長。

並みの剣士では斬り合いにもならない。

だが、ローブの人物は剣技だけで二人と互角に斬り合いを始めていた。

エルナがラファエルを取り逃がした要因。

並みではないことは最初からわかっていたが、改めてみると化け物だ。

あれだけの剣技を誇る相手は数えるほどしかない。

疲弊しているアリーダとセオドアでは、倒しきるのは難しいだろう。

戦況の行方は空次第ということだ。

「恐ろしい話だな。聖剣と打ち合える魔剣がまだ存在していたか」

「私としては聖剣を持ったエルナ様と打ち合えている彼に驚きですな」

「ロスアークが認めた弟子だからな。だが、限界がきはじめたな」

空の戦いは当初は互角だった。

だが、徐々にエルナが攻め勝ち始めている。

ロスアークの攻撃剣術は強力だろう。

だが、聖剣を持ったエルナ相手に攻撃で挑むのは分が悪い。

エルナが使うのはアムスベルグ勇爵家に伝わる剣術。勇者の剣技だ。

聖剣を使うことが前提で作られている。

一方、ロスアークの攻撃剣術はしょせん人間の剣技だ。

最初から規格が違う。

力負けは必然だろう。

さらに言えば。

「ナイジェルが打ち合っているのはアムスベルグ勇爵家の最高傑作だ。ただでさえ天才ばかりを輩出し続けてきた家系なのに、そこで神童と呼ばれた女だ。持って生まれた才能だけなら、どんな剣士も及ばない」

「高評価ですな」

「事実だからな」

「それもそうですな」

セバスとそんな会話をしていると、ナイジェルはエルナの一撃を受け止めきれず、大きく吹き飛ばされた。

アリーダとセオドアとの戦いで消耗しているとはいえ、完全に力負けだ。

規格外と人間との差と言ってもいい。

ナイジェルが弱いというより、エルナが強すぎるというべきだろう。

それでもナイジェルは起き上がり、またエルナに向かっていく。

心が折れないのはさすがというべきだろう。

だが、敵わないと思い始めてもいるようだ。

使っていた剣技が変わり始めていた。

「防御剣術を使い始めたな」

皮肉だな。

ロスアークはエゴール翁に負けて、防御剣術に行き着いた。

攻撃だけでは勝てないからだ。

そのロスアークを殺し、攻撃剣術を会得した男が、同じ規格外を相手に防御剣術を使う羽目になるんだからな。

「セバス、ジーク」

「はっ」

「なんだ? 坊主」

「あのローブの動きを止めてこい。万が一が怖いからな」

俺はセバスを見ながらそう言うと、セバスは心得たとばかりに頷くのだった。