作品タイトル不明
外伝・六話 暴発
古代魔法の修行にとって一番大事なことはなにか?
それは集中力だ。
教える側、教えられる側。
どちらにも集中力が必要となる。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
覚えていた詠唱を終えたクロエの体には、漆黒の魔力が集まっていた。
あれを体の中に留められれば成功。
それが出来なければ失敗。
そして失敗するとここらへんが更地になる。それくらいの魔力だ。
だから俺はクロエの周りに結界を張って、失敗に備えていた。
だが。
「うわぁぁぁぁ!! 無理かも!?」
「とにかく集中しろ! 最初から上手くいくとは思ってない!」
「そう言われても……! 集中じゃどうにもならないよ!」
声と同時にクロエの体から黒い魔力が一気に放出された。
それは最初の結界を一瞬で破壊してしまう。
「ちっ!」
即座に二枚目の結界を張るが、それも突破され、三枚目に移る。
しかし、三枚目も突破され、四枚目で放出はどうにか抑えられた。
クロエから半径十メートルほどは草も木も生えない、真っ黒なものへと変わってしまっている。
これは古代魔法の暴発。
本来の発動とは別の形ゆえ、正式な威力とは言えない。そもそも強化魔法が範囲魔法へ切り替わる時点で、まともじゃない。
だが、それが古代魔法だ。
結界で防いでいなければ、森が吹き飛んでいただろう。
それだけの魔力を自分の中に押しとどめ、コントロールすることがこの魔法には求められる。
「はぁはぁ……」
「まぁ最初はこんなものか。時間もない。次だ」
「えっ!? もう一回やるの……?」
「どんな状態でも使うことができるから、モノにしたと言うんだ。さぁやれ」
「厳しいよぉ……」
「厳しいのはこっちだ……」
聞こえないようにつぶやきながら、俺はクロエから距離を取り、結界を展開する。
今回は最初から四枚構成だ。
クロエがコツを掴めば掴むほど、暴発の威力は上がる。
魔力が上手く練り上げられて、凝縮されればされるほど、それが弾けた時の威力は上がってしまうからだ。
初めて使って、あの威力ならまだ上がるだろう。
さっさとモノにしてもらわないと、こっちが持たなくなる。
「しかし、とんでもない魔法だな……」
魔法の系統としてはインフィニティ・ダークネスに近い。
殲滅系の魔法を自分の身に纏う。
短期決戦型の魔法と開発者が位置付けたのはわかる。
クロエでもあまり長時間は使えないだろう。
もっと扱いに慣れて、応用ができるようになれば消費も抑えられるだろうが、それは本人にやってもらうしかない。
俺が一から覚えて、それをクロエに伝えるのは無理だ。
そんなことをしたら魔力がいくらあっても足りない。
「ねぇ、お師匠様。別の魔法じゃ駄目なの……?」
「君が器用なタイプなら変更も考えるが、今のを見て器用だとは判断できないんでな。それに君の剣術との相性もいい。詠唱も覚えているし、その魔法を会得しろ」
「馬鹿みたいに言わないでよ!」
「馬鹿にされたくないなら、さっさと会得しろ」
「このー! すぐに会得してみせるよ! 見ててよ!」
意気込んだものの、クロエは結局暴発させた。
今回は四枚目も破って、五枚目の結界を張ることになった。
先ほどよりは進歩といえるだろう。
だが、クロエが完全にへばってしまった。
「疲れたよぉ……」
「初日だしな。これくらいにしておくか」
「良かったぁ……三回目って言われたらどうしようかと……」
「暴発は無駄に魔力を食う。疲れるのは暴発させるからだ」
「わかんないんだもん! 仕方ないじゃん!」
うーっとクロエは唸ってそっぽを向く。
その間に俺は二つ転移門を開く。
一つはクロエの家までの転移門。もう一つは城だ。
「わからないなら考えろ。次も同じ失敗なら……わかっているな?」
「えっ!? 怖い!? 何されるの!?」
「さあな。では、また明日だ」
「うわぁぁぁぁ!!??」
クロエの背を押して、俺は転移門に押し込む。
悲鳴を聞きながら、俺も城への転移門を通ったのだった。
■■■
城に戻るとセバスが待っていた。
一礼するセバスに軽く頷きながら、俺は仮面を外して服を着替え、そのままベッドに倒れ込んだ。
「お疲れのご様子ですな?」
「疲れた……これが続くと思うとしんどいな」
「続けるのですか? 魔力の回復を待たずに?」
「時間を掛ければかけるほど、感覚は鈍る。明日は秘薬と魔導具を使う。用意しておいてくれ」
「随分な肩の入れようですな?」
「……自分に重なるからな。すぐに強くなってほしい」
「なるほど」
「それと……万能薬を用意してくれ。金はいくら使ってもいい」
「かしこまりました」
万能薬は大抵の病には効く薬だ。
材料の入手難易度が高いため、基本的に出回らない。
どうしてそんなものを持ち出すのか?
それはクロエの母の容態が気になるからだ。
万能薬で治らないとなると、何か考える必要がある。
そんなことを思いながら、俺はゆっくりと眠りについたのだった。