軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝・十三話 ダークネス・フォース

≪我は簒奪者なり・冥府の底より黒を簒奪した≫

黒い魔力がクロエの内からあふれ出す。

膨れ上がったその魔力をクロエは自分の内へと凝縮していく。

≪這い出ろ冥黒・万象を闇へ沈めろ≫

凝縮された漆黒の魔力。

それを安定させるために、クロエは歯を食いしばる。

暴走は許されない。

後ろには少年がおり、自分の肩にはシルバーの名が乗っている。

失敗などできるわけがない。

≪漆黒の王とは其の黒なり・深淵の主とは其の黒なり≫

凝縮された漆黒の魔力がはけ口を求める。

それを力づくで抑え込み、クロエはさらに先へと進む。

≪根源の冥黒・終点の漆黒≫

魔力の反発が強くなっていく。

その反発に負けそうになる度に、クロエは一つの言葉を思い出す。

諦めるな。

師匠のその言葉を頼りに、今にも挫けそうな自分を奮い立たせ、少しずつ前へと進む。

≪すべてはその黒より現れ・すべてはその黒に沈む≫

時間としては短い。

しかし、クロエにとっては長い戦いの末。

反発していた黒い魔力がクロエの身に落ち着いていく。

やがてその魔力はクロエを包み込んだ。

その状態でクロエは最後の一節を紡いだ。

≪集いて染めよ――ダークネス・フォース≫

十一節の古代魔法。

漆黒の魔力がクロエを包み込む。

闇を纏ったクロエは一言、少年に告げた。

「走って」

静かに告げられたその言葉に、少年は突き動かされて、また走り出した。

後ろは振り向かない。

なぜだかはわからないが、大丈夫だろうという思いがあった。

実際、それは間違いではなかった。

迫るモンスターの大群。

数えるのも馬鹿らしいその大群に、クロエは一瞬で斬り込んだ。

「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

両の剣を交差させ、両手を開くように剣を振るう。

それだけで先頭集団が吹き飛んだ。

間髪容れず、クロエは大地を蹴る。

一瞬で加速したクロエは、モンスターたちを斬り伏せていく。

その姿にモンスターたちの足が止まっていく。

地震という脅威によって、動き出したモンスターたちにとって、移動こそが最重要だった。

だが、それが変わった。

それ以上の脅威が目の前に現れたからだ。

「まだまだぁ!!」

飛来した鳥型モンスターを両断し、自分へ殺到する狼型のモンスターを一振りで吹き飛ばす。

だが、モンスターたちの勢いは止まらない。

クロエは剣に漆黒の魔力を纏わせ、巨大な斬撃を飛ばした。

「これでっ!!」

その斬撃はモンスターたちの群れを飲み込み、跡形もなく消し去っていく。

その代償としてクロエが纏っていた漆黒の魔力は消え去ってしまう。

だが、モンスターたちは一掃された。

「はぁはぁ……」

一気に決着をつけにいったクロエは、荒い息を吐きながら両手の剣に寄りかかる。

しかし、地面に刺した剣は一瞬で黒化し、砕け散る。

「あれ……?」

クロエの魔力に耐えきれず、崩壊してしまったのだ。

茫然とそれを見つめるクロエだったが、新たにやってきた地鳴りに現実へと引き戻される。

「まだ来るの……?」

よろよろと立ち上がり、前を見ると先ほどと同じ程度の大群が迫っていた。

クロエは刀身のなくなった剣を握り締め、それでも立ちはだかる意思を見せた。

もはや逃げる体力もない。

ならば挑むしかない。

だが、勝ち目があるわけではない。

「もう一回は難しいかなぁ……」

何とか魔力をかき集めてみるが、もう一度、ダークネス・フォースを使えるほどではない。

「困ったなぁ……怒られるかなぁ……」

一気に決めにいったのがまずかった。

そのことにクロエは苦笑する。

怒られたいと心から思っていたからだ。

そんなクロエの耳に叱責の声が届いた。

「当たり前だ。後先を考えろ」

「え……?」

クロエが振り向くと、そこにはシルバーの姿があった。

そのことが示すことはただ一つ。

「お師匠様……お母さんは……?」

「安心しろ。トウイが素早く終わらせてくれた。完全除去とはいかなかったから、薬による治療が必要らしいが……もう命の心配はない」

「本当……? 本当に本当……?」

「本当に本当だ」

涙を流すクロエを落ち着かせるように、シルバーは頭を撫でる。

しかし、その間にもモンスターの大群が迫る。

だが、それと同時にシルバーの周りには無数の光源が出現していた。

やがて、それは大きく横に広がっていく。

帯状に広がったその光源は、シルバーが腕を振った瞬間。

まるで軍の一斉射のごとく、光弾を発射した。

走るモンスターたちにはそれを避ける術がなかった。

あちこちで爆発が起こり、光弾がモンスターたちを蹂躙していく。

その後、モンスターたちが沈黙したのを見て、シルバーは光源を消し去った。

そして。

「よく覚えておけ。切り札は最後まで取っておけ。何が起きるかわからないからな」

「うん……! 覚えた!」

「そうか……さすが俺の弟子だ。よくやった」

ポンとクロエの頭を叩き、シルバーはクロエを連れて転移門をくぐったのだった。